私たちの提案(2023)

第1章 福祉切り捨て、大規模事業推進の福田市政とそれを応援する自・公

1、「財政が厳しい」と偽りの理由で市民サービス抑制、その一方で大規模事業には前のめりの福田市政

政令市トップの財政力、なのに“財政が厳しい”と行革で福祉バッサリ

表①政令市比較

2013年10月、前市長の「大型開発優先市政」「市民イジメの『行革』」に対する批判から、自・公・民3党推薦で、盤石といわれた前市長の後継者を破って当選した福田市長。

福田市長初の予算となった2014年度当初予算の市税収入は過去最大となり、減債基金から新規借り入れをせずに収支均衡をはかることができ、前市長が常套文句としてきた“財政が厳しい”という言葉は当てはまらない状況となりました。その後も市税収入は堅調に推移しています。

ところが福田市長は、「行財政改革に関する計画」「新たな総合計画」を発表。今後大きく市税収入が増加することは見込めないうえ、「少子高齢化のさらなる進行」から、今後毎年度200億円程度の収支不足が見込まれ、本市の財政は「極めて厳しい状況」が続くと断定。そのため、市民サービスをゼロベースで見直し、「スクラップ・アンド・ビルド」の徹底を図ると明言。市の幹部でさえ、「行革の大きな種は尽きている」と漏らす中で市長は、障がい者支援施設運営費の市単独加算定率加算10%の半減、「かわさき障がい者110番」の廃止。福祉電話相談事業、高齢者外出支援サービス事業、高齢者住み替え家賃助成事業の見直し・廃止など高齢者施策も削減。公共施設の利用料・使用料の値上げも次々と実行してきました。

川崎市の2018年度一般会計予算は7366億円で4年連続、過去最大。市税収入は前年度比407億円増の3479億円で5年連続過去最高。政令市で5年連続、唯一の普通交付税・不交付団体となっています。財政健全化指標は、すべて基準値を下回っており、市税収入、財政力指数、財政健全化指標、市債残高、減債基金残高のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力です。(表①参照)市の幹部も、「今後の6230億円もの大規模事業への財政支出は十分耐えられる」と発言。これに対してマスコミも「ではなぜ市民の負担増になる改革が必要なのか、との疑問の声が出ている」と報道(『朝日』・2015・11・25)しました。

ため込み金は1000億円!

2017年度一般会計決算では、減債基金の残高は、政令市平均では市債償還額の4年分ですが、川崎市は11年分にもなり、一人当たりの額は政令市の1・8倍です。これを政令市並みの市債償還額4年分にすると残高は1000億円前後あれば十分であり、他都市よりも川崎市は1200億円も過大となります。10年後にしても、推計では3023億円にもなり市税収入に匹敵する額となり、政令市平均よりも1000億円以上も過大となる金額です。明らかに「ため込みすぎ」です。(表②参照)表②人口一人当たりの減債基金残高(全会計)

市長は減債基金という市の貯金からの借り入れを理由に「極めて厳しい財政状況が続く」と強弁していますが、川崎市は毎年、市債返還額より多く積み増しをしてきており、2017年度決算でいえば取り崩し額、すなわち返済額よりも243億円も多く積み立てているのです。収支不足とされる分を引いて積み立てれば収支不足も出ず、減債基金から借入れる必要はありません。わざわざ借入という形式をとるのは、市民に収支不足が出ているように見せるためであり、作られた収支不足といわなければなりません。

企業が一番活動しやすい川崎を目指すと市長

「財政が厳しい」と強調する一方で、福田市長は、当選半年後の2014年予算に港湾関係だけで特別会計合わせて150億3700万円余の超大型予算を組んだのを皮切りに、この間「国際戦略総合特区制度を利用したライフイノベーション事業」、1メートル1億円以上の「川崎縦貫道路整備事業」、540億円もかかる「臨港道路東扇島水江町線の整備」、最低でも300億円かかる「羽田連絡道路の整備」、さらに「企業が一番活動しやすい川崎に」と国家戦略特区の具体化と、大型事業には前のめり姿勢をあらわにしてきました。2018年には、カジノ誘致に意欲をみせ、また、外国の富裕層を呼び込むとして、臨海部に外国人専用の医療ツーリズム病院の設置まで容認する方向です。

このように、豊かな財政力を持ち、市民から政令市で最も高い市民税をとっているにもかかわらず、福祉・くらしの予算は抑制し、臨海部の大規模事業への歳出は大幅に増やしてきたのが福田市政の特徴です。

