市政と市民のくらしを結ぶ
議会報告

2010年第2回川崎市議会臨時会で勝又光江議員がおこなった代表討論

4月16日に勝又議員がおこなった代表討論はつぎのとおりです

私は、日本共産党を代表して、第2回川崎市議会臨時会に提案された諸議案について討論を行います。

議案第76号殿町3丁目地区中核施設用地の取得についてです。

羽田空港再拡張に伴う神奈川口構想の中核施設とするためのものとして、川崎市が都市再生機構より、1.3ヘクタールの土地を約23億円で購入するものです。

今回の土地取得が、住民の福祉増進をはかるべき自治体の役割に照らして、最優先に取得すべきものなのか、また、自治体としての産業政策として、市内経済の落ち込みを立て直すために最優先に取り組むべき課題なのか、という観点から検討されなければなりません。

議案審議の中で、第1段階整備で、都市再生機構から、民間の財団法人実験動物中央研究所が直接取引をして土地を取得して移転することが可能であるにもかかわらず、わざわざ川崎市が購入した上で貸し付けるという仕組みにしたのはなぜかとの質問に対して、事業計画の説明を繰り返すだけでした。

また、第2段階整備で、市の土地に民間が施設を整備し、その床を借りるという複雑な仕組みにしたのはなぜか、という質問に対して、環境ライフサイエンス分野の拠点形成に向けて早期事業化をはかり、民間の資金とノウハウを活用し、企業・大学等の立地促進を図るためと答えるのみでした。どこの企業や大学を誘致するのか、市が土地を買い取ってまで“誘致”する必要があるのかについてもまともな答弁はありませんでした。

第2段階の整備には環境総合研究所と健康安全研究センターが入ります。両方ともその運営にあたっては、効率的・効果的な手法の検討が答弁されました。現公害研究所は大気・水質・騒音対応、さらに環境教育学習に積極的に取り組んでいます。現衛生研究所は細菌・ウイルス・残留農薬・食品検査などまさに市民の健康と命を守るかけがえのない施設です。双方とも行政処分を伴うものであり、直営だからこそ丁寧な環境教育、学習などもできているのではないでしょうか。しかし、最後まで公的責任をどう担保するのか明確な答弁は得られませんでした。

浮き彫りになってきたのは、産業戦略として国が進める事業に飛びついて、わざわざ市が土地を取得して、民間に定期借地で安く貸し、しかも借地料も財産条例で減額して初期負担を減らしてやり、その土地に民間が建てた建物を市が市場の相場で借りるという、まさに企業には至れり尽くせりの企業誘致の手法・構図です。

第3段階も同じようなスキームで企業誘致を図るのではないかとの質問に対しても、「進捗状況に合わせて今後検討する」と答えるだけで否定しませんでした。

局長は委員会で「まず、この地域をマグネット機能として国に認知してもらうことが第1段階」と答弁し、市長は記者会見で、「日本の成長戦略をけん引するような研究機関を集めたい。そうなれば、ホテルやコンベンションなどの提案も自然に出てくる」とし、ましたが、現実には、実中研が中核施設としてようやく位置づけられただけです。

成長戦略をけん引するような研究機関の立地も未定で、立地の可能性についても未知数です。それを前提に、ホテルだ、コンベンションだと、構想を膨らまし、企業誘致のために次々と莫大な資金を投入していくことになる可能性が極めて高いことが明らかになりました。

しかし、このような計画は、どういう未来へと続いているのでしょうか。
「環境・ライフサイエンス分野の産業が、我が国の国際競争力を高める未来産業であり、中長期的に中小企業を支えていくもの」ということですが、そういう触れ込みで、全国各地でライフサイエンス分野の特区や産学公民連携事業が補助金を交付して、競い合うように研究が取り組まれています。しかし、どこも成功しているところはありません。

他都市の事例でも明らかなように、ライフサイエンス分野として研究開発は行なっても、産業化を図る必然性はないわけですから、市長が言うような将来の市内中小企業を支えることができる産業になるどころか、産業として根付くことすらままなりません。投資をしたけれども、結局得をするのは製薬会社など大企業で、自治体には税源培養にも雇用拡大にもつながらない、自治体産業政策としては、破たんの未来が待っているのではないでしょうか。

今なすべき自治体の産業政策とは、川崎市のものづくりを支えた、市内中小企業を最優先で支え、育て、活性化させることです。

市長は、市内中小企業を優れたものづくり技術を有し、日本のものづくりや川崎の産業を支える重要な存在として認めましたが、今まさにその市内中小企業を中心とするものづくりが、ひん死の重傷に陥っているわけです。

市長は「中小企業の活力向上に向けて総合的体系的に取り組んでいる」と答弁されました。いま、中小業者からは工場の家賃などの「固定費」補助が切実な要望として出されています。しかし、殿町では財産条例をわざわざ適用して「固定費」である賃借料も減額してやるのに、その「固定費」補助を中小企業支援の緊急対策として検討するように求めたのに対しては、検討することもしませんでした。

また、新年度の中小企業予算は、融資を除けば約10億円で一般会計の約0.2%でしかなく、今回の土地取得予算の半分以下にすぎません。これでどうして実効的支援ができるでしょうか。現実に、ものづくり技術の衰退に歯止めをかけられないではありませんか。

市内中小業者の営業・くらしを支える政策こそ、自治体が今一番力を入れなければならない分野です。市内中小企業中心の産業政策に転換することを強く求めておきます。

土地取得に関連してマスコミも、連絡道路の大田区との協議が進んでいないことを上げたことに対して、市長は、「国際化で周辺道路の混雑などが出てくれば、展開は変わるのではないか」と述べています。だとすれば、混雑を緩和するために交通量を呼び込むことが前提となり、そのような位置づけなら、連絡道路を整備すべきではありません。見直しを求めておきます。

以上の理由から本議案については賛成できません。

議案第74号川崎市消防団等公務災害補償条例の一部を改正する条例の制定についての市長の専決処分の承認についてです。

この改正は、消防組織法第24条の非常勤消防団員に対する損害補償の基準を定める政令の規定に基づき総務大臣が定める金額の改定によるものです。根本には地方公務員の給与引き下げがあり、深刻な経済危機の中で生活破壊が急速に進んでいる状況からすれば、市民の消費の低迷と景気悪化の悪循環を加速させることになるとして引き下げの議案に反対してきた経過と、市の裁量権はないとはいえ、危険を伴う仕事を任務とする消防団員に対する公務災害補償の介護補償の引き下げはすべきでないと考えることから、本議案を承認することはできません。

以上の理由から、議案第74号、議案第76号については反対・承認できないこと、その他の議案については承認することを表明して討論を終わります。


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