2010年第1回川崎市議会定例会で佐野仁昭議員がおこなった代表討論
3月18日に佐野仁昭議員がおこなった代表討論はつぎのとおりです。
私は、日本共産党を代表して、今議会に提案された市長の施政方針ならびに予算案を含めた諸議案について討論をおこないます。
予算案の特徴と評価についてです。
2010年度予算案の最大の特徴は、市税収入が大幅に減少していることです。法人の市民税が昨年度に引き続き大幅減となり、人口が増えているにもかかわらず個人の市民税も減少し、市税収入が過去最大の下げ幅となったことです。このことは、市民の暮らしと中小企業の経営が底なしの悪化を続けていることを表しており、自治体が全力をあげるべき課題は、市民の雇用の安定を図りながら、福祉施策の拡充を図ること、地域経済の主役である中小企業の支援の強化です。
市民の雇用の安定を確保するためにも福祉施設で働く労働者の労働条件を抜本的に改善することを東京都千代田区のとりくみを示しながら、市長の見解を求めましたが、具体的な答弁はありませんでした。他都市では、高校新卒者の就職内定状況が芳しくないことが判ると、市長を先頭に地元の企業をたずね採用枠を拡大に奮闘しました。
川崎市でも行動を起こすべきと質しても、国の制度の活用を述べるだけで、新たな行動には立ち上がろうとはしませんでした。
地域経済の土台を支えている中小企業への支援を強化する試みの一つとして、着実に実績を伸ばしているコーディネート支援活動の抜本的強化につながるコーディネーターの増員にも否定的でした。
商店街が取り組むイベント事業については、予算は増やさずに、ランク付けでふるいにかけ、Cランクは補助額を10万円以下にするようなやり方は改めるべきと経済労働局長に質しましたが、「支援の重点化を図りながら、予算の範囲内で支援していく」とのことでした。
このような、市長の姿勢では、市民の生活も中小零細企業の経営も守ることはできません。「融資の充実と言われても、仕事がなければ、返せない」―こうした事業者の声に、もっと真剣に耳を傾けるべきではないでしょうか。経営を直接温める、機械のリース代や家賃への補助など、固定経費への補助を行うべきです。また、市内の中小企業にも潜在的な雇用の力があります。市長が先頭に立ち、中小企業を回り、雇用の掘り起こしをやることを、改めて要求するものです。
建設業振興策についてです。
直近の2006年度の統計調査でも、全産業に占める事業所数でも3560事業所、約1割を占め、従業者数でも29852人6.2%を占めている産業です。主要な産業の一つと言っても過言ではありません。新年度は、建設業振興事業で、営業力アップのためのホームページ作成支援や、研修会、受注確保のための住宅フォーラムなどに加えて、さらにきめ細かな中小建設業支援を行うとのことです。
建設業の事業形態ごとの振興策を図る上で、まず、実態をつかむと同時に、防災、福祉、エコなどあらゆる可能性から、リフォーム推奨商品券交付事業など、他都市の事例も参考にして、市内建設業の振興に資する対策を是非具体化されるように求めておきます。
公契約条例と入札制度の改善についてです。
政令市で初の制定にむけ期待が大きく高まっていますし、その内容についても注目が集まっています。それだけに関係者の意見を十分に聞きながら検討を進めることが重要です。意見交換をパブリックコメント待ちにならずに、検討内容の説明と懇談の場などを積極的に設けることを強く求めておきます。
また、入札制度改革については、低入札価格調査時に一定の基準以下の入札について無効とする「失格基準」の導入と最低制限価格の対象工事の範囲拡大について、いずれも、新年度のなるべく早い時期の実施が約束されました。
さらに、ダンピング受注の連鎖を食い止めるためにも、低入札調査対象工事の前払金については、40%支給でなく20%に抑制することについても、実施に向け、早急に結論を出すよう求めておきます。
貧困から子どもを守る施策についてです。
子どもの貧困が社会問題になっている中、就学援助の拡充が切実に求められていますが、川崎の就学援助認定率は全国平均から見て非常に低い状況です。就学援助基準を引き上げるとともに、利用しやすい方法に改善すべきです。
小・中学校は、義務教育といっても無償ではなく、就学援助を受けても補いきれない状況です。こうした状況から、大和市や墨田区、中野区では、メガネ・コンタクトレンズ購入代・卒業アルバム代などを援助対象に入れています。しかし、本市は逆に「行革」でこうした項目を削減してしまいました。
市長は、子育て支援施策について、必要な財源対策を講じていくといわれました。であれば、削減した項目を復活し、さらに増やして負担軽減に努めるべきです。
国は、クラブ費・生徒会費・PTA会費については新たな項目として追加し、7月から実施する方向です。横浜市同様、本市でも前倒しして行うことを求めておきます。
