震災復興・がれき処理視察(3) 被災者の生活復興
これまでがれき処理の問題を中心に報告してきました。
第3回は被災したみなさんが直面している生活の実態や困難さ、被災自治体の抱える震災復興の課題について報告します。
市職員の労働組合(14日)、日本共産党陸前高田市議団の藤倉団長(15日)と懇談を行いました。
陸前高田市職労との懇談 (14日)
14日17時半から陸前高田市職労(市職員のみなさんの労働組合)の事務所で委員長と懇談しました。
市役所の被災後の状況…技術職員の不足が深刻
陸前高田市役所は、臨時・嘱託をふくめて113名が亡くなっている。今年は20人ほど新規採用もしたが、それでも技術職員などが不足して大変な状況。行政派遣は県内や全国から58人来ている。今後の課題は心のケアなどだが保健師も不足している状況だ。
市役所は津波を受けて機能が完全に失われ、罹災証明書や税金などの業務が困難になった。
仮設住宅の状況
仮庁舎に入って一年くらいたつ。昨年の盆前には仮設にほぼ入る。それ以外に「みなし仮設」に入っている方もいるし、縁故避難している高齢者などもいる。市外に出た後に戻ってきた人などで改めて仮設への入居を希望している方が7~80人いる。
漁業・商業など産業の状況
陸前高田の中心である第一次産業が大打撃で、とくに漁業の被害が大きい。雇用が破壊されている。養殖なども一年で採れるものではなく復旧に数年かかる。
大きな企業はもともと陸前高田にはない。商店・店舗が結構あり、当初は再建をあきらめた店も多かったがいまは半分以上は再開している。仮設店舗をプレハブでつくっていて県の補助があり市で貸している。ハコ・水まわりは無料だが、中身と外装は自己負担とのことだ。
雇用では、失業給付は延びているが今後切れる人がどんどん出てくる。そういう人の雇用の場の確保が課題。再雇用する企業も出てきているが、市外に出てしまう人もいる。
(写真:昨年10月に訪れた陸前高田市・広田漁港)
市民の関心の中心は「住宅再建の見通し」
被災者の関心は、どこに家を建てるか、次はどこに住めるか、ということが一番大きいのではないか。「3年で仮設を出る」という見通しだが、高台移転・復興住宅はどうなるか、水につかった土地を市や国が買い取ってくれるのか、というあたりの質問が一番市民のみなさんから寄せられる。
がれきは「まあ早く片付けてくれたらいい」
高田市民にとってがれきの存在は「まあ早く片付けてくれたらいい」という感じではないか。なくなれば復興の妨げがなくなる。かかわっている職員の雇用にもなる。“建設業者ががれき処理に入ってしまい住宅建設に対応できなくなった”ということが言われた時期があったが、いまは住宅建設の需要も満たせるようになっているようだ。
仮置き場の自然発火はその後起きていない
広範な地域が被災しているので仮置き場も住宅から離れていて被害もないという状況。昨年5~6月漁業・水産業の魚が流されて悪臭などが発生したが、ボランティアが片付けた。雇用促進住宅の近くで自然発火して丸一日くらいくすぶっていたがその後出火はない。住宅地に煙が流れる、というほどでもない。
生産者としての放射能への不安は大きい
小さな子どものいる家庭は関心あると思うが、市民全体ではあまり関心ないようだ。むしろ生産者としての関心が高く、タケノコやシイタケに出ていることへの不安の声をよく聞く。
復興計画と高台移転
復興計画は昨年の12月議会でようやく決まったところで、12mの防潮堤をつくり、津波被害が甚大だった市内中心部は、田んぼ・工業地・太陽光パネルなどにする予定で人は住まなくする。旧市役所から山側は5mかさ上げして建てる。
高田町・気仙町の2000戸8000人が高台移転する見込み。地域ごとに20カ所(小さい所は7・8戸、大きい所でも60戸)の協議会で希望を取ってまとめている。
高台には復興公営住宅のほか一戸建て部分も確保する。早くて5年、場所をどこにするか、上下水道をどうするか、元の土地の評価は、など技術職員の不足もあり苦労がある。