2、福祉切り捨て応援、大規模開発を推進する自民・公明党

川崎市議会で自民・公明党は阿部前市長の福祉切り捨て・市民負担増を後押しし、それらの議案すべてに賛成。その一方で、不要不急の大規模開発を強力に推進する役割を果たしてきました。

福田市長の誕生当初は与党はわずか4人という状態でスタートしましたが、市長の“財政が厳しい”論を鵜呑みにして、乾いた布をまだ絞り切っていないとハッパをかけるなど、いっそうの『行革』を煽り、他方で市長の大規模開発への前のめり姿勢の応援を強め、結局、わずか1年で事実上の与党となりました。福田氏が二期目を目指す2017年の市長選挙では、川崎商工会議所会頭が代表を務め、自民党の元参議院議員斉藤文夫氏が顧問の市長選に向け政治団体「川崎の発展を考える会」が福田市長応援に向けて動き出し、福田市長は「『政党・団体の推薦は受けない』というが実態は業界抱えだ」と指摘されるなか、自民党は「福田市長の方向性はかなり重なる」、公明党も「福田市長の1期目を評価する」、さらに、民進・みらいも「福田市政の1期目を一定評価し、できる範囲、応援する」と再選支援。事実上の自・公・民の支援のもと、40万票の得票を得て再選されました。

自民党 福田市長が初当選の当初は、「すべての市民サービスをゼロベースで見直す姿勢は評価する」「財政的な裏付けが必要な(小児医療費助成拡充などの)公約は撤回することもあり得るのか」と撤回を迫る一方で、「川崎縦貫道路2期計画にかける期待には多大なものがあり、方向性を改めて提示すべき」、京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区の推進を要求するとともに、特区と密接な関係となる羽田連絡道路の着工・促進を要求し続けてきました。中学校給食が実施が具体化されると、「大型開発が目白押しな中で中学校給食を実施しても大丈夫なのか」と委員会で副市長に迫り、副市長から、「大規模開発の事業に支障ない」との答弁を引き出す始末。

公明党 前市長時代は最初から与党として、「一般事業系ごみの有料化、敬老パスの見直しなど相当な勢いで行財政改革をすすめ、結果を出してきたことは評価する」と福祉切り捨てを応援。京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区では「交通アクセスのいっそうの利便性が必要」と推進。また、「国際コンテナ戦略港湾である京浜3港の一翼を担う川崎港としてさらなる国際競争力が求められる」。国家戦略特区の指定について「東京オリンピックを見据え、」「歓迎、評価する」と表明。羽田連絡道路についても、「わが党市議団も太田国土交通大臣へ早期実現に向け、市長とともに陳情に行ってきた」と積極推進の立場。

民進・みらい(民主党)「保育所、敬老パス、毎日のごみ収集など見直しが必要な部分もある」、「使用料・手数料の見直し、補助・助成金の見直しを強力に進めるべき」など、前市長時代の福祉・市民サービス切り捨ての『行革プラン』を応援。その一方で、「川崎縦貫道路の整備を促進し、2期計画の具体化を急ぐ必要がある」「国際コンテナ戦略港湾に選ばれることは京浜港の国際競争力強化に向けて強い追い風になる」、「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区については、党本部に申し入れを行ない、内閣府とも協議を行なってきた」と大規模開発を推進。中学校給食実施にあたっては「行革の成果があがっているときに中学校給食を実施して大丈夫なのか」と質問。

3、今回の市議会議員選挙で問われている3つの争点

今度の選挙は

①市民の福祉・くらしを破壊する政治を許さず、福祉の遅れ(特養ホーム整備など)と切り捨てられた福祉を取り戻し、市民生活を応援する市政への転換をはかれるのはどの党か。

②臨海部を中心とする不要不急の大規模開発を推進する政治をやめさせ、税金のムダ遣いをただせるのはどの党か。

③市民の声を議会に届け、チェック機能と提案権の行使という、議員と議会ほんらいの役割を果たすためにがんばってきたのはどの党か、が問われる選挙です。

市民生活と福祉破壊の市政をすすめてきた自民・公明などの勢力が伸びても川崎市政は変わりません。福祉切り捨て・市民負担増を市民に押し付ける福田市長、それを応援する自・公ときっぱり対決し、市民生活を守るために唯一奮闘する日本共産党の前進でこそ、市政の流れを変え、市民のいのちと暮らし・平和を守る施政を築くことができます。

川崎市議会で、国への意見書、請願への主要会派の態度