決算審査特別委員会で質疑~大庭議員
2016年第3回川崎市議会定例会で10月7日、大庭裕子議員が決算特別委員会で総括質疑をおこない、2015年度決算の財政状況と減債基金などについて、質問しました。
大庭議員が行なった総括質疑の初回質問は次の通りです(議事録ではありません)。
決算審査特別委員会総括質疑
私は、日本共産党を代表して、決算審査特別委員会の総括質疑を行います。
最初に、2015年度決算の財政状況と減債基金についてです。
2015年度決算では、市税は3年連続増収で初めて3000億円を超え過去最高となり、財政調整基金に21億円積み立てし、減債基金には10億円返済してもなお2億円の黒字が出るなど収支は33億円のプラスとなりました。2015年度予算の54億円マイナスから見れば87億円もの増加です。市の収支見通しよりも4年前倒しで収支はプラスになり、7年前倒しで減債基金へ返済しました。健全化指標はすべての指標で健全化基準をはるかに下回り、きわめて健全です。財政力を示す財政力指数は政令市で依然としてトップ。2016年度は6年ぶりに政令市で唯一の不交付団体となりました。
しかし、代表質問や総務分科会の答弁で「引き続き財政は厳しい」とし、その根拠に「扶助費の増大」、「16年度は地方交付税が不交付になる」「収支見通し」への不安、「減債基金」などを挙げました。
「扶助費が増大する」から財政が厳しいという根拠についてです。扶助費は、歳出総額の構成比でみれば1.6ポイント増の27.3%ですが、市の負担分である経常収支の比率でみれば、0.2ポイント増の19.0%とほとんど変わりません。増えた扶助費は、国や県からの給付金でかなりの部分賄われるからです。さらに市税収入が伸びたために経常収支比率は2ポイントも改善しており、扶助費の増大が市の財政を圧迫して厳しくしているわけではないことが明らかになりました。本市の一人当たりの扶助費は10万8000円で、政令市平均11万3000円より低いのです。財政力指数が政令市でトップの川崎市で、しかも市税収入がこれだけ増えているのに他都市よりも扶助費が低いというのは、福祉のために税金が他都市よりも使われていないことの証拠です。扶助費の経常収支比率は19%で経常収支の5分の1にも満たないのは、地方自治の本旨である「福祉の増進」から見ても扶助費は明らかに不十分です。
「地方交付税が不交付になる」からという根拠についてです。2016年度予算では普通交付税1.6億円、臨財債8.4億円が来る予定だったが、決定額ではゼロになるというのが理由です。しかし、臨財債は借金のできる額が増えるだけのことであり、普通交付税は1.6億円に過ぎません。2015年度の収支が33億円のプラスですから、1.6億円で財政が厳しくなる根拠にはなりません。
収支見通しについてです。2015年度の収支見込の変化をみると2014年8月には194億円の収支不足予測が、2015年2月には54億円と推移し、今回の決算では、収支は33億円のプラスになりました。2年間で200億円以上もの誤差がでています。
2016年度収支見通しについて、2014年8月時点では245億円の収支不足予測が、2015年2月には124億円、同年10月は119億円、今年2月には92億円となり、2年間で150億円の誤差が出るなど、2015年度と同様に非常に曖昧で、結局、収支不足は過大予測だったことが明らかです。
しかも、2016年度収支については、市と国の推計では大きく違っています。国の推計では、基準財政収入額が76億円プラスで需要額が5億円プラスと試算され、2015年度よりもさらに70億円、市の収支が良くなるとしています。市は逆に2015年度33億円プラスから2016年度は92億円マイナスと、125億円も収支が悪くなると予測。国と市の推計があまりにも違いすぎます。その後の推計でも市は、人口が増え続けるのに2017年度は191億円マイナス、2018年度は43億円マイナスとの収支見通しです。昨年、今年度の状況から見れば、これも信頼できる数値ではありません。2016年度以降の収支見通しは見直すべきと考えますが、市長に伺います。
減債基金について伺います。本市の市民一人当たりの減債基金残高は12万7000円で、政令市で3番目に高く、政令市平均の7万2000円の1.8倍にもなります。逆に、本市の一人当たり市債残高は政令市平均より低くなっています。お隣の横浜市は人口が川崎市の2.6倍、一般会計規模が2.5倍で、市債残高は3兆2313億円と川崎市の3倍なのに減債基金残高は約1000億円で川崎市の半分程度です。川崎市の市債残高は政令市の平均以下なのに減債基金は政令市平均の約2倍もあり、他の政令市と比べると減債基金の残高は突出して高いのです。
