「財政が厳しい」は市民要求抑え込む口実~井口議員が代表討論
2014年12月17日の川崎市議会本会議で、議案採決に先だち日本共産党を代表して井口真美議員(多摩区)が討論を行いました。
井口議員は、川崎市手数料条例の一部を改正する条例(議案第144号)案について、多数決によりマンションの売却・敷地除去を可能とする「マンションの建て替え円滑化法の一部改正」にかかわる部分があることから、反対を表明。川崎市中部リハビリテーションセンターの新設にともない指定管理者を指定する議案161号については診療所や生活訓練センターで実施され長年蓄積されてきた専門性と信頼性の継続を断ち切る指定管理者制度の導入であることから、また、平成26年度一般会計の補正予算(議案165号)案については羽田連絡道路の調査予算が含まれることから、それぞれ反対を表明しました。
井口議員の討論全文
私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論を行ないます。
議案第144号川崎市手数料条例の一部を改正する条例の制定についてです。
まちづくり局に関わる部分には、「マンションの建て替え円滑化法の一部改正」に絡む部分が含まれております。その内容は、本来の耐震不足のマンションの建て替えを推進するものではなく、多数決によりマンションの売却、敷地除却を推進するもので、法律の性格そのものを変えてしまう内容です。そのために、敷地売却制度と容積率緩和措置と相まって、ゼネコンやデベロッパーにとって用地確保の新たなビジネスモデルとして活用される危険性があります。そのことによって高齢者などがマンションから追い出されてしまうことになりかねません。つまり、居住者の住まいの安全と安定よりもゼネコンやデベロッパーの利益が優先されるものになりかねないという懸念があります。よって、それに関連する部分が含まれる本議案については、賛成できません。
議案第146号川崎市放課後児童健全育成事業の設備及び運営の基準に関する条例の制定についてです。
本条例は「こども子育て支援法」により、放課後児童健全育成事業の設備及び運営の基準を定めるものです。
本条例の対象となる事業は、本市で行われるすべての放課後児童健全育成事業であり、市が放課後児童健全育成事業を包含して実施するわくわくプラザ事業と、市に届け出を行う事業者が対象です。また、本事業における支援は「保護者が労働などにより昼間家庭にいない小学生」で、発達段階に応じた主体的な遊びや生活が可能となるよう、自主性、社会性、及び創造性の向上、基本的な生活習慣の確立を図り、当該児童の健全な育成を図ることを目的として行われなくてはならない」(第5条)と定めています。子ども子育て支援法において、学童保育の部分は、自治体の実施責任が強化され、これまで定めがなかった最低基準が示されたことによる本条例案については賛成しますが、以下、意見要望します。
第8条「設置の基準」についてです。「遊び及び生活の場としての機能並びに静養するための機能」を備えた専用区画として、児童一人につき、概ね1.65㎡以上でなければならないとしております。第9条により、支援の単位はおおむね40人以下とされ、40人を超える場合には、学校との調整により専用区画を確保するとのことです。
2013年4月時点のわくわくプラザ事業の現状は、定期利用の登録数のうち、「保護者就労児童数」が40人以上は76校、そのうち、80人以上を超す学校は18校もあります。2015年4月に向けた各学校と協議している専用区画の確保として、図書室が11校となっていますが学校教育の図書室が「遊びと生活の機能並びに静養するための機能」としての専用区画になる根拠について質疑したところ、厚生労働省との協議で了解されたとのことです。しかし、本来、学校教育法における図書室で読書する環境と放課後児童健全育成事業としての遊びと生活および静養の環境は、それぞれ確保、保障する方向性をもつべきと考えます。そのほか、「必要なスペースの使用承認予定」なっている9校については承認される方向性ではあるとのことですが協議中とのことです。現在、確保の見通しがついていない学校は4校あり、そのうち東門前小学校はプラザ室の拡張、子母口小学校と下沼部小は2015、16年度の校舎の増改築に伴い拡張するとのことです。
今年4月の対象児童は5901人だったのに対し、2015年4月の対象児童の見込みを6190人、計画期間の2019年4月の見込みは、今年4月より1000人増え6956人としているとのことですが、現状でも専用区画の確保に、かなり苦慮していると思われることから、増大する見込みに対して、今後、専用区画を学校内に確保していくことが困難になるのではと危惧します。
児童福祉法の改正で、市町村以外の民間事業者からの市町村への届け出が必要となり、現在17ヵ所、定員530人から届け出がされているとのことです。今後増大する見込み数にたいして、今後の方向性として自主学童保育を含めた民間事業者の学童保育を確保対策に位置づけするべきです。
このことは、児童福祉法の改正で「事業の実施促進」として児童福祉法第56条の7の2項に「社会福祉法人その他の多様な事業者の能力を活用した放課後児童健全育成事業の実施を促進し、放課後児童健全育成事業に係る供給を効率的かつ計画的に増大させるものとする」が新設され、さらに3項で「必要な支援を行う」と明記されています。民間事業者への支援について、わくわくプラザ事業との整合性を踏まえながら、その支援のあり方を検討しているとのことですが、法の改正にあわせ、自主学童保育等民間事業者の行う事業を選択する児童にも保障し、ぜひ要望を反映した具体的な支援策を講じることを強く要望します。
