2009年第3回川崎市議会定例会で勝又光江議員がおこなった日本共産党代表討論
2009年第3回川崎市議会定例会で勝又光江議員がおこなった日本共産党代表討論はつぎのとおりです。
私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論をおこないます。
まず、2008年度(平成20年度)の各会計決算認定についてです。
市長は同年度の予算の特徴について「今までやや大盤振る舞いだった部分は削った」と強調しました。
わが党が昨年度の予算議会で、「貧困と格差の広がりに追い打ちをかけ、市民の生きる希望まで奪うのか」とただすと、市長は「厳しい財政状況」だから「施策や制度の再構築を図った」と答えました。しかし、同年度の市税収入は2937億円余で、前年度より41億円余の増であり、自主財源の合計は4082億円余で、前年度比412億円余の増となっています。それなのに「財政が厳しいから」と67歳から69歳の「川崎市老人医療費助成制度」(川老制度)を廃止してしまいました。
2003年度の在宅寝たきり老人介護援助手当の廃止以来、財政再建団体に転落してもいないのに、あたかも再建団体に転落したかのように市単独事業と上乗せ事業のほとんどを切り捨ててきました。2008年度は、市民にとって最後の砦ともいうべき川老制度の廃止と結核・精神医療付加金制度の廃止、ならびに生活保護世帯への特別乗車証も冷たく切り捨てたのです。
福祉切り捨てのやり方も本当にひどいやり方です。市単独事業だった認知症高齢者を介護している家族へのヘルパー派遣試行事業は、制度があること自体を知らせずに、利用者が増えているにもかかわらず、固定化しているなどと居直って、制度を廃止してしまいました。また、要介護生活支援ヘルパー派遣事業と生活支援型配食サービスはたくさん需要があったにもかかわらず、介護予防制度の発足を理由にこれも冷たく切り捨て、復活の要望に耳を貸そうとはしませんでした。
その一方で水江町用地を248億円もかけて買い戻し、さらにイノベート川崎を新たに立ち上げ、インベスト神奈川とも併用できる県内最大の助成制度を整え対応してきました。イノベート川崎の適用要件は、最低投資額を大企業は50億円以上、中小企業10億円以上、市内中小企業は2億円以上として、いかにも中小企業にも門戸を広げているように装っていますが、資本金3億円以下の中小企業が、しかも中小企業がいま置かれている実態からしても、10億円、2億円の投資が本当にできるのでしょうか。実際には力の有り余った大企業だけが対象とならざるを得ない助成制度であり、福祉を削り続けながら行うべきではなく、税金の使い方が根本から間違っていると厳しく指摘せざるを得ません。
議案第90号川崎市水道条例の一部を改正する条例の制定について、議案第91号川崎市工業用水道条例の一部を改正する条例の制定についてです。
市長が、4年前に水道料金を値下げすると公約したことから検討されてきたわけですが、今回の水道料金改定で特に目立つのが、上水道の大口利用者の値下げと、工業用水道の値下げです。料金値下げに充てる予算9億9千万円のうち、8割が工業用水の負担軽減、15%が上水道大口利用者です。実に96%が大口利用者で、市民は4%です。
大口利用者・大企業には2重3重に手厚く、大企業の方を向いた値下げであるということが、委員会審議の中でも明らかになりました。
そこで、取ってつけたような行革効果の還元で、全ての利用者の基本料金から月50円の値下げを3年間行うというものです。
上水道の改定では、市民利用の水量区分については一切値下げされませんが、大口利用者の水量単価について、他都市に比べても最高単価は高くないのに大幅に引き下げました。その結果、ラゾーナ1社で1年間1600万円の値下げになることも明らかになりました。莫大な売り上げを上げ、水道料金を経費として計上できる大企業には大幅な値下げをおこなう一方で、市民に対しては3年間の暫定的な月50円の見直しでは、到底市民は納得できません。
また、工業用水事業の補てん水の見直しについては、そもそも、川崎市水道65年史でも明らかなように、これまで、上水道事業において、酒匂川水系水源開発に際し、上水としての必要量の他に、水量約27万トンの上乗せを強く求める工業会からの要望にそって、水量を約25万トン多く確保しました。
