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国会における憲法論議の推進と国民的議論の喚起を求める意見書に反対~渡辺学議員が反対討論

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川崎市議会第5回定例会で12月15日、渡辺学議員が、自民党より提案された意見書案第21号「日本国憲法の3原則の下、国会における憲法論議の推進と国民的議論の喚起を求める意見書」について、反対討論を行いました。

意見書は、我が国をめぐる諸情勢が大きく変化し、諸課題に的確に対処できるために、国会で活発かつ広範な憲法論議を推進し、国民に丁寧な説明と国民的議論を喚起することを求めたものです。
憲法のみならず、法案審議で国民に丁寧に説明することは勿論必要ですが、戦争法案の国会審議では、8割以上の国民が説明不十分だとしていたのに政府は強行採決。その後も説明責任を果たしていません。戦争法の強行採決後、安倍首相が憲法「改正」に意欲を燃やしていることから見ても、憲法論議を喚起する先に憲法改定があることは間違いありません。
違憲の戦争法を強行採決した政権に対して憲法論議を要求するのは憲法違反の法に合わせて憲法を変えようとする企てにほかならず、国民に丁寧な説明を求めるというのなら、まずは戦争法を廃止し、改めて国民に説明し、国会で徹底的な審議こそ行うべきだと主張し、反対しました。
採決の結果、意見書案は日本共産党と無所属2名を除いた賛成多数で可決されました。

討論原稿は以下の通りです(議事録ではありません)。

渡辺学議員の討論

私は日本共産党を代表して、ただいま提案されました意見書案第21号「日本国憲法の三原則の下、国会における憲法論議の推進と国民的議論の喚起を求める意見書」について、反対討論を行ないます。
この意見書は、表題にあるように憲法論議を国会と国民の間での議論を喚起するというものです。本意見書では、国民主権・平和主義・基本的人権を日本国憲法の三原則とし、この三原則こそ、現憲法の根幹をなすものであり、今後も堅持されなければならない、としています。当然のことです。
意見書案では続いて、「我が国をめぐる諸情勢は大きく変化しており、憲法制定当時には想定もできなかった事態への対応が求められている」「憲法も三原則を堅持した上で、直面する諸課題に的確に対処できる内容であることが必要」であるから、憲法について、国会で活発かつ広範な議論を推進するとともに、「国民に丁寧に説明し、広く国民的議論を喚起」することを求めています。
「我が国をめぐる諸情勢は大きく変化して」いるのは事実ですが、「憲法制定当時には想定もできなかった事態への対応が求められている」とは何を指しているでしょうか。また、情勢が大きく変化していることが、なぜ、「憲法も直面する諸課題に的確に対処できる内容であることが必要」、すなわち、憲法改定に結びつくのか、そこには大いなる飛躍があります。現在の憲法を改定しなければならないほどの差し迫った必要性が、いま現在求められているとは考えられません。したがって、憲法について、国会で活発かつ広範な議論を推進する必要性も考えられません。
憲法改定のみならず、法案の審議において、「国民に丁寧に説明」することは必要です。国民主権を憲法の三原則と認める立場においては、当然のことです。

ところが、いわゆる戦争法案の審議をめぐる国会での審議について、政府の態度はどうだったでしょうか。
戦争法は、「憲法9条は、自国が攻撃された場合に国民の命や財産を守る範囲で個別的自衛権は認められるが、日本への武力攻撃がないのに武力を行使できる集団的自衛権は禁じられている」というこれまでの、岸信介元首相の時代から半世紀にわたる歴代政府の解釈を180度覆し、解釈改憲で集団的自衛権行使を認めるものです。
歴代の元内閣法制局長官たちのみならず、圧倒的多数の憲法学者も、この法案は違憲だと発言し、元最高裁長官の山口繁氏も各紙のインタビューで、戦争法案を「違憲」と断じました。集団的自衛権行使を認める要件が曖昧で歯止めにならないなどの様々な問題に対して政府は説得力のある説明を果たす答弁をしないうえ、法案成立の根拠とされた立法事実が次々と崩れ去りました。にもかかわらず、政府は、強行採決を繰り返し、戦争法を成立させました。参議院特別委員会では、議事録も作成不能な状況でしたが、それでも「採決した」と主張する、あまりにも国民を軽視するやり方をとりました。
戦争法に反対する声は国民の間に燎原の火のごとく広がりました。国会前では、毎週大勢の学生や市民団体が廃案を求めて声を上げ、全国各地でも様々な団体・市民が廃案を求める集会を行いました。8月30日には国会周辺で12万人、全国1000ヵ所以上で空前の規模のデモや集会が行われ、国会前の集会には、民主・共産党など4党の党首も廃案を訴えました。戦争法強行採決前の世論調査では、5割以上の国民が「今国会での成立に反対」、8割以上が「政府の説明は尽くされていない」と答えています。強行直後の世論調査でも、戦争法反対が51%、成立を評価せずが57%など多数が反対しています。採決の進め方がよくない・不十分も7、8割にのぼっています。にもかかわらず、自民党高村副総裁は、「国民に十分に理解が得られていなくとも決めないといけない」といい、安倍首相は「国民の理解が深まっていないのは事実」といいながら、国民の世論にまったく耳を傾けず、国民の強い反対を押し切って戦争法を成立させました。
そして「国民に説明していく」といいながら、その後の記者会見ではまったく触れないなど、国民にまともに説明する気がない姿勢を続けています。
今回の意見書案が、憲法論議を喚起する先には憲法改定があることは間違いありません。そのことは、憲法改正を前提として憲法審査会が衆参両院に設置されたことからも明らかです。そもそも、国民の間からは憲法改定を求める声は聞かれません。
法治国家の建前を崩し、立憲主義・権力分立に反する解釈改憲で、しかも国民の強い反対を押し切って違憲の戦争法を強行成立させた政権に対して、憲法論議を要求するのは、憲法違反の法に合わせて憲法そのものを変えようとする企てにほかなりません。本当に国民に丁寧な説明を求めるというのなら、まずは戦争法を廃止し、改めて国民に説明し、国会での徹底的な審議こそ行なうよう求めるべきではありませんか。そこを抜きにした、憲法論議はありえません。
以上の立場から、同意見書には同意できないことを表明して反対討論を終わります。


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