議会報告

2011年10月7日

原子力艦船の撤去を求める意見書などを提案~各党の政治的姿勢が鮮明に


DSC01409議会最終日に各会派が提案した意見書の採択が行なわれ、共産党が提起した意見書のうち、「石油コンビナートにおける液状化を想定した耐震対策の強化を求める意見書」案(意見書案第12号)、「介護職員処遇改善交付金制度の継続及び拡充を求める意見書」案(意見書案第14号)、「放射能汚染から子どもと市民の健康を守る対策を求める意見書」案(意見書案第15号)は、全会一致で採択されました。

しかし、「円高体質から脱却し、労働者と中小企業を守る緊急対策を求める意見書」案(意見書案第18号)、「原子力艦船の撤退を求める意見書」案(意見書案第20号)は、各党の政治姿勢を反映して自民、民主、公明などの反対により、否決されました。いずれも提案説明は佐野仁昭議員がおこないました。

DSC01378また自民党議員が提案した「緊急事態基本法の早急な制定を求める意見書案」について、市古映美議員が質疑を行い、「いまなすべきことは、大規模自然災害や原発事故など、多くの方々の苦難、悲しみのなかから学んだ経験を生かし必要な措置を具体的に急ぐことで、有事を一般化し、戦争やテロと災害を同列視することではありません」と述べ反対を表明しました。この意見書は「緊急事態に、国が万全の措置を講じる責務を持ち、経済秩序の維持や公共の福祉の確保のために、国民の権利を一時的に制約できるようにする緊急事態基本法」を早急に制定することを求めています。これには自民、民主、公明、みんなの各党が賛成しました。

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党提案の意見書案は次のとおりです

円高体質から脱却し、労働者と中小企業を守る緊急対策を求める意見書案

戦後最高値を更新した異常な円高が進行しており、円高で一番被害を受ける労働者の雇 用や中小企業の営業を守るために、緊急対策をとることが求められている。
プラザ合意以降の過去20数年来、日本経済は、何度も円高に見舞われており、一時的 には円高が弱まっても、時がたてば更に厳しい円高に見舞われることが繰り返された。
その根本は、日本の大企業の輸出競争力の異常な強さに起因しており、大企業は、円高 の度にリストラ、人員削減及び賃下げを強行し、下請代金を不当に値引かせてコストを削 減し、労働者と中小企業に犠牲を押し付けて一層国際競争力を強め、円高の下でも輸出を 増やし、それが新たな円高を招くという日本経済の円高体質を作ってきた。
さらに、国による資金援助や減税などの大企業の国際競争力を強化する対策は、貿易黒 字を増やして一段と円高圧力を強めることになり、円高で加速する産業空洞化への対策と 言いつつも更に円高となる悪循環を起こすといった根本的な矛盾をもたらすことになる。
よって、国におかれては、日本経済が為替水準に左右されない強じんな経済構造となる よう輸出依存の成長路線を改め、円高に対し更なる悪影響をもたらすTPPについても米 国の圧力に屈することなく慎重に議論するとともに、外需頼みから家計など内需が主導す る体質に根本的に転換するため、次の事項について早急に実現されるよう強く要望するも のである。
1 いわゆる労働者派遣法を抜本的に改正し、非正規労働者の正社員化を図ること。 2 最低賃金を抜本的に引き上げること。 3 長時間にわたる過密労働を是正すること。 4 いわゆる下請けいじめを速やかに是正し、大企業と中小企業の対等な取引ルールを
確立すること。 5 大企業の内部留保を労働環境の改善に用いるなど国内に還流させることに手立てを
講じること。 6 巨額の投機マネーによる国際的な為替投機の規制を具体化するよう世界各国に働き
かけること。 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

原子力艦船の撤退を求める意見書案

神奈川県横須賀市には、原子力艦船が年間延べ約300日も滞港している。
万が一、原子力艦船の原子炉が設計上想定された範囲を超える事故を起こした場合には、 高濃縮ウランを使っているため大量の放射性物質を拡散することになり、放射能汚染の被 害は、想像を絶するものとなることが予想される。
特定非営利活動法人の原子力資料情報室が平成18年に行った被害予測では、横須賀市 の米軍基地に配備されている原子力空母ジョージ・ワシントンと同程度のニミッツ級空母 において原子炉の炉心が溶融するような事故が起きた場合、60キロ圏内の地域が急性障 害発症相当レベルの被ばくをする範囲に入るとされ、首都圏を始め広範囲に高濃度の放射 能汚染を広げる危険性が指摘されている。
さらに、米軍横須賀基地を震源域に含んでいる三浦半島断層群の地震の発生確率が東日 本大震災の影響で高まったと国の地震調査委員会からも指摘されており、これらの原子力 艦船が、このような大地震の震源域の真上を母港としている危険性も重大である。
もし、この三浦半島断層群の地震が起きれば、原子力空母が停泊している12号バース の関連施設が地震と津波の引き波によって破壊され、機能喪失することで原子炉の冷却が 困難になる危険性が指摘されている。
こうした中、原子力艦船の放射能汚染の危険について、本年4月に米国政府が横須賀市 長からの確認要請に対して回答した書簡では、その説明を裏付けるのに必要な根拠が示さ れておらず、それをもって安全と理解するのは極めて困難である。
よって、国におかれては、市民の生命と安全を守るためにも、米国に米軍横須賀基地を 米軍第7艦隊の艦船の母港とすることをやめさせ、米軍横須賀基地に停泊する原子力艦船 を我が国から撤退させられるよう強く要望するものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。