短期保険証を高校生まで交付することについてです。
厚生労働省は、18歳以下の高校生世代に短期保険証を発行することにしましたが、実施を7月からとしています。短期保険証の交付は自治体が裁量でできることから、すでに高校生世代まで実施している自治体もあります。川崎でも4月から高校生世代まで交付することを求めておきます。
子育て支援についてです。
小児医療費助成制度について、市長は昨年の市長選挙で拡充すると公約しましたが、「市の財政状況が厳しく、こども手当に地方負担が残ることから具体化に至らなかった」といわれました。しかし、神奈川県下では、国の動向にかかわらず、3自治体が中学卒業まで所得制限なしで新年度予算案に計上し、小学校卒業までは9自治体が実施予定です。前年度と比べて対象年齢が予算案で拡大する予定となっているのは10自治体にのぼっています。本市でも中学3年まで年齢を拡大し、所得制限をなくすよう強く求めておきます。
私立幼稚園保育料補助制度についてです。
国の見直しでDランクの保育料補助額が、市費で補助を行っているEランクと逆転現象が起こり、その差額を市費で補てんすることについては一定評価するものです。しかし、本市の保育料、入園料の平均が政令市の中で最も高く、県の学事課の調査によれば、新年度の保育料、入園料の平均額は、今年度よりさらにあわせて2,726円増額になるとのことです。Dランクは年収360万円から680万円以下と対象範囲が広く、結果的に今年度と補助額は変わりません。特にCランクとの差がさほどない保護者にとって増額は強い要求です。Dランクへの増額を求めておきます。
保育事業についてです。
2009年4月の待機児童が713人に達したため、市は年度途中で保育緊急5ヵ年計画の改訂を余儀なくされ、当初計画の上に、緊急対策を講じ、1,070人の認可保育所の定員増をはかりました。しかし今年2月時の認可保育所への新規申し込み者は昨年より414人増えて6,367人に対し、不承諾通知は昨年より189人増えて2,513人にのぼり、不承諾率は39.4%、昨年より0.4%増えました。不承諾の方々は4月までに認可外施設を回り、預け先を見つけなければ仕事に就けない、育児休業から復帰もできない事態になってしまいます。
今年もこうした深刻な事態や入所選考基準のAランクでも入れない事態は改善されていません。ましてや仕事を探すEランクも保育を必要とする状況に変わりありません。こども本部長は「新年度4月の入所状況は、内定の段階であるが、概ね計画で見込んだものになると考えている」との答弁でした。雇用が不安定で若い人たちの収入が減少している現在、保育所は子育て世帯のくらしのセーフィティーネットです。潜在的な保育所のニーズはますます高まると考えます。待機児童を一刻も早くゼロにするため、必要な緊急対策をとること、市有地貸与方式や民有地を取得し思いきった認可保育所の整備を求めておきます。
教育についてです。
少人数学級については、多くの自治体で先駆的に取り組まれ、きめ細かい指導が展開されるなどその効果はゆるぎないものとなり、拡充するところは増えています。国もやっと学級編成のあり方の検討を行う方向になってきました。
しかし、川崎市独自で小学2年生まで拡充することは今の時点では難しいとの答弁でした。子どもたちをとりまく学校での課題はたくさんあります。そのなかでも基本である、学級編成を少人数にしていくことは、もっとも効果がある喫緊の課題です。国待ちにならず、学年の拡充こそ取り組むべきです。
道徳副読本についてです。
文科省の説明をそのままに「著作権法に違反する」として、副読本を保護者に買わせたのは川崎市だけでした。そもそも今回のことは、学校現場からはどう考えても文科省の言い分はおかしい、と警告があがっていたにもかかわらず、その声を無視して学校現場に押し付けたのです。教育委員会がそのつけを保護者に転嫁する理屈は通るものではありません。保護者に代金を返還することを求めます。
中学校ランチサービスについてです。
子どもたちの心身の発達をどう保障していくか、教育に課せられた課題であることはいうまでもありません。心身の健康をどう維持、発達させるか、その大きな課題をもつ食育は給食と一緒に取り組まれてこそ、大きな効果が引き出されます。
はるひ野中学校では喫食率が一貫して50%前後を確保している事実。どんなに工夫を重ねてもほとんど喫食率があがらない他校のランチサービス。その一方、小学校の給食を唯一の栄養源としている児童がいる実態、このような現実を見れば、栄養のバランスがとれて、安心でおいしい中学校給食こそ必要です。小学校の給食室を活用することも検討するとのことです。このことを契機に中学校給食として踏み出していただきたいと思います。
定時制高校の学区変更に関連してです。
