私たちの提案(2023)

第3章 実現めざし全力をつくします―日本共産党の重点政策

12、市民が主役の川崎市政と川崎市議会に

市民の政治的要求や関心は多岐にわたり、こうした声を施策に反映させていくうえで議会の役割と責任はますます重要になっています。地方議会の機能を住民の利益のためにもっと発揮すること、そのために少数意見の尊重、議論の活発化、住民への公開と参加の促進など、議会の運営と構成の民主化をすすめることが求められています。

自治体を変質させる国の「自治体政略2040構想」

国は自治体の再編をすすめ、「自治体政略2040構想」を策定。「スマート自治体への転換」などと称して職員の半減などにより、自治体の変質が狙われています。こうした動きに対して、全国自治会の立谷会長も「国が制度を押し付けるのは自治に反した茶番だ」と批判。国による地方自治の変質を許さず、「地方自治の本旨」(住民自治・団体自治)に則った市政運営を徹底することが求められています。

福田市長は2014年2月の「行財政運営プログラム(案)」で、「行政にはサービスを直接提供するという役割から、…民間部門が提供するサービスのモニタリング・評価を行なう役割が求められる」と提言。これは、公の役割を投げ捨て「住民福祉の増進」に責任を負うべき自治体の役割を単なるマネジメントへ変質させる危惧を感じさせるものでした。

「自治体戦略2040構想」と同じ「これからのコミュニティ施策の基本的考え方(素案)」

福田市長は2018年11月、「これからのコミュニティ施策の基本的考え方(素案)」を策定しました。策定からわずか4ヵ月後の2019年4月から実施する予定という異様な提案です。

これは、2015年12月議会に提案した「基本構想」「基本計画」「実施計画」で、市民の切実な要求を実現する施策の展開はほとんどない一方で貫かれていた、自助・共助(互助)の強調、基本政策5の「参加と協働により市民自治を推進する」で、直接の目標が「市民の支え合いを中心としたコミュニティ形成を支援する」とされているように、自助・共助で市民同士が支え合い、助け合う仕組み、受け皿が市民自治とされ、公助に頼らないことを求めるような内容になっていたことをさらに徹底したものです。

「複雑化する課題に対して、公費を直接投入し、その解決を図る従来型のサービス提供手法や行政主導の協調スタイルを見直し、地域の自治の力を育むことにより、多様な主体による市民創発型の課題解決ができるような業務のすすめ方や予算のあり方などを検討する」としています。つまり、多様な主体に任せて公費の直接投入をやめていくということで、まさに、「自治体戦略2040構想」の先取りです。

本来、住民自治、市民自治とは、国における主権者が国民であるのと同様、地方自治体の主権者は住民・市民であり、市政運営の基本は主権者である住民・市民から付託された権限を行使するものだということを意味します。「市民の支え合いを中心としたコミュニティ」をどのように形成していくかは市民が自主的に決めることであって、市民自治の問題とは関係がないものです。市民自治の概念をゆがめることなく、市政運営の基本に主権者市民を位置づけるべきであり、また、「参加と協働により」「市民自治を推進する」というなら、市の施策に対する市民の声を真摯に反映する仕組みの充実に努めることこそ、求められています。

市民自治の拡充―市民が市政に参加する仕組みづくり

憲法が保障する「地方自治の本旨」の一側面、住民自治を具現化する施策として、市民が市政に参加する場の拡大をはかり、市政に対して市民意見が反映されるよう保障することが求められています。主権者は市民です。

阿部前市長は、“市民とのパートナーシップ”を強調し、04年に「自治基本条例」、06年に「パブリックコメント条例」、08年に「住民投票条例」、09年には「まちづくり育成条例」を制定。市民が市政への参加や意見を反映する場を拡充してきたようにみえますが、しかしその目的と実態は、自治体の果たすべき役割を縮小し、市民に責任を押しつけるものでした。市民の責務を強調する「自治基本条例」、住民がまったく使えない「住民投票条例」、市長のいいなりになる市民団体のみを「育成」する「まちづくり育成条例」など、市民参加のもとで素案をつくりながら、条例案ではまったく反市民的・反民主主義的な内容のものを提案してきました。住民参加とは名ばかりの住民自治を否定するような条例に次つぎと賛成してきたのが自民・公明党などでした。

