市民生活を置き去り〜共産党が批判
川崎市議会は10日、2013年度の一般会計・特別会計の決算認定など議案42件を可決・承認し閉会しました。
日本共産党は、一般会計、川崎市港湾整備事業決算など特別会計の7会計、循環資源貨物用地取得議案に、反対しました。
共産党の斉藤隆司議員(多摩区)が討論に立ち、13年度決算について、大規模事業優先で「子育て・高齢者・中小企業など市民生活は置き去りにされた」として認定できないと述べました。
斉藤議員は、福田紀彦市長が公約した小児医療費助成の拡大はなく、特養ホーム整備は前年度開設ゼロの分がずれただけ、雇用も障害者施策も中小企業・商店街振興でも前進はない一方で、「国際コンテナ戦略港湾、京浜臨海部ライフイノベーション、国際戦略総合特区整備など不要不急の大規模事業への投資が目立つ」と指摘しました。
また、福田市長が、財政難を強調し、市民サービスをゼロベースで見直し、「行革」をすすめようとしているが、「健全化判断比率」など、市の財政状況はどの指標でも基準をクリアしていると述べ、公共施設利用料の値上げなどこれ以上の「行革」はやめるべきだと強調しました。
斉藤議員がおこなった日本共産党を代表しての討論は次のとおりです
*********************
私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論を行ないます。
2013年度(平成25年度)の各会計決算認定についてです。
2013年度歳入歳出決算においては、市税の決算額は、2,889億8,900万円で、前年度との比較では37億3500万円1.3%の増となり、2年ぶりの増収となりました。これは、川崎市の人口が増え続けていることから、個人市民税が9億7,500万円の増、固定資産税が家屋の新増設などにより14億4000万円の増となったことなどによるとのことでした。しかし、市税収入の約4割を占める個人市民税の増については、年少扶養控除廃止等による増税が含まれ、実質増税による増収というものでした。さらに長引く不況で国民の所得が14年間で約70万円も減っており、年間収入は200万円未満の雇用者は雇用総数の3割を占めている中、川崎市は人口増が続いてはいるものの、1人当たりの収入は減少していることにも目を向けなくてはならないはずでした。
ところが、2013年度は、実質増税で苦しいやりくりを迫られている市民に対して、市民サービスをもう削減するところがなく「行革の大きな種は尽きている」と市幹部ももらすほど削減し、職員の大幅削減も実施してきた第4次行革プラン」の3年目の年でもありました。
行革を促進する地方債として、行革を進めるたびに発行できるのが行政改革推進債でした。この12年間の行革の効果は814億円、そのうち市民サービスへの還元額184億円を差し引いたほぼ同額、621億円の行政改革推進債を予算化しようとしてきたのです。
2013年度の決算では行政改革推進債は41億3000万円発行し、事業の見込み違いからこの10年間の決算総額は350億円になりました。交付税措置もなくすべて後年度負担というものです。投資的経費にしか使えない行政改革推進債について、行革で市民の福祉施策を根こそぎ削って、大規模開発や拠点開発などの投資的経費に回す、このことについて「行政改革推進債を発行することにより、本来であれば投資的経費に充当すべき限られた財源を、増加する扶助費等へ配分することが可能」と答弁されました。しかし、市民の福祉サービスを削って、扶助費に回す、どうみても納得のいくものではありません。つまり「行革」をやればやるほど「行政改革推進債」が発行でき、大規模事業の財源にできる、逆にいえば、大規模事業を続けていくためには「行革」を続けていなければならない、という構図が明らかになったと思います。
さらに、減債基金の積立額は約1680億円にものぼっており、2013年度実質公債費比率は9.1%で、3年間積み立てをやめても11.8%という、市債発行に国の許可が必要となる実質公債費比率18%に到達するのは相当余裕があることもわかりました。
