等しく保育を受ける権利を条例化すべき〜石田和子議員が討論
9月3日の2014年第3回川崎市議会定例会で先議議案の採決にあたり、石田和子議員が日本共産党を代表して討論を行いました。
石田議員は、「保育所以外の施設でも国や市町村の責任で保育の質を引き上げ、市が制定する認可条例や運営の基準に関する条例においてすべての子どもが等しく保育を受ける権利を保障することが大切」と述べ、提案された条例では、現行基準を後退させないこと、設置基準の格差をなくし保育の平等性を担保することなどが担保されていないとして反対を表明しました。
石田議員の討論
私は日本共産党を代表して、提案された諸議案について討論をおこないます。
私たちは、認可保育所の増設で待機児解消を進めるとともに、保育所以外の施設でも国や市町村の責任で保育の質を引き上げ、市が制定する認可条例や運営の基準に関する条例において、すべての子どもが等しく保育を受ける権利を保障することが大切と考えます。市町村には、実施主体としての判断や裁量権があり、子どもの権利保障の立場から、現行基準を後退させないこと、また設置基準の格差をなくし、保育の平等性を担保すること、現行施設の事業者への助成の継続を求めて質疑しました。
幼保連携型認定こども園について、京都市(案)のように上乗せ基準を条例で定めることを求めるとともに、国の基準通りの市条例を設定するのなら、現行の川崎市の認可保育園の上乗せ加配等を行う事を求めました。答弁は「認可保育所と同等の職員の加配が必要であり、最低基準に対する上乗せ基準を別途、市の補助基準等において整備していく」「看護師等の配置、障害児の受け入れ等についても現行の認可保育所、幼稚園への支援を継続する」でした。加配と補助の継続について施設型給付費に対する市の上乗せをしっかり行うことを求めておきます。
関連して、幼稚園については新制度の「幼稚園」へ移行をしない選択肢もありますので、これまでの国や市が行ってきた私立幼稚園保育料補助制度,あずかり保育事業への助成、障害児保育への補助事業についてはしっかり継続することを求めておきます。
新たに認可保育事業に位置づけされる「家庭的保育事業」の資格要件について、認可保育園との格差がない内容を条例で定めること、同時に事業者が新制度に移行できるように、上乗せ加算や市の助成を行うこと、さらに、移行にあたり市として保育士の資格取得支援を求めて質疑しました。
家庭的保育事業と小規模保育事業C型に移行の可能性のある現行の本市の家庭的保育福祉員(保育ママ)は有資格者が担っています。「本市の条例制定の考え方」は、「従うべき基準であっても、国の基準より上回るべき本市の実情がある場合は、本市の独自基準を定める」としていることから、明確に条例で有資格者とすることを求めましたが、答弁は、条例は国基準とし、「現行を踏まえ、条例とは別に別途詳しく定める」としました。
小規模保育事業B型について、内閣府の「自治体向けFAQ=よくある質問」でも資格者割合について、「国の基準である2分の1を上回る設定は可能です」と内閣府は回答しています。この事業に移行する可能性のある川崎認定保育園A型は、現行の保育士割合を3分の2としていること、いくつかの政令市や県内自治体でも、4分の3、あるいは3分の2を条例で盛り込む案をしめしていることからも、本市もせめて、4分の3あるいは3分の2にすることを求めました。
しかし、答弁では、「保育士確保が容易でない現状を踏まえると、最低基準の有資格者の割合を高めると,移行に大きな影響が出ると考え、国の基準通りに設定する」とし、「有資格者の比率の向上については最低基準を高める取り組みと整理し、資格取得支援については、より実情に即した効果的な仕組みを市として検討する」とのことでした。
居宅訪問型の専門職種について、認可保育所では対応が困難な病児や障害児も対象とする事業ですので看護師等も含む専門職種を資格要件とする条例化を求めましたが、条例とは別に詳しく規定するとのことでした。
新制度で認可保育施設になるこれら、家庭的保育事業と小規模保育事業B型、C型,及び居宅訪問型保育事業の資格要件について、ここまで答弁したのですから、制度開始にあたって、始めから条例で示すべきでした。要綱等でこれから定めていくとしていますが、実質的に質の確保を担保することと使いやすい資格取得支援を充実させ、格差をなくす取り組みを今後も行うことを求めておきます。
また、5年間の猶予期間の中で支援策を充実させ、事業者との丁寧な協議を行うことを求めておきます。
上乗せ徴収と実費徴収についてです。
上乗せ徴収は、基本的には幼稚園に対し公定価格上の基準を超えた教員の配置や平均水準を超えた施設整備を行っている施設が徴収できるとされているとの事です。また実費徴収は施設の種別を問わず、通常必要とされる経費で、保護者負担が適当と考える費用とのことです。こうした上乗せ徴収や実費徴収が保護者の負担を増やし、所得格差が保育格差になるのではという心配があります。上乗せ徴収については市町村との協議により承認を得る必要があるとのことですので、適正かどうかの判断も含め指導することを求めておきます。低所得世帯や多子世帯に対し減免等を求めましたが、国が実費徴収に係る「補足給付」を行う事業をメニューとして、示されているという答弁でしたが、補足給付というやり方では、介護保険の補足給付のように廃止されることもあり、不安定な支援だと思います。
公定価格は予算との絡みがあって流動的です。本来は、国が安定的で平等な保育と、公平な待遇を保証する公定価格を設定することが必要と思いますし、国に対し強く要望することを求めます。
今回提案された5つの議案は、「子ども子育て支援新制度」の就学前の子どもにかかわる議案ですが、児童福祉法第24条1項は残ったものの、2項によって保育所等に比べて保育者の資格要件の緩和などが国基準に盛り込まれ、その結果、施設・事業によって保育に格差が持ち込まれかねない制度設計という疑念を払しょくできません。
また、これまでの市町村の責任によって保育を提供する現物給付の制度を改め、現金給付の仕組みへの変更ですので、より一層企業参入が進むことを懸念しています。また公定価格はあくまで仮単価であり、当初、1.1兆円を必要とするとした財源も、7千億円しか確保のめどが立っていないと新聞報道されているなど、依然として不透明と聞いています。拙速に実施するための無理な計画と枠組みがあり、保護者の皆さんのさまざまな条件によって子どもへの格差が生まれるなどの懸念があります。加えて、職員配置基準や資格要件について、要綱等で別途定めるのではなく、初めから明確に条例化すべきでした。
また、4階以上の保育室に設ける避難の設備についての条例改正ですが、保育園と幼稚園は原則、1,2階にすべきと考えます。それは「屋外で遊べる環境」と「万が一の災害時に安全に避難できる環境」が重要だからです。
乳幼児にとって高階層はリスクが高いです。「保育士1人が乳児をおんぶして、両脇に抱っこしても3人までが限界です。幼児の手も引けなくなるなど、平面移動でさえ、困難なことが想定されるなかで、高層ビルの垂直移動で多くの乳幼児を助けるのは至難の業が想定されます。乳幼児の施設は子どもの命と安全最優先にすべきです。
以上のことから、議案第98号川崎市幼保連携型認定こども園の学級の編成、職員、設備及び運営の基準に関する条例の制定について、議案第99号川崎市家庭的保育事業等の設備及び運営の基準に関する条例の制定について、議案第100号川崎市特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する条例の制定について、議案第101号川崎市保育の実施基準条例を廃止する条例の制定について、および議案第102号川崎市児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例の制定については賛成できないことを申し上げ討論を終わります。