自治体の主権者は市民です。市民の市政への参加・意見表明の機会を実効的に保障することこそが真のパートナーシップといえるのではないでしょうか。

開かれた川崎市議会へ

共産党は、傍聴者が審議内容を理解するうえで審査内容の資料を配布することは不可欠と、繰り返し傍聴者への配布を要求し、2010年12月から無償配布が決まりました。ひきつづき拡充が必要です。

また、請願・陳情者が委員会で請願等の趣旨を説明する場を保障してほしいという切実な要求が寄せられ、共産党は一貫して要求しています。他会派の反対でまだ認められていませんが、主権者は住民との立場からは、権利として保障することが必要です。

清潔で公正な市議会を

議員が市民の付託に応え、その役割を果たすためにも、市民への充分な情報公開につとめると同時に、清潔・公正な議会にすることが求められています。共産党の主張が実り、政務調査費の使い道について1円単位で領収証付きで公開することになりました。

2013年予算議会に政務調査費の使途を拡大する「政務活動費条例」が自民・公明・民主などの共同提案で出され、可決・成立しました。

この条例は、地方自治法の改正を受け、政務調査費の使途を、「調査研究に資する活動」に加え、従来は認められていなかった「陳情活動などの旅費、地域で行う市民相談」などにも支出できる「その他の活動」を付け加えたもので、全国市民オンブズマン連絡会からは、「違法な政務調査費の支出に免罪符を与える」との懸念が表明されていました。

共産党は、国民所得の低下や景気の低迷、震災復興も遅れるなかで、いま川崎市議会に必要なことは使途範囲を拡大することではなく、現行の使途基準を厳格に守ることであり、しかも、市民の声を十分に聴く機会すら保障することなく改定することは民主主義的ルールからしても問題だとして反対しました。条例が成立した後も、共産党は、拡大された使途項目については、支出していません。

海外視察は凍結・中止を求めていきます

1人1回約80万円もかけている議員の海外視察については、長引く不況で苦しい生活を強いられている市民の生活実態などにかんがみ、当分の間自粛することを共産党が提案したことが通り、一時的に市議会全体で自粛しましたが、わずか1年で他会派は復活を主張して実施に移しました。共産党はひきつづき自主的に参加を見合わせています。

《お約束》

  • 憲法の理念、国民主権・平和主義・基本的人権の尊重を市政運営の基本に据えます。
  • 地方自治の理念を徹底し、市民参加、市民が主役の市政運営を貫きます。
  • 情報公開やパブリックコメント(市民意見公募)、政策評価などの仕組みを見直し、住民の知る権利、参加、チェック、意見反映機能のいっそうの実効化をはかります。
  • 自治基本条例は市民の権利を明確にしたものに改定します。
  • 住民投票条例を市民が真に使いやすいものに改定します。
  • 審議会等の市民公募委員を増やします。
  • 請願・陳情審査に提出者の趣旨説明等の機会を保障します。
  • 現状の海外視察の実施は凍結します。

〈参考〉

日本医師会総合政策研究機構が2009年に出した「医療・介護の経済波及効果と雇用創出効果」によれば、国内生産額でみれば、医療は36兆円、介護は64兆円。これは公務員の生産額と教育研究とほぼ同じ額です。公共事業公示は16.2兆円です。生産額でいえば十分経済の成長に役立っているといえます。

雇用でいえば、医療の従業員は342万人。介護は123万人。公共事業は135万人。雇用誘発効果(ある産業で一定の生産が発生したときに、他の産業も含めてどのくらい雇用が誘発されるのかという雇用誘発係数を示したもの)では、介護は全産業(35)のなかで突出して高く1番、医療も高い方から6番目と、非常に高くなっています。医療・介護というのは、雇用面でも雇用の改善にも役立つものだということが示されています。

医療・介護に公費を1兆円投入したときの生産の誘発額は、政府の試算でも5兆円も出るとされ、雇用の新しい創出は45万人も出るとされています。また、医療・介護の粗付加価値係数も非常に高いとされています。それは、従業員の給与と家庭外で消費することが高いことからです。結局、これらの分野への税金投入による経済成長をもたらすし、経済の好循環をもたらす重要な分野であると結論づけています。

※「保育園と老人施設の必要性と建設・運営の経済的効用について」山口不二夫明治大学大学院教授の研究によれば、「医療・保険・社会保障・介護部門の経済波及効果は乗数効果は3から5あってもおかしくないが、政府の産業関連表によっても1.68、建設は1.94となる。その結果、必要な保育施設・介護施設の建設は川崎市の経済効果を1%押し上げる可能性がある」としています。