歳出でみると、国際コンテナ戦略港湾、京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区の整備など不要不急の大規模事業への投資が際立ちました。3基目のガントリークレーン建設工事8億円、京浜臨海部国際戦略特区では国立医薬品食品衛生研究所整備のための用地取得11億円などでした。高速川崎縦貫道路整備関連、新川崎・小杉駅周辺再開発事業など拠点駅前開発事業関連にも多額な税金が投入されました。
一方子育て・高齢者への福祉施策については、あれだけ切実で、福田市長の公約でも喫緊の課題でもあった小児医療費助成事業の拡大はなく、特養ホームの整備は2012年度工事の遅れなどで開設ゼロだったことによる420床の開設だけで、待機者は今年4月時点で4,927人と待機者解消にはほど遠く、異常な遅れが続きました。
雇用をめぐる情勢が依然として厳しい中でしたが、雇用創出にかかわるものは国の補助額が半減したこととあわせて減額され、新規事業も国頼みという状況でした。
障害者施策では低所得者の医療費無料化は見送られ、心身障害者手当は支給要件が厳格化され、多くの障害者がおかれている生活の困難を軽減する施策は不十分でした。
中小企業・商店街振興関係では、中小企業が切実に求めている販路拡大・開拓支援、新技術・新製品開発等支援事業費、商店街イベント支援補助金が前年度より削減されたままでした。
新たな飛躍と命名された2013年度予算でしたが「新たな飛躍」は、大規模事業ばかりであり、子育て、高齢者、中小企業、市民生活は置き去りにされてきたのが2013年度決算の特徴だったと指摘せざるをえません。こうした予算執行を行った2013年度一般会計決算などを認定することはできません。
決算では、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づく「健全化判断比率」「資金不足比率」による算定結果では、どの指標においても早期健全化団体となる基準はクリアしています。
いま、福田市長のもと、改めて財政難が強調されています。しかし、根拠も明確に示さず、いたずらに市民に財政難を強調することはやめるべきです。市民サービスについてはゼロベースで見直し「スクラップ・アンド・ビルド」の徹底を図り、公共施設の利用料・使用料の値上げなど、これ以上の「行革」は、まさに自治体の役割を投げ捨てるものであり、撤回を強く求めておきます。
川崎市卸売市場特別会計に関連して、南部市場青果卸売業者の業務廃止の申し入れについてです。
北部市場及び南部市場における青果卸売業者である「東一川崎中央青果株式会社」から、本年9月22日付けで南部市場における卸売業務を2015年1月末日で廃止したいとの申し入れがされ、本市の対応の考え方の報告がありました。それによると、「南部支社は10年間にわたり一貫して取扱量が低下し、年間7千万円程度の営業赤字を計上し続けている」と述べ、「南部支社における業務継続を困難と判断し、2015年1月末をもって南部市場の青果卸業務からの撤退を社内決定した」とのことです。
突然前触れもなく来年1月末でやめるというのはあまりにも唐突です。卸売業者の撤退は仲卸売業者4社、売買参加者=まちの八百屋さん83者の方々の生業に大きな打撃を与えます。市民生活にも、市内経済にも大きな影響をもたらすものです。十分な説明と継続に必要な支援を卸売業者に要請しただけでは、市場開設者としての市の責任は果たされないと考えます。
委員会では、市は「10年間、一貫して取扱量が低下してきたことは定期的な報告義務があることから把握していた」と回答しました。また、総括質疑では「南部市場青果部取引協議会などで売買参加者から寄せられた取扱品目や価格についての要望を踏まえ、卸売業者に対し、集荷対策の強化について要請してきた」との答弁でした。
川崎市地方卸売市場業務条例第67条で「市長は、市場における卸売の業務の適正かつ健全な運営を確保するため、必要があると認められるときは、卸売業者に対し、その業務または会計に関し、必要な改善措置を取るべき旨を命じることができる」とあるわけですから、市は集荷対策の強化について、要請したあとも多くは改善されなかったことを把握していたというのなら、「改善措置命令」を出し、相談に乗りながら市場の適正かつ健全な運営の対策を図るべきだったことを指摘しておきます。
