岩手県への視察(2) 【宮古地区内・仮設焼却施設】
2、岩手県宮古市-災害廃棄物の仮設焼却施設
7月10日、災害廃棄物の広域処理などにかかわって、宮古市の中心部から少し離れた山中にある仮設焼却場を訪れて、県の担当者から話を伺いました。
・民家のそばに仮置き場、火災の懸念も
岩手県沿岸部はリアス式海岸のため平地が少なく、一次仮置場も民家のそばに置かざるを得ない、とのことでした。私たちが視察した宮古市田老地区にも集落のほど近くに仮置き場がありました(下写真)。
昨年は町中に流入した魚や水産加工物・ヘドロなどからの悪臭がひどかったのですが、今年はそうした腐敗物は処理されており軽減されているとのことです。また、去年は仮置場で廃棄物の発酵熱から自然発火が起こったため、現在は廃棄物の内部温度を測定して対応しているとのことでした。
(画像左上・右上:岩手県の資料より)
(写真下:田老地区の仮置場)
・基準値を下回る放射能
放射能については表のとおり、大きく基準を下回っているとの説明でした。
(画像:岩手県の資料より)
・平常時の90倍相当の災害廃棄物(山田町・大槌町)
岩手県の廃棄物の全体量は、環境省が5月の全体の推計量見直しを行った結果、大幅に増えて525万tです。これは、津波被災をしていない自治体も含めた岩手県すべての自治体の一昨年の処理実績から見て12年分に相当する量です。宮古市では33年分、山田町や大槌町などでは実に90年分相当の廃棄物が発生しています。
(画像:岩手県の資料より)
・災害廃棄物の大半は処理の見通しがついた
525万トンのうち「金属くず」や「コンクリートがら」は売却や建築資材への活用をするため、処理が必要なのは326万トンです(画像左上)。
この326万トンを仮設焼却炉を含め、廃炉予定だった施設を再稼働するなど県内で可能な限り処理します(画像右上)。
これらの施設を最大限活用しても、終了予定の2013年3月末までに処理できるのは約207万トンです(画像左下)。
残る約119万トンのうち、24万トンは広域処理の見通しが立っており(すでに処理を始めている自治体、広域処理への協力表明している自治体を含めて)、94万トンの処理方法が未確定です(画像右下)。
・「不燃物」「漁具・漁網」の処理方法が未確定
広域処理を行うもののうち、処理方法が未確定となっている94万トンの内容は、「不燃物(津波による土砂などの堆積物など)」と「漁具・漁網」です。これらは、環境省の指針をもとにした「復興資材活用マニュアル」
(http://www.pref.iwate.jp/view.rbz?nd=4406&of=1&ik=1&pnp=50&pnp=2648&pnp=4406&cd=39813)
にそって、可能な限り県内処理、復興資材化に努めるとのことです。
しかし、『分別土C種(ふるい下分)』(資料18)については「コンクリート片や粉々になった壁材等と木片・プラスチック等が細かく混じり合ったがれきのうち、木材等の可燃物が多い…ため、利用用途の限定や地盤改良及び安定処理等の検討も踏まえて活用用途の範囲を拡げる。利用が困難な場合は、セメント原料や埋立て処分とする」と、同マニュアルは資材への活用が困難なことを指摘しています。県の担当者は、この『分別土C』には木くずなどが混入しており、仮に「いのちの防潮堤」のような事業で埋め戻したとしても、土中で腐ってしまうため空間ができてしまう、と述べていました。
さらに、漁網にはワイヤーや鉛などが混入しているなどの理由で「不燃物」「漁具・漁網」の処理が技術的にも未確立なため、環境省も自治体にできていないとのことでした。
このように可燃物については広域処理も含めて処理の見通しが立ったものの、「不燃物」「漁具・漁網」については(一部は山形県米沢市の民間施設が引き受け、埋立てをしているとのことでしたが)、環境省も処理の方針をまだ明確に決められていないため、岩手県も見通しを立てられていない、とのことでした。「仮に不燃物や漁具・漁網の処分技術をもった自治体があるとすれば、処理をお願いしたい」と、岩手県の担当者は話していました。