減債基金の残高の推移ですが、一般会計分だけでも10年後には2887億円になり、2015年度末の1847億円より1000億円も積み増しされます。その後は2600~2800億円程度で平準化しています。将来の取り崩し額の推移をみても大きな取り崩し額の予定はありません。今後3年間積み立てを行わなかったとしても、実質公債費比率7.5%が10.4%になるだけで、起債に国の許可が必要となる18%までは相当余裕があり何の不都合もないことはこの間の質疑で確認済みです。「減債基金は取り崩し分だけ積み立て、上積み分を社会保障に充てるべき」と総務分科会で質問したところ、「ルール通りに積み立てなければ将来世代への過度な負担を強いる」との答弁でした。しかし、財政局の資料で他都市を見てもルール通り積み立てているところは少なく、特段ペナルテイもありません。「将来世代への負担」というなら、市民の社会保障に充てることこそ、将来世代への負担を減らすことにつながるのではないでしょうか。
減債基金への積立金は取り崩し分だけにすれば、毎年100億円、10年間で1000億円もの財源が生まれます。この財源を使えば、子ども医療費助成は所得制限なしで中学卒業まで拡大しても22億円、待機者が多い特養ホームは443億円で6000人分、認可保育園は約20億円で5000人分の増設が可能です。減債基金は取り崩し分だけ積み立て、上積み分を暮らし、福祉の充実をはかるべきと考えますが、市長に伺います。
行財政改革について伺います。
「財政が厳しい」と行財政改革を進め、昨年10月から福祉電話相談事業、高齢者外出支援サービス事業、高齢者住み替え家賃助成事業の見直しや廃止を断行し、2015年度決算では300万円削減されました。2015年度は収支が33億円もプラスとなったのに、削減効果額わずか300万円のこれらの事業を見直し・廃止したことは重大です。
総務分科会で質疑したように、行革の根拠が一昨年と今年とでは大きく違っています。1昨年8月の「行財政改革に関する計画策定方針」では、行革の必要性について「扶助費の増大」「減債基金からの借入」「一般財源の増額はほとんど見込めず」「収支不足は恒常化」し「現行のサービス水準を維持することも困難な極めて厳しい状況」ということでした。しかし、今年3月の「行財政改革プログラム」では「収支不足」「減債基金」「財政が厳しい」という文言は消えました。
残った行財政改革の根拠は、「社会的ニーズの変化」です。今年8月のサマーレビューでは、課題一覧の中で「重度障害者医療費助成制度」「高齢者外出支援事業」「成人ぜん息患者医療費助成制度」事業が見直しの対象に上がっていますが、この3つの事業のように社会的ニーズが高まっている事業、または利用者にとってなくてはならない事業については、サービスの削減ではなく、拡充すべきです。市長に伺います。
2款4項1目13節委託料について伺います。
キングスカイフロントの投資対効果等の評価に対する調査業務委託として、羽田連絡道路基礎調査委託料と合わせて約1300万円ということですが、その内容は、殿町及び羽田連絡道路整備に係る投資効果等の評価指標案を作成ということです。もうすでに都市計画手続きも行われているにもかかわらず、今頃になってその投資効果を評価するための指標を検討するということですが、こういうものは事前に設定すべきではないかと総務分科会で質問しました。答弁では、「キングスカイフロントの拠点形成の効果を定量的にわかりやすい指標で把握するために進めている」「評価の時期については、建設投資額や立地施設の運営状況、就業者等の見込み等が概ね明らかになったことを踏まえ実施するもの」ということでした。
評価指標という点ではすでに、2011年9月に特区申請の際、5年後の経済波及効果約3000億円、20年後14兆円、雇用効果23万人と数値目標を上げ、効果を見込んでいます。新しい指標ということになれば、川崎市だけが勝手に変えるのではなく、共同申請した神奈川県、横浜市と川崎市とで共同して見直すことになるのではないでしょうか、伺います。また、加味しなければならない条件は、国からの影響、県の計画、国際的な研究開発の流れを含めて、多岐にわたります。そうした複雑な条件を考慮すると、定量的な指標として表すことが可能なのか、伺います。道路にしても、羽田連絡道路だけを対象にしていますが、今後の道路改修の見通し、環状8号線、国道357号整備の影響など加味しなければならず、羽田連絡道路だけを対象とするのは、不十分ではないでしょうか、伺います。