川崎市域に居住または勤務していない川崎市以外の子どもたちは、特例として学区の8%以外、川崎市立高校定時制課程普通科には入学できなくなるというものです。
今回の変更には、横浜市立高校定時制課程を統廃合したことがあり、根底には公立全日制高校の募集人員が不足していることが原因であることは明白です。神奈川県の「公私協議会」では公私比率は6対4となっています。しかし、公立高校に入りたいと願う声は8割にものぼっています。この公立60%入学も県内でもばらつきがあり、川崎では54.5%しか入れていません。公立全日制の枠を早急に増やしていくことこそ必要です。「横浜で定時制入学に対する学区を設けたから、川崎でも」というのは、さまざまな理由から定時制で学びたいすべての子どもたちに「就学の機会を保障する」という定時制高校本来の役割に逆行するものです。
神奈川県と川崎市・横浜市・横須賀市などが、生徒の通いやすさを考えた定時制課程の全県的配置計画を検討する機関を設置することを求めておきます。
障がい者施策についてです。
国が介護給付などの利用料を低所得1,2の方に限り無料にするということから、地域生活支援事業についても無料にするよう求めました。あと250~300万円あればできるとのことです。関係局と協議し検討するとのことですので、前向きの検討を求めておきます。国の無料化で取り残されたのが医療費です。障害者団体は「極めて不十分」と意見をあげています。国保の精神障害者医療付加金も廃止され、医療費の負担はいまだ重く、医療費も含めて無料にすることを強く求めるものです。
川崎市心身障害者手当は障がい者の皆さんの生活費の一部になっており、存続すべきと求めましたが、見直すためにさらに検討会を設けるとのことでした。県は手当の削減額を地域生活支援に充当すると説明し、削減を強行しましたが、削減額の半分しか新たな予算配分を行わず、この削減の狙いが明らかになりました。このような見直しを行うべきではありません。強く要望しておきます。
障がい者施設で働く福祉労働者の労働条件改善を求めました。第3期障害者計画策定に向け、実態調査を実施するとのことです。2010年度には調査をすることになると思いますが、調査を急ぐとともに、深刻な実態をきちんと把握し対策をたてることを要望します。
高齢者施策についてです。
特別養護老人ホームの整備についてです。
待機者が1月末で5.339人という実態を示し、特養ホームの抜本的整備を求めたのに対し、「『整備促進プラン』に基づき着実な整備に取組んでいる」との答弁にとどまりました。しかし、現在のプランでは待機者の解消にならないことは明確です。
「第二期計画」で介護度に点数をつけて介護度の高い人しか入れないように誘導し、「整備促進プラン」では入所基準を「要介護度3以上」として、待機者数を低く抑えてきたにもかかわらず、待機者は5,300人を超えているのです。その原因が、この間の増設数の低さ、2008年、2009年の2年間ではわずか29床という低い増設状況にあることは明らかです。
市長は施政方針の中で、「誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせる」よう、特養ホームの整備促進をあげていますが、目標は2011年までわずか400床で、今年度開設するという小規模多機能型9ヵ所は、いまだ建設メドが全くたっていないのです。
何年経っても特養ホームに入れない、老健施設にも入れない、そのため在宅で必死の思いで介護している家族への介護援助手当は廃止する―これが「住み慣れた地域で安心して暮らせる」ための施策でしょうか。
要介護度1から特養ホームへ入所可能とする介護保険法の趣旨からは「要介護度3以上」という入所基準は極めて問題です。すぐに取り払うべきです。また、次期プランでは、希望するすべての人が入所できる増設計画にすることを強く求めておきます。
介護人材不足の解消についてです。
2007年度の高齢者実態調査によると、居宅サービス事業所の85.3%、施設サービス事業所の実に91.7%が、人材確保が困難であると答えています。2009年に介護報酬が改定されたもののわずかな引き上げで、この実態に歯止めはかかっていません。
わが党は、国の施策のみならず市の独自施策を求めましたが、新たに3年間で1,600人の介護人材を必要としながら主に養成事業や離職予防の相談窓口の設置や、介護の魅力のPRなどを進めているとのことでした。問題はこうした事業で本当に人材が確保されるのかです。
たとえば、地域雇用創造推進事業では、2009年度107名の受講者のうち就職者数は2月時点で63人、福祉人材バンク事業でも、2008年度実績では、新規求人数2,288人、新規求職者数867人に対し就職件数は35人などという実績です。問題は養成事業にとどまらず、資格を取得した人が市内の介護事業所で介護人材として雇用にしっかり結びつかなければならないし、専門職種として、働き続けることができなければならないのです。その支援が自治体に求められています。いくつかの自治体で実施している非正規から正規職員への格上げやパート職員の時給引き上げへの支援など、市の独自施策を強く求めておきます。
