低い入居基準の市営住宅条例改定には賛成できない~12月議会で斉藤議員が代表討論
2012年第4回川崎市議会定例会で、12月12日、採決に先立ち、日本共産党を代表して、斉藤隆司議員(多摩区)が討論を行いました。
斉藤議員は、川崎市市営住宅条例の一部を改正について、これまで同居している親族ということで認められていた使用継続が、使用者の配偶者、高齢者、障がい者等で特に居住の安定を図る必要がある者と明確化されるが、一律の対応でなく慎重かつきめ細かい検討が必要とされることは委員会審査で確認されたとしながらも、生活苦等から公営住宅入居を希望する市民が大幅に増えている中で、すでに引き下げられた入居基準を前提として入居基準を定めた条例案には「住宅は福祉」の立場からは賛成できないとして反対を表明しました。
水道事業、工業用水道事業、下水道事業、交通事業、病院事業などの地方公営企業会計制度の見直しにともない改正される条例について、公営企業の設立主旨からすると仮に採算の悪い事業であっても「住民福祉の向上」に必要な事業は進める必要があり、条例改正が採算性重視をすすめて公営企業の役割を損なうようなことが無いよう求めたうえで、賛成を表明。
南部地域療育センターの指定管理者の指定と川崎市視覚障害者情報文化センターの指定管理者の指定について、福祉施設に指定管理制度を導入することに反対する立場等から反対を表明しました。
斉藤議員の代表討論は次のとおりです。
私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論を行います。
議案第214号川崎市営住宅条例の一部を改正する条例の制定についてです。
同居承認及び、入居承継承認運用指針の改定による使用承継の範囲の明確化についてです。
今回の改定では、これまで、同居している親族ということで使用承継が認められていたものを、使用者の配偶者、高齢者、障害者等で特に居住の安定を図る必要がある者により明確化するというものです。
明確化された基準を満たす者は、使用承継を認められますが、たとえば、障害認定を受けていなくても、状況によっては居住の継続が必要な場合もあると考えます。よって、一律に承継を認めないとするのではなく、慎重かつきめ細かい検討が必要と思います。委員会審査でもそのことが確認されましたので、ぜひ関係局とも連携して、丁寧な対応をお願いします。
さて、公営住宅法施行令の改定により、2009年4月から入居基準が引き下げられました。
その結果、それまで入居対象とされていた人たちが、申し込むことすらできなくなってしまいました。持ち家政策をとっている我が国の住宅政策によって、民間賃貸住宅の賃借料等、住居費の生活費に占める割合の高さに加え、このところの雇用の非正規化の進展、経済状況の悪化などから、困窮した生活をさらに厳しくしています。現在、公営に入居を希望している市民は、大幅に増え続けています。
わが党は、「住宅は福祉」という理念を掲げており、公共住宅政策の拡充は、憲法第25条に基づく理念を具現化する上で、当然の施策であると考えます。
よって、入居基準を引き下げた公営住宅法施行令の基準を前提とする本条例案については、賛成できません。
議案第222号川崎市水道事業、工業用水道事業及び下水道事業の設置等に関する条例及び川崎市交通事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例の制定について、議案第226号川崎市病院事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例の制定についてです。
両議案とも、地方公営企業法の会計制度の見直しに伴い条例改正を行うものです。その主な内容は、資本金剰余金の処分を可とする「資本制度の見直し」と借入資本金を資本から負債項目に移行するなどの「会計基準の見直し」です。
資本剰余金の処分はこれまで原則不可とされてきましたが、今回の改正で可となります。これは自己資本造成という地方公営企業の安定性と信頼確保という機能を損なうおそれがあるのではないか、との疑念があるうえ、2014年度予算から適用される予定の「会計基準の見直し」についても懸念があります。
その内容の1つである「借入資本」の組み替えですが、私企業、例えば株式会社は、「株式」という方法で「資本」を集め、これは返済の必要のないものです。公営企業は、この資本にあたる資金を企業債など「借入資本金」によって、まかなってきました。今回の改定で、「借入資本金」が「負債」として計上されることになりましたが、私企業における「借入金」とは性格が異なるものを、「負債」に移行することで、会計上は「負債」が大きくなり、経営状態が悪化したと判断されかねません。
また、退職給与引当金も、全職員分の退職金の積み立てを行うことになれば、剰余金が生みにくい事業では、これも、会計上、経営を圧迫する要素となります。
公営企業は、当然のことながら、私企業とは事業の目的も異なり、利益を生み出すことが目的ではなく、住民の福祉向上がその目的です。これは、1952年に地方公営企業法が制定された際の提案理由説明にもあるとおりです。この趣旨に照らすなら、仮に採算性の悪い事業であっても、必要な事業を進める必要があります。今回の改正によって、各事業の中で、採算性がより重視され、採算性の悪い事業は切り捨てられていけば、公営事業の目的を果たすことはできません。
そもそも、利潤の追求を目的とする民間の営利企業に適用される会計基準を住民の福祉向上を目的とする公営企業に同様に適用するのは無理があると考えます。
今回の改正は、国の法改正に伴う条例改正であり、やむを得ないものとして賛成するものですが、いたずらに“赤字”などが強調され、「住民の福祉の向上」という公営企業の役割を損なうことの無いよう、求めておきます。
議案第233号南部地域療育センターの指定管理者の指定についてです。
さまざまな障がいを抱えた児童にとって、落ち着いた環境を保障することは大変重要なことですが、障がい児などに対する通所支援を行う重要な役割を担う南部地域療育センターを中高一貫校の敷地の中に置くことは、療育に必要な環境を阻害するのではないかとの懸念を払しょくできません。また、指定管理者制度を導入することについても、1年間の引き継ぎ期間を設けたとしても、現在児童・家族・職員との信頼関係を断ち切ることで、児童に大きな負担を強いるものです。療育の柱となる職員との信頼関係を断ち切ることになるとして、指定管理者制度の導入に反対してきた経緯から、本議案には反対です。
議案第236号川崎市視覚障害者情報文化センターの指定管理者の指定についてです。
川崎市立盲人図書館を視覚障害者情報文化センターに名称を改め、管理運営を行う指定管理者の指定議案です。
本年第2回定例会における指定管理制度の導入議案について、盲人図書館がこれまで果たしてきた視覚障害者への日常生活に必要な基礎的な訓練等の継続、情報文化センターとしてふさわしい機能の充実について確認しましたが、管理運営については,職員の高い専門性、継続性、安定性を必要とする福祉施設における指定管理者制度はなじまないとして反対しました。
今議案について、委員会では、長年、利用者、多くのボランティア団体がともに地域福祉の充実のために活動してきた取り組みを今後も継続して行う体制について等を確認しましたが、基本的に導入議案に反対した理由で、今議案についても賛成できません。
以上の立場から、議案第214号、議案第233号、議案第236号については反対、その他の議案及び諮問・報告については賛成することを表明して討論を終わります。