そもそも、住民の福祉の増進に寄与するのかどうか、その視点が欠けていると思いますが、人類の幸福などという漠然とした指標ではなく、具体的に市民の雇用や市民生活の向上にどのような指標を考えているのか、見解を伺います。
同じく誘致推進業務委託料に、国際戦略拠点現地対応等業務委託として、実験動物中央研究所に800万円支出しています。内容を見ますとキングスカイフロントマネージメントセンター等、市の窓口やライフイノベーションセンター等県の施設窓口、川崎市産業振興財団等が本来担うべき業務と思われますが、なぜ、実験動物研究所に委託しているのか、経緯について総務分科会で質問しました。答弁では、「国内外の専門家に対し、質の高い視察対応や海外でのプロモーション活動を行うことが必要と考えているので、最初に進出して、公益財団法人として中立性を保つことができ、ライフサイエンス分野に関する高度な専門知識や国際的なネットワークを有している」ことを理由に実中研に委託したということです。
そこで伺います。昨年度の活動を通して、実際にどれだけの効果を生み出したのか具体的に伺います。すでに土地利用計画が固まりつつある状況で、今年度予算でも計上されている理由について伺います。来年度以降も継続するのかも伺います。
児童虐待防止と母子支援の充実についてです。
2015年度の児童虐待相談・通告件数は増え続けています。その特徴は、ゼロ歳から就学前、特に3歳未満の乳幼児が実母から虐待を受けることが多いと言う実態が浮き彫りになっています。
2015年に実母によるゼロ歳児の虐待がおき、児童福祉審議会は、今年7月「児童虐待重症事例検証報告書」をだし、提言を示しました。母親の精神面における支援の把握について、母親、家族、親族への産前産後の様々なリスクの啓発についてなどを課題にあげています。出産による体力消耗、なれない育児の不安など出産前後の母子支援は重要です。育児不安を早期に解消することは児童虐待を未然に防止する上でも大切です。2014年10月から始まった産後ケア事業ですが、ニーズが大変増え、2015年度は宿泊型150件・643回、訪問型は398件・424回の実績で、予算額1509万円余に対し、決算額は100万円オーバーしました。出産後の母子支援の必要な方が増えています。来年度予算の増額が必要と思いますが見解と対応を伺います。
児童相談所の体制について、地区担当の平均担当ケース数は2015年度118件に対し今年度は111件で、ほとんど減らず、まだ大変多い実態です。決算分科会では、ケース担当になる児童福祉司を増員することを求めました。答弁は「平成28年6月に交付された改正児童福祉法により、児童福祉司の数は政令で定めることになったところなので、今後、標準とされた職員配置を進めることとあわせて、児童福祉の理念に基づいた相談援助活動を適切に担える人材の確保とその育成に向けて関係局と協議する」とのことです。政令で定める本市の児童福祉司の配置すべき人数と現状の人数及び今後の対応について伺います。
子どもたちの学びの場・居場所づくりについてです。
分科会で学習支援・居場所づくりについて、生活保護世帯のこどもの学習支援は、2015年度の実績から一定の効果は上がっているものの、必要としているこどもたちに対し登録率が約15%と低いことなどから、さらなる対象年齢、場所の箇所数の拡充を質問しました。子どもたちを貧困の連鎖から解き放つ、その取り組みのなかで、地域に不登校の子どもを含めた学習支援・ひとり親世帯の子どもも対象にして支援をしている都市もあります。さらにひとり親家庭の子どもの学び直しの支援、中卒・高校中退の児童に対する高卒程度資格付与のための支援を行っている都市があります。
子ども未来局長に伺いますが、健康福祉局所管の学習支援・居場所づくり事業と連携して、こうした総合的な子どもの学びの場・居場所を構築すること含めて、見解を伺います。さらには、子どもの学びの場・居場所は中学校区に一箇所ずつ整備し、子ども食堂も併設することも展望しながらすすめることが必要と思いますが、伺います。
就学援助についてです。
川崎市でも就学援助制度についてはその改善に一定取り組んできたものの、2015年度の本市の就学援助認定率は12.9%で、神奈川県全体の15.6%、東京都の22.4%などから見てもまだ低い状況です。その要因のひとつは認定基準の低さです。認定基準は神奈川県内では4分の3以上の自治体は、「生活保護基準の1.3倍」以上でした。「1.0倍」の県内自治体は本市と横浜市と三浦市のみでしたが、三浦市は今年度から生活保護基準の引き下げへの対応を理由に「1.2倍」に変更しています。川崎でも認定基準をせめて「1.2倍」に改善すべきです。伺います。