防災対策についてです。
市長は施政方針の中で、この間発生した地震災害を通じて、震災対策の重要性などについて大切な教訓を得たとして、総合的な耐震対策など災害に強いまちづくりに力を注いでまいりたいと述べています。「安心快適都市かわさき」づくりとして、総合的な耐震対策をあげています。だとすれば、過去の大地震の共通の教訓になっている住宅の耐震化こそ、最優先課題として取り組むべきです。旧耐震基準木造住宅耐震改修助成事業の助成額と助成率を引き上げるなど、耐震化率向上に向けさらなる制度拡充を求めておきます。
殿町3丁目地区中核施設整備事業についてです。
川崎市が都市再生機構より、1.3ヘクタールの土地を23億5千万円余で購入し、第1段階整備として0.6ヘクタールを財団法人実験動物中央研究所に定期借地で貸し付け、第2段階整備として0.7ヘクタールを公募で大手不動産などに貸し付け、建物を建ててもらって、川崎市が環境総合研究所と(仮称)健康安全研究センターとして4600平方メートルを借りることになっています。
都市再生機構と民間の直接取引でなく、川崎市が購入した上で民間に貸し出すという仕組みにしたのはなぜか、貸した土地に民間が建てた建物の床を市が借り受けるという複雑な仕組みにしたのはなぜかとの質問に対して、「民間の資金やノウハウ活用」「早期の事業化を図ること」「拠点形成を目指すうえで民間と連携して取り組みが必要であること」との答えを繰り返すだけでした。
さらに、第3段階も同じようなスキームで企業誘致を図るのではないかとの質問に対しても「進捗状況に合わせて今後検討する」と答えるだけで否定はしませんでした。
これでは、企業を誘致するために、川崎市が土地を購入して進出企業に貸し付けるスキームを際限なく続けることになります。そのうえ、イノベート川崎による助成まで受けられるわけですから、まさに至れり尽くせりです。今後も莫大な税金投入が予想される企業誘致策を担保する地区計画を制定すべきではありません。
コンテナターミナルの整備についてです。
週に9隻程度の利用しかないコンテナターミナルに、新たにガントリークレーンを整備するため、さらに、巨費を投じる計画をスタートさせるものです。
ガントリークレーンやトランスファークレーンは、その維持経費も高く、新年度も、3億1,300万円もの補修費が計上されています。答弁では、船会社からの要望や物流拠点地域に誘致した企業からも指摘を受けていることを理由に、「必要な場合に迅速にガントリークレーンを設置する体制を整えておくことが重要」として、いつでも整備できるよう設計を行うとのことでした。しかし、現在の取扱量は、営業日の約8割が、取扱量が300TEU未満と、1時間当たり約60TEUの処理能力のある今の設備で、充分、対応可能な量しかありません。企業の要望に沿い、需要を過大に見積もり、大きな負担をもたらす計画を認めるわけにはいきません。
かながわ廃棄物処理事業団に対する損失補償についてです。
新年度予算の神奈川廃棄物処理事業団解散に伴う、政策投資銀行への川崎市の損失補償分の11億6千万円余についてですが、1996年の地裁判決で、川崎港コンテナターミナルの債務に対し、川崎市が「損失補償」したことは、財政援助法で保証契約をすることができないと定めた趣旨に反し、違法だとの判決が確定しています。違法な支出をすべきではありません。改めて3公共団体で再検討を図るように強く求めておきます。
また、産業廃棄物の排出者処理責任の原則からも、3公共団体の補助金に依存することは許されず、住民監査請求が出されてからも負担金を出し続けてきました。
結局、破産することが決まり、これまで投入した30億2千万円余も無駄になってしまいました。
この事業を続けた責任に対して、何の反省もないままに、事業を整理しておしまいということは、許されません。責任の所在を明確にすること、継続する施設の適正処理について、監視を強化するように強く求めておきます。
議案第1号川崎市職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例の制定について、議案第2号川崎市職員の給与に関する条例の一部を改正する条例の制定についてです。
この議案は、2008年12月6日成立した労働基準法改正にともなうもので、「長時間労働者の高止まり等に対応し、生活時間を確保しながら働くことができるようにするため」改正するとされたもので、月に60時間を超える部分の残業代割増率を50%以上に引き上げることなどが、その内容とされています。