第9条「職員」についてです。「放課後児童支援員の数を支援の単位ごとに二人以上とする」ですが、40人を超えた場合は基準に沿った配置をするということでした。
提起されている放課後児童支援員の資格基準と、現在のわくわくプラザ事業における指導員の資格要件についての質疑では、支援員として必要となる人数について条例で定める資格基準を満たした人数を確保できるとのことです。民間事業者については、届出時に資格の有無を確認しているとのことですが、資格取得支援を行うことを求めておきます。
本市のわくわくプラザにおける放課後児童健全育成事業の支援員の専任義務については、「『放課後子ども教室』などすべての児童と一体的に実施する際に、放課後児童健全育成事業の利用者が、利用者以外の児童とともに、遊びや生活の時間を過ごすことが望ましいことから、両事業において適切な人数の職員が配置されている場合に、放課後子ども教室に従事する者と協力し、放課後児童支援員等が、利用者以外の児童の安全管理等を合わせて行うことを妨げるものではない」との5月30日付け厚労省の通知によって、今後についても包含する形で全ての児童を対象としてわくわくプラザ事業を引き続き実施してまいるとのことです。しかし、第9条の5において、「放課後児童支援員及び補助員は、支援の単位ごとに専ら当該支援の提供に当たる者でなければならない」と定めていることから、今後の方向性のなかで、棲み分けの検討を求めておきます。放課後児童健全育成事業国庫補助について、小学校休業日の開設時間は8時間と規定されることにより、放課後児童支援員を常勤配置する場合の補助の引き上げについて、開設日数や開設時間による加算額を国に申請しているとのことですから、質の向上に向けた取り組みを要望しておきます。
議案第150号都市公園条例の一部を改正する条例の制定についてです。
等々力陸上競技場をJリーグ仕様にメインスタンドの改築等を行うことによる、グレードアップですから、興業目的の部分に応分の負担を求めるような料金設定を行い、市民はこれまでの金額で利用できるように配慮すべきでした。チケット収入のない市民団体や大学等の利用まで、倍になる料金改定は納得できません。よって、本議案に反対です。
議案第161号川崎市中部リハビリテーションセンターの指定管理者の指定についてです。
本議案は、中部リハビリテーションセンターの新設に伴い、更生相談所及び精神保健福祉センター以外の構成施設を指定管理者に指定し管理運営させるものです。
2014年3月議会に提出された「川崎市心身障害者総合リハビリテーションセンター条例の一部を改正する条例議案」の審議において、精神障害者の就労支援を行っている社会参加支援センターを廃止して、3力所の就労援助センターに体制を拡充して機能を移すというものでした。しかし、社会参加支援センターでは、精神障害の特性から一人一人との信頼関係を構築し,ご本人の力をいかせる就労環境を整えていくことが重要として就職面接の同行、企業での短期間の就労体験を行う「お試し就労」、支援者とともにグループで仕事を請け負う「グループ就労」など、一人一人に寄り添った就労支援を行うとともに、企業に対する精神障害者雇用の理解を広げる活動などを長年の間行ってきたもので、社会参加支援センターの積み上げてきた実績と専門的機能を維持し、また、新たに信頼関係をつくっていくのは、精神に障害をお持ちの方にとっては大変なことです。就労支援のニーズはさらに大きくなることを考えても社会参加支援センターは継続すべきと指定管理制度の導入議案に賛成しませんでした。
診療所で実施されてきた精神科デイケア、生活訓練支援センターで実施されてきた地域活動支援センターと相談機能、地域移行支援は新しい中部リハセンターに機能を分割して引き継いでいくとしていますが、長年蓄積されてきた専門性と信頼関係の継続を断ち切る指定管理制度の導入議案に反対をしてきた経過から、本議案には賛成できません。
議案第165号平成26年度一般会計補正予算についてです。
内陸部を中心的な生活圏とする市民にとって、少なく見積もっても約400億円かかるといわれる羽田連絡道路が必要な理由を何度、具体的に尋ねても、殿町3丁目地区の研究開発拠点と羽田空港跡地を含む国家戦略特区にとっての必要性を繰り返すだけです。アクセス性向上や防災力の強化についても、市民にとっての必要性をまともに答えられませんでした。
具体的な整備スケジュールは、国主催の推進委員会で議論を経てからというのなら、なぜ、委員会の結論を待たずに、川崎市がわざわざ予算流用や補正予算を計上してまで先行しなければならないのか、その理由も明確に答えられませんでした。
さらに、東京オリンピック・パラリンピックを視野に入れながら、オリンピックとの関係も明確にできませんでした。
その上、2004年からの10年間に、すでに川崎市として、ルート、構造、多摩川環境、周辺交通計画、殿町の交通流動、基本設計など、様々な観点から延べ12種類もの委託調査を実施し、その費用は総額約1億4千万円に及んでいます。
それなのに、異例の2000万円の予算流用を行い、本議案の2億円の補正予算を計上して調査を先行させるということです。
問題なのは、今年の予算執行を1%抑制し、“財政がきびしい”からと市民サービスはゼロベースで見直すと繰り返し答弁しているなかで、この補正予算が提案されていることです。結局、“財政が厳しい”というのは、市民要求を抑え込むための口実ではないかとの疑念がますます強くなりました。市民生活にとって必要性も緊急性もない、羽田連絡道路建設のための補正予算である本議案には賛成できません。
以上の立場から、議案第144号、議案第150号、議案第161号、議案第165号については反対、その他の議案、報告については賛成を表明して討論を終わります。