卸売業者の撤退で、仕入れ先がなくなる仲卸業者及び売買参加者に対して、卸売業者が行う「事業継続に対する可能な支援」とは、北部市場、大田市場、横浜の市場などから仕入れ先を確保できるようにしたいとのことです。これにはガソリン代がかかり渋滞にまきこまれれば長時間かかります。
そうした売買参加者の搬送コストやリスクについての質疑の中で、理事者から「次の安定的な仕入れ先が見つかるまで、青果の搬送業務ができないか東一青果株式会社に提起している」との回答がありましたが、具体的な支援を強く求めておきます。
同時に撤退時期を延長することも質疑で求めました。理事者からは「1月末というのは差し迫っていると承知している。仲卸、売買参加者の事業の継続が一番大切と考えている。やむを得ない場合は撤退時期の延長も検討してもらう。個別の事情があるので、考えをしっかり聞くことが大切と考え、要望に合った解決をめざしたい」という答弁でした。今後、市も入って引き続き説明会の開催や個別の話し合いを行うとのことです。しっかり仲卸業者、売買参加者の意見要望に応える対策を講じ、市場開設者としての責務を果たすことを強く求めておきます。
議案第114号循環資源貨物用地の取得についてです。
循環資源貨物用地としてJA全農から14,121㎡余を15億1800万円で購入する議案です。当該用地は、もともと千鳥町の別の市有地との土地交換を基本に協議を続けてきたもので、昨年2月にJA全農から固定資産税等の負担軽減のために買い取りを求める要望書が阿部孝夫前市長に提出されていましたが、前市長は動きませんでした。
ところが、福田市長が誕生した直後の12月、土地交換の基本方針がJA全農から15億円で土地を購入する方針へ変更が決定されました。それとのセットで、当初はJA全農との土地交換予定地だった市有地に、自治体がやる必要のない中古車保管施設として2階建て立体モータープールを整備する計画が打ち出され、その事業費が23億円で、合わせて38億円もの公費を支出する事業計画が決定されました。
JA全農から15億円で購入する土地に、市が1億6千万円かけて、鉄くずなどのバラ貨物の荷さばき地を拡大整備する計画ですが、港湾局の予測でも、バラ貨物の取扱量は今後、砂利・砂は減少し、金属くずは横ばいと見込まれています。
いま15億円もかけて市が土地を購入し、バラ貨物の荷さばき地を拡大整備する必要性はありません。よって、本議案には反対です。
川崎市港湾整備事業特別会計に関連してです。
2013年度は、川崎港コンテナターミナルに3基目のガントリークレーンの整備を行い、当年度8億円、前年度の設計費等を合わせ、合計で8億9985万円も支出されました。今年4月よりガントリークレーンの3基体制となったものの、2基同時稼働した日は、4月から7月までの4ヵ月間で延べ14日、月平均では3.5日しかありませんでした。「3基目の整備は過剰投資であり、コンテナターミナル事業の拡張・整備はやめるべき」と質したのに対し、福田市長はコンテナターミナルの拡張方針を続ける姿勢を示しました。
「川崎港利用促進コンテナ貨物助成制度」についてもやめるよう質しました。導入時は、新規航路開設、海外港や国内他港から川崎港利用への転換、既存の川崎港利用者の増加分などが対象でしたが、2013年度から定着化支援として継続事業補助の名目で補助が拡大されました。40フィートコンテナ換算であるFEU1個当たり5000円の補助を出すのに対し、FEU1個あたりのコンテナ利用料収入は2013年度決算では6800円です。福田市長は今後も積極的に補助制度を継続すると述べました。
しかし、コンテナターミナルの大規模な拡張計画を立て、今後10年程度で現在の7倍近い40万TEUにするとの極めて過大な予測を立てたうえで、その過大な目標に少しでも近づけるためにコンテナへの補助を次々に拡大していく。このような際限のない税金ムダづかいの悪循環の構図から、一刻も早く流れを断つべきであることを指摘しておきます。