時間外労働の割増賃金をあげることは当然のことですが、60時間を超えたものについては割増賃金を50%とするものの、60時間未満で45時間を超す残業については25%の割増賃金率の引き上げが努力義務とされました。川崎市はこの部分は従前どおりのままです。割増賃金率を引き上げることを求めておきます。
問題なのは、時間外労働の上限を法定化せず、引き上げ分の割増賃金の代わりに「年休ではない有給の休暇」を与えた場合に割増賃金の支払いを免除する例外規定を設けたことです。制度的に代替休暇がとれることになったとしても、そもそも残業が多い職場で、実際は代替休暇をとれる保障はなく、サービス残業が横行する現状での実効性に疑問が残るものです。
市職員の年休取得率をみても、2008年度でみた場合、全職員の平均取得日数は11.9日、20日間の年次休暇を取得できるにかかわらず、年間7.6日しか取れない職場もあります。半分近くの有給を捨てていることになります。いまの現状のまま代替休暇をとれば、ますます有給休暇は消化できなくなるのではないでしょうか。
川崎市でも一定の職場で7~8%の職員が1ヵ月60時間以上の残業をしている実態、過労死ラインの80時間以上を超えている職員の数が増えている実態からすれば、サービス残業は基本的にはない、との答弁を鵜呑みにはできません。特に年度末など持ち帰りの仕事が多くなるという事実などは看過することはできません。
川崎市の実態に照らしても、時間外労働の上限が法制化されず、青天井で残業できる仕組みを残したままでは過労死を生むような長時間労働はなくせないことは明らかです。以上のことから本議案には賛成できません。
議案第9号川崎市国民健康保険条例の一部を改正する条例の制定についてです。
地方税制が改定され、所得のとらえ方が変更になり、株式の配当所得が総所得に計上される総合課税方式から、分離課税方式のいずれかを選択できるようになりました。このことで年間の譲渡損失が生じた場合、損失額が控除されるものです。
株の配当所得にかかる税率は従来20%でしたが、時限法で10%に減税され、しかも今回恒久化されました。諸外国と比べても税率が低く、資産家優遇税制であることから、わが党は地方税制改定に反対し税率20%に戻すことを求めています。
今回の改定は、国民健康保険料の算定も、分離方式をとれば譲渡損失分が控除され、軽減されるものであり、今回の地方税法の改定に反対の立場から、賛成できません。
議案第10号川崎市地区計画の区域内における建築物等の形態意匠の制限に関する条例の一部を改正する条例の制定について、議案第11号川崎市地区計画の区域内における建築物に係る制限に関する条例の一部を改正する条例の制定についてです。
先に述べたように、殿町3丁目地区は、「神奈川口構想」の中核的地区として整備し、これから莫大な税金投入をおこなうことが予想され、本議案はそのことを担保するための地区計画であることから、賛成できません。
議案第15号川崎市病院事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例の制定についてです。
分べん料、非紹介患者初診加算料及び文書料の改定並びにセカンドオピニオン料の新設を行うため改正するものです。
時間内の分べん料は8万円から12万円に引き上げるものです。今、若い世帯は雇用が不安定で、収入の減少など、経済的に大変な世帯が増加しています。安心して出産するためにも、少子化を克服するためにも可能な限り出産費用を抑えることが、公立病院の責務と考えます。病院局長は、県内の他の公立病院の平均額が44万1500円等であることを値上げの根拠の一つとして答弁されましたが、18大都市、県内自治体のなかには、改定しないで本市と同レベルの都市がいくつもあります。また、出産や出産準備、新生児期はかなりの費用がかかることを考えれば、出産育児一時金が42万円給付されるからよしとされるものではなく、この議案には賛成できません。
したがって、今回の改定を根拠にしている議案第51号川崎市病院事業会計予算についても賛成できません。
議案第42号川崎市後期高齢者医療事業特別会計予算については、高齢者に差別医療を持ち込む後期高齢者医療制度に反対であること、今回の保険料改訂にあたってさらなる減額をすべきだったと考えることから、賛成することはできません。
また、議案第53号川崎市水道事業会計予算、議案第54号川崎市工業用水道事業会計予算については、ともに高速川崎縦貫道路共同溝建設事業に関連する予算が含まれていることから賛成しかねます。
以上の立場と予算組替えとの関係から、日本共産党は、議案第1号、議案第2号、議案第9号、議案第10号、議案第11号、議案第15号、議案第36号、議案第37号、議案第42号、議案第44号、議案第45号、議案第49号、議案第51号、議案第52号、議案第53号、議案第54号に反対し、その他の議案、報告には賛成及び承認することを表明して討論を終わります。