もうひとつの要因として、周知不足があると思います。川崎でも、就学援助の申請にあたり、他都市同様に入学時、進級時に全員に書類を手渡し、全員から回収する方法を取り始めました。しかし、書類を渡すだけでは忙しい保護者のみなさんは、見過ごし、さらには書き方もよくわからない、など充分要件を満たしているのに、そのまま提出しない保護者もいます。他都市でも実施しているように小・中学校の入学説明会や入学式、さらに進級時に保護者のみなさんが集まる学年懇談会などの機会に、ぜひ、就学援助の制度説明と書類提出の要請を行っていただきたい、と思います。伺います。また以前から要望し続けてきた体育実技用具費やPTA会費、生徒会費を支給対象に追加すべきと分科会で求めましたが、関係局と協議するとの前向きの答弁がありました。早期の実現を求めておきます。
教員の定数内欠員についてです。
2015年度の教員の定数内欠員は324人、年々増え続ける実態に対し、この間、欠員解消の取組みを厳しく指摘し改善を強く求めてきました。しかし、今年度の欠員数はさらに増えて343人に、特に小学校では81人から124人へ、また三桁になったことが明らかになりました。分科会では、昨年度原因として述べられた小学校の採用辞退者が57人にのぼり、定年以外の退職者数も想定を超えて増加したことを質したところ、今年度について、「定年退職予定者数とそれ以外の退職者見込み数との合計人数を上回るように設定しており、新規採用者と併せて、定年退職者の再任用を見込むことによって、現在の欠員を一定程度縮減できるものと考えている」とのことでした。
ここ数年議会での答弁はずっと「次年度こそ縮減する」とのことでしたが、しかし、実態は逆に増えている。何のための議会答弁なのか。真剣にとりくんでいるのでしょうか。明確になっている定年退職者の補充、それ以外の対処者数、採用辞退者数の予測はしっかり立てた上で欠員解消を抜本的に図る採用者を確保すべきですが、教育長に伺います。
公契約制度についてです。
2011年4月から川崎市の公契約制度は施行され6年目を迎えました。2015年10月には、神奈川県の地域別最低賃金が生活保護基準を上回り、逆転現象が解消されたことから、勘案する額について賃金が2016年度より改定されました。2015年度の公契約全体に対して、予定価格6億円以上の特定工事請負契約の割合は、金額ベースで26.8%、件数ベースで1.1%です。つまり金額ベースで73.2%。件数ベースで98.9%が作業報酬価格を下回る条件で働いている可能性があります。公契約制度の趣旨からも6億円という予定価格の下限額をさらに引き下げるべきと思いますが、伺います。
8款8項1目及び11款1項1目に関連して、街路樹の維持管理費についてです。
昨年の決算審査特別委員会で指摘したように、あまりにも草が伸びすぎて、歩道部分を塞ぐほど草ぼうぼうの幹線道路。雑草が大きく茎をのばして道路まで突き出している幹線道路の雨水排水枡。街路樹が伸びて、右左折する際の見通しが悪く危険な交差点。歩道まで歩行者に当たるほど枝が伸びた街路樹、また、街路樹の根上がりによる歩道のデコボコもひどい状況など、市民生活に欠かせない場所の維持管理が全く改善されません。
昨年の決算審査特別委員会総括質疑で、市長は、「市民の皆様に歩道を快適に御利用いただけるよう、適切な維持管理に取り組んでいく」と答弁されました。
確かに幹線道路は年に一回は維持管理の手は入っています。しかし、とても快適な市民生活が送れるような実態ではありません。これまでの予算規模での維持管理では間に合わないことは明白です。せめて、幹線道路の雑草の除去を含めた街路樹の維持管理は年2回、幹線道路以外は年に1回行うべきではないでしょうか、伺います。
コミュニティ交通についてです。
2015年度決算のコミュニティ交通の運行経費への支援業務委託費は、全市で382万3200円です。決算時に運行している麻生区高石地区への委託費は約29万円、多摩区長尾台地区は、約150万円です。100円の割引分を補助する高齢者等割引事業補助金は、2地区合わせて333万9700円、委託費と合わせても716万2900円に過ぎません。分科会では、コミュニティ交通の役割について、まちづくり局長は「市民生活を支える身近な交通手段として、ますます重要」「その地域の交通課題の解決や高齢者の外出支援などの役割を担い、地域の活性化にもつながる」と考えを示しました。これらの役割は今後ますます増大すると思いますが、市長に見解を伺います。また、地域の取り組みを拡げるためにも、事業費の抜本的な増額が必要と思いますが、合わせて市長に伺います。
以上で質問を終わります。