その結果、上水道事業がその負担を35年以上も続けることになったわけです。委員会審議でも、現行料金で換算すると少なく見積もっても年間36億円が上水道事業として負担していることが明らかになりました。
そうした歴史的経過からも、工業用水の上水道への負担を維持もしくは増やすべきところを、今回の改定で、大幅に軽減しています。
補てん水については、特殊な方式という点からも、直接契約という方式にすることは認めますが、しかし、工業用水事業が負担している分水負担金額に見合った直接契約での単価設定とすべきです。
また、工業用水ユーザーとは綿密な協議を重ね、経営問題協議会に料金改定に関するアンケート結果まで反映させております。上水道については、定期的な意識調査と直前のパブリックコメントの実施だけで、市民説明会を開催するなど市民討議もないまま一方的に提案されました。
まさに、水道料金の値下げは大企業からの要望にこたえたもので、大企業に手厚い料金改定です。よって、議案第90号、議案第91号には反対です。
議案第93号川崎市立学校の設置に関する条例の一部を改正する条例の制定についてです。
桜本小学校、東桜本小学校の統廃合についてです。学校にたいする地域の方々の思いというのはひとしおで、まさに地域の文化の拠点です。自分が通った学校、子どもたちが育ち、見守ってきた学校、行事など含めて地域で支えてきた学校、ここが廃校になるということはとてもつらいことなのです。双方とも小規模学校、たしかに単級でクラス替えができないデメリットはありましたが、小規模校ならではの教職員の配置、ゆとりのある教育環境というメリットもあり、子どもたちは障害のある子どもたちとともに育ってきました。
そこに統廃合が提起され、何回もの検討委員会の開催、そのなかで「小規模校のメリットは統廃合しても生かす、そのデメリットは解消する」という、新しい学校のイメージプランが提示され、最終的にはこのプランが確実におこなわれることを前提に合意がされたと思います。
2年間、子どもたちは東桜本小学校で過ごすことになります。特別教室を普通教室に転換して6つの普通教室ができますが、特別教室が基本的にはなくなってしまうのではないか心配があります。特別支援教室もぎりぎりです。教育環境は子どもにとって確実に過密になります。5,6年生はここから卒業していきます。本来ならプレハブを設置して、ゆとりのある学習環境をつくるべきだったのではないでしょうか。
2つの学校が一つになるということから、教職員が6人も削減されます。職員の加配、カウンセラーの加配は必要不可欠です。イメージプランのなかでも約束されています。さらに、桜本小学校の大規模改修にあたっては教職員の現場の声を充分に聞いて、最大限とりいれることを強く要望しておきます。
議案には、市立幼稚園を廃園にすることが含まれています。川崎では市立幼稚園は二園になってしまったものの、研究実践園としての取り組みは障害児の積極的受け入れや私立幼稚園との間で行われてきた公開保育など、これらの実践は私立幼稚園の質の向上にも貢献し、さらに地元高校生を受け入れての保育実習を実施するなど、幼児の成長発達を保障するうえでたいへん貴重な役割を、また経済的困難な家庭の子どもたちの受け皿にもなるなど、公立幼稚園ならではの役割をはたしてきました。
公立幼稚園の必要性について他都市の視察をした際、そこでみた姿は公立幼稚園と私立幼稚園がそれぞれの役割分担をしながらそこの自治体の幼児教育に責任をもっていたことでした。さらに、川崎では幼稚園入園の希望が非常に多く、定員超過率も112%になっているいま、廃園するのではなく、せめて各区に一か所、市立幼稚園を設置して、この間蓄積してきた豊かな実践を子どもを通して生かし、公立としての役割を引き続き果たすことこそ求められています。以上、市立幼稚園の廃園には反対なことから、この議案には賛成できません。
議案第94号負担付き寄付の受納についてです。
これは藤子プロから「(仮称)藤子・F・不二雄ミュージアム」美術館を条件付きで川崎市が寄付を受けるものです。建物の建設にかかる15億円~16億円の費用は藤子プロが負担するものの、小田急からの借地料に加え建物の基盤整備や外溝工事、道路からのアプローチの整備のほか交通アクセスについては、川崎市が用意するというものです。
さらに、指定管理者も、市が協議するとなっているものの、藤子プロが選定したものを実質上追認するという初めてのケースです。