(写真:津波被害を受けた陸前高田市中心部)
日本共産党陸前高田市議・藤倉団長との懇談(15日)
15日の午後は、陸前高田市委員会事務所で藤倉議員と懇談しました。生活再建・復興への課題と、市政がどのように住民生活の復興を後押ししているか、話をうかがいました。
陸前高田市独自に被災者の生活を後押し
住宅再建について、国の支援に加えて市と県の支援が行われており、宮城県もしていない「ローンの利子補給」を行っています(表)。
さらに藤倉議員は陸前高田市だけが独自に行っている支援策を紹介。住宅再建の際に上下水道工事を行う場合に200万円、浄化槽設置にも国の基準に上乗せで支援を行っています。
(写真:日本共産党発行の「たかた民報」 詳細は共産党岩手県委員会のページへ)
被災者の生活をまるごと支援する
また店舗や工場への支援について、「『個人財産への支援はしない』というのが国の姿勢だが、店や工場があってはじめて町がつくられるし、市民の生活も成り立つのだから、店を流され家族を失った被災者の生活をまるごと支援するのが大事だ」と藤倉議員は熱く語りました。
県と市であわせて2分の1の補助(店舗の場合は最大300万円、工場・旅館の場合は最大2000万円)が行われているとのことで、それに加えて商売を再開する会社すべてに開業資金(事業再開支援金)50万円を予算化しているとのことでした。
こうした陸前高田市の支援制度を、日本共産党が(市と確認の上)市のチラシを増し刷りして配布し市民に知らせている、と話してくれました。
(写真:市の支援制度のチラシ)
地元産材を活用した仮設住宅の取り組み
陸前高田市に隣接する林業が主要産業の住田町は、以前から災害時に備えて仮設住宅を木造でつくりたいと国に認可申請しており、昨年4月に国のOKが出てスタートできた、とのことでした。
一般的な長屋タイプの仮設住宅では、子どもの泣き声が近隣の人に申し訳なくていたたまれない、という声が多数出ているそうです。住田町の一戸建て木造仮設住宅(間取りは他自治体と同じ)は、そうした子育て家庭などに好評で、陸前高田市の子育て世代も住田町を希望する人が多くいたとのことでした。
地元産材を使い仮設住宅をつくるこうした取り組みをもとに、地元の住田高校の就職先など雇用効果も生んでいるそうです。
交通など今後の課題
陸前高田市は平地のほとんどが津波で被災しているため、仮設住宅も多くが不便な高台にあります。そのため「店は始まっても店に行く足がない」「病院に行く手段がない」(藤倉議員)という状況です。そこで「デマンドタクシー」を市がはじめた(地元の会社が請け負っている)ところだが、まだまだ台数が足りない、とのことでした。
仮設住宅について、追い炊き機能がなくあまりにも不便だ、と日本共産党が国会でも取り上げ、実現したことなどが話題となり、「『仮設だから仕方がない』と国に言わせず、仮設に住んでいる方々が(健康で文化的な)最低限度の生活を送れるように支援していくことが重要だ」と藤倉議員は話していました。
(写真:昨年10月に訪れた陸前高田市の仮設住宅・右写真には「買い物代行」のチラシ)
最後にー被災者・住民の生活を直接応援する政治を
大船渡市・陸前高田市のがれき処理については、「早く処理できればその分使える区域も広がる、がれきを引き受けてくれるなら助かる」という声もあり、まだまだ可燃物以外は処理の見通しが立っていないという事情がありました。
しかし両市では、高台移転をはじめ住居の問題でも、漁業や商業・雇用など生業(なりわい)をどう復興していくかという問題でも、住民生活を直接応援する政治が何より求められていました。直接被災していない自治体の支援は、被災地のニーズに寄り添って行うべきです。
また陸前高田市のように、市民の生活にとって本当に必要な支援策を市が積極的に行う姿勢こそ、川崎市も学ぶべきです。