2013年度決算額において、臨港道路東扇島水江町線整備に1億1791万円余の直轄工事負担金が支出されました。東扇島と水江町を結ぶ橋の建設に総事業費540億円、市の負担180億円という巨額の税金を使う事業ですが、津波浸水予測地域には避難しない、つまり東扇島から水江町へは避難させないという川崎市津波避難計画との矛盾が明らかになってからは、市長が強調してきた「東扇島の1万人の労働者の避難路の確保」という理由が消えました。港湾局長は、災害時の水江町の危険性について「災害には様々な形態があり、事前に特定できるものではない」と、開き直りとも取れる答弁をされました。水江町では大規模災害時には埋立地の液状化や側方流動による変異も指摘されています。これまで最も強調されてきた災害時の「避難路の確保」という理由が破たんし、しかも様々な災害時にこの橋を使えば、むしろ危険性が高いことが明らかになったわけですから、臨港道路東扇島水江町線の整備は巨大な税金ムダづかいの事業であり、ただちに中止することを求めておきます。
請願第81号所得税法第56条廃止の意見書を国に上げることに関する請願についてです。
日本の経済を根底から支えているのは中小業者です。その経営は、大半が事業主と家族の労働によって成り立っています。とくにこの大不況のなか、中小の事業所や商店では人を雇う予定などなく、事業主の妻や子どもの働きによって苦境を乗り切ろうと懸命の努力がされています。労働に対して対価を得ることは当たり前のことです。しかし、この家族従業員が果たす社会的役割を思慮するどころか、その権利を踏みにじってきたのが、所得税法第56条です。青色申告なら家族従業員の給与の経費を認める、といいますが、実際におこなわれた人間の労働について、当局が申告形式をもって、認めるとか認めないとか決めるのはおかしなことです。
さらに2014年1月から、年所得300万円以下の白色申告者にも記帳義務が拡大され、全ての中小業者に記帳が義務付けられました。所得税法第56条の廃止を求める意見書を国にあげるべきであり、請願の採択に賛成いたします。
請願第74号安心してこどもを産み子育てしやすい街づくりを求める請願についてです。
今日の経済,雇用状況から,一刻も早く預けて働きたい、育児休業明けも預けて働き続けたいなど、子育て世代の保育ニーズは急増し、安心して子育てができる認可保育所の利用申請率は5年間で約10%増加し,今年の4月、就学前児童数の29,03%にのぼりました。保育ニーズ調査で把握した潜在的ニーズも含め保育の必要量を正しく把握し、願いに応える認可保育所の増設が必要です。
また公立保育所が担っている保育の専門性や地域の子育て支援事業を高く評価しながら、さらに、民間保育所が増えたことにより、人材を育成する必要性が高くなったとして、その機能も加えた「新たな公立保育」として各区3ヵ所を設定し、それ以外はすべて民営化を推進するというのは、論理が矛盾します。この機能を果たすためには、どの地域にも核となる公立保育所が必要です。これ以上民営化すべきではないと考えます。保育料の応能負担原則、及び保育所職員の労働環境の改善も喫緊の課題と考え,必要な予算措置をすべきと考えることからこの請願に賛成するものです。
議案第127号平成25年度川崎市後期高齢者医療事業特別会計歳入歳出決算認定については、高齢者に差別を持ち込む後期高齢者医療制度に反対の立場から、反対です。
また、私たちは、予算議会において、不要不急の大規模開発を見直し、基金の取り崩しによって、市民生活の切実な願いに答えるべきと、予算の組み替え動議を提出した経過も踏まえ、2013年度決算認定にあたっては、一般会計決算、競輪事業特別会計、港湾整備事業特別会計、公共用地先行取得等事業特別会計、下水道事業会計、水道事業会計については認定できません。
以上の立場から、議案第114号、議案第122号、議案第123号、議案第127号、議案第130号、議案第134号、議案第137号、議案第138号については反対及び認定できないこと、その他の議案、報告については、賛成及び認定することを表明して討論を終わります。