ドラえもんの誕生日に合わせて開館することを前提に進めているために、いくつもの不確定要素が残された寄付の受納ではないかとの懸念が残ることを指摘しておきます。
議案第101号川崎市下作延中央保育園の指定管理者の指定についてです。
2005年度に指定管理者制度により民営化された下作延中央保育園は、来年度、5年間の契約期間を終えます。本議案は、現在の指定管理者である(財団法人)神奈川県民間保育園協会に、「非公募による指定」で、引き続き、指定管理を行わせるものです。
保育の仕事は、人と人とのつながりや信頼関係が最も大切にされなければならない事業です。もともと、指定管理者制度の目的は、事業費の削減を意図するもので、子どもの育ちの場に、このような「コスト論」を導入すべきではありませんでした。そのため、私たちは、保育事業に指定管理者制度を持ち込むこと自体に反対をしてきました。
委員会審議では、今回の再指定にあたって、保護者会からも継続を望む要望書が出されていることも、明らかになりました。せっかく築いた保育士と児童・保護者との信頼関係が“再び断たれることのないように”との、強い思いの表れではないでしょうか。
公立保育園の民営化をやめ、指定管理者制度の導入そのものを行わなければ、保護者にこのような心配をさせることはありませんでした。今回の公募によらない再指定は継続性を担保する工夫ではありますが、私たちは、公立保育園の民営化と指定管理者制度の導入そのものに反対してきた経過から、指定管理者制度を前提とした本議案には、賛成しかねることを表明いたします。
議案第108号平成21年度川崎市後期高齢者医療事業特別会計補正予算及び議案第118号平成20年度川崎市後期高齢者医療事業特別会計歳入歳出決算認定についてです。
後期高齢者医療制度は75歳という年齢で国民健康保険等から無理やり脱退させられ、別制度に囲いこみ負担増・給付減を強いる制度として一貫して廃止を求めてきました。しかもこの制度は2年に1回、高齢者人口の増加や医療費増に応じて保険料が値上がりします。最初の値上げは来年の4月です。70歳から74歳の窓口負担の1割から2割への引き上げ凍結などの負担軽減措置も来年3月までです。後期高齢者医療制度のすみやかな廃止を求める立場から、これらの議案には反対です。
議案第115号平成20年度川崎市国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算認定についてです。
精神障害者の通院・投薬は長期にわたる場合が多く、生活と医療は切っても切れない関係にあり、治療の中断はあってはならないとされ、結核・精神医療付加金制度も大きな役割を果たしてきました。しかし、「他の障害者は負担している」という悪しき不公平論をもちだして、医療付加金制度を2008年10月から廃止してしまいました。精神障害者の就労率は低いといわれる中、経済的負担がさらに生活を厳しくするものとして、この制度の廃止に反対し、制度の復活を求める立場から、認定できません。
議案第117号平成20年度川崎市老人保健医療事業特別会計歳入歳出決算認定についてです。
この議案は、後期高齢者医療制度の発足と同時に、老人保健法による医療を廃止した関連議案のために反対です。
私たちは、予算議会において、「行財政改革」による福祉切り捨てで極限まで追いつめられた市民生活を、しっかり支える市政運営に切り替えるべきと予算の組み替え動議を出しました。その経過も踏まえ、2008年度決算認定にあたっては、一般会計決算、被保護世帯への上・下水道料金の基本料金減免の復活を求めた下水道事業会計、歳入予算の組み替えとして基金からの借り入れを充てた競輪事業特別会計、港湾整備事業会計、公共用地先行取得等事業特別会計、並びに縦貫道路の共同溝がらみの水道事業会計、工業用水道事業会計については認定できません。
以上の立場から、議案第90号、議案第91号、議案第93号、議案第101号、議案第108号、議案第112号、議案第113号、議案第115号、議案第117号、議案第118号、議案第122号、議案第126号、議案第129号、議案第130号、議案第131号、報告第15号については反対及び認定・承認できないこと、その他の議案、報告については、賛成及び認定・承認することを表明して討論をおわります。