原発輸出を推進しないことを求める意見書を提案~斉藤議員が提案説明
6月20日、川崎市議会で、斉藤隆司議員が提案者を代表して、「原子力発電に関する輸出を推進しないことを求める意見書」案(意見書案第10号)の提案説明をおこないました。
斉藤議員は、放射能汚染水の保管が限界に達し、事故原因の究明が尽くされておらず、15万人以上が避難生活を続けているなかで、安倍首相が、国内では「絶対安全はない」と認めざるを得なくなっているにもかかわらず、海外では「原発事故を経験した日本こそ、世界一安全な原発を提供できる」などと二枚舌を使って、原発を輸出しようとしていることは、とても相手国や、近隣国の国民の納得を得られるものではないと批判。「世界で唯一原子爆弾による被爆を体験し、さらに福島第一原発の事故を起こした日本を「死の灰の商人」とする、原子力発電の輸出を推進されないよう強く要望したく、この意見書を提案するものです」と他党の賛同をもとめました。
しかし、提案者の日本共産党議員、無所属議員の他はこぞって賛同を拒否しました。
斉藤議員の提案説明と意見書案は次のとおりです。
***********************
原子力発電に関する輸出を推進しないことを求める意見書案(提案説明)
意見書案 第10号 原子力発電に関する輸出を推進しないことを求める意見書案の提案説明を行います。
福島第一原子力発電所では、今も破損した原子炉の汚染水に地下水が加わって増え続けています。この汚染水に含まれる放射性物質の量は、大震災直後の水素爆発で大気中に放出されたものの約10倍と想定されています。汚染水の保管も限界に達し、外部に流出する危機的状況が懸念されています。「いずれ海に流せばいい」という無責任な姿勢をとってきた国と東京電力の責任は重大です。
また、原子炉格納容器の破損状況や溶けた核燃料の状態などもいまだ把握できていないままで、事故の原因究明は尽くされておらず、15万人以上の福島県民がなお避難生活を続けているという深刻な状態です。
こうした中、安倍首相は、中東を歴訪した際、「世界一安全な原子力発電の技術を提供できる」と述べ、また、トルコの首相と原子力協定を締結することで合意して、トルコヘの原子力発電関連の設備や技術の輸出を固めました。さらに、インドやポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキアへの原発輸出も進めています。
安倍政権は、当初、「世界最高水準の安全基準をつくり、安全が確認された原発は再稼働します」とのべていましたが、国民の批判におされて、安倍首相自身が「原発に絶対安全はない」と認めざるを得なくなりました。原子力規制委員会も当初の「安全基準」という言葉を使えず、「規制基準」と言い換えました。「世界最高水準の安全基準をつくる」という方針は完全に破たんしています。このように国内では「絶対安全はない」としながら、海外では「原発事故を経験した日本こそ、世界一安全な原発を提供できる」などと二枚舌を使って、原発の積極的な輸出セールスに奔走していることは、とても相手国や、万一の際に影響を受ける近隣国の国民の納得を得られるものではありません。
さらに、トルコは、世界有数の地震の頻発国ですが、日本からの技術や設備の輸出により設置された原子力発電所が地震などにより過酷事故を起こした場合には、輸出した日本の責任も問われかねません。
15日の時事通信の世論調査では原発輸出を「支持しない」とする回答が58%をしめているように、国民の世論は鮮明です。技術の限界を露呈した原子力発電ではなく、再生可能エネルギーなど新たな技術を生かした国際協力を探ることこそが、いま求められていることではないでしょうか。
世界で唯一原子爆弾による被爆を体験し、さらに福島第一原発の事故を起こした日本を「死の灰の商人」とする、原子力発電の輸出を推進されないよう強く要望したく、この意見書を提案するものです。
議員各位におかれましては、提案の趣旨にご賛同いただけますようお願いいたしまして、提案説明とさせていただきます。
************************
原子力発電に関する輸出を推進しないことを求める意見書案
福島第一原子力発電所の現状は、破損した原子炉の汚染水に地下水が加わって増え続け、 その保管も限界に達し、外部に流出する危機的状況が懸念されている。
また、原子炉格納容器の破損状況や溶けた核燃料の状態などもいまだ把握できていない ままで、事故の原因究明は尽くされていない。
こうした中、安倍首相は、中東を歴訪した際、「世界一安全な原子力発電の技術を提供 できる」と述べ、また、トルコの首相と原子力協定を締結することで合意して、トルコへ の原子力発電関連の設備や技術の輸出を固めた。
しかしながら、福島第一原子力発電所における事故の原因究明も尽くされていない上に、 原子力発電所の再稼動への国民の反対も根強く、長期的な原子力関連の政策も曖昧にした ままといった国内状況であるにもかかわらず、海外では安全であるとアピールし、積極的 に輸出することは、相手国や、万一の際に影響を受ける近隣国の国民の納得を得られるも のではない。
さらに、トルコは、世界有数の地震の頻発国であるが、日本からの技術や設備の輸出に より設置された原子力発電所が地震などにより過酷事故を起こした場合には、輸出した日 本の責任も問われかねない。
よって、国におかれては、技術の限界を露呈した原子力発電ではなく、再生可能エネル ギーなど新たな技術を生かした国際協力を探ることこそが、長期にわたって帰郷できない 帰宅困難区域の人々を始めとする福島の人々への償いであるとの認識に立ち、原子力発電 に関する輸出を推進されないよう強く要望するものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。