全力あげるべき課題は雇用安定と福祉充実・中小企業支援~石田議員が代表討論
10月6日、議案の採決に先立ち、石田和子議員が日本共産党川崎市議団を代表して討論をおこないました。
石田議員は、2010年度(平成22年度)の各会計の決算認定について、個人市民税が69億円も減少するほど市民所得が減少しているとき、自治体が全力を挙げるべき課題は市民の雇用の安定をはかり、福祉施策を充実し、中小企業への支援を強化すべきであったにもかかわらず、市は積極的な改善策をとってこなかった厳しく批判しました。
雇用対策の取り組みの弱さ、中小企業の固定費補助の否定、特養ホーム整備の大幅遅れの一方で、先端企業誘致には至れり尽くせりの「重点的配分」のあり方を批判し、国際コンテナ戦略港湾整備をやめ震災被災地の港湾整備に予算を回すよう国に政策の見直しを求めることを要求しました。
仮称リサイクルパークあさお整備事業王禅寺処理センター解体撤去工事など公契約制度が初めて適用される工事が始まることから、作業報酬下限額以上の賃金が支払われることを労働者への聞き取り調査を含めて確認徹底することを求めました。
水道事業と工業用水道事業の会計決算について、2010年度から一般世帯にわずか50円・総額4億3000万円の料金引き下げに比べ大企業には11億1000万円もの引き下げを行なしましたが、決算で8億9000万円の資金不足が発生。水道事業と工業用水道事業の健全な経営のためには大企業に相応の料金負担を求めるべきであったとして、市民本位の料金体系への転換を求めました。
また、高津区久末の県中小企業従業員宿舎跡地に特別養護老人ホームを整備する請願は採択すべきであること、土地信託事務処理は反対すると述べました。
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石田議員の代表討論の全文は次のとおりです。
私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論を行ないます。
2010年度(平成22年度)の各会計決算認定についてです。
2010年度決算の特徴は、市税収入が見込みを上回ったとは言え、前年度から32億円も減少し、とりわけ、個人市民税は、課税所得の減少によって、69億円も減少していることです。私たちは、予算審査の際、市税収入が過去最大の下げ幅の予算になったことに対し、自治体が全力をあげるべき課題は、市民の雇用の安定を図り、福祉施策を拡充し、中小企業への支援を強化することだと、改善策を提案してきました。
しかし、市は、それらの対策を積極的に打とうとはしませんでした。その結果、深刻な状況にある市民生活が改善されないまま、今日に至る結果となりました。
雇用問題では、2010年度の市内有効求人倍率は0.36と神奈川県平均の0.43を下回り、改善の兆しが見えませんでした。予算審議の際、深刻な問題となっている高校卒業者の就職について、市長を先頭に地元企業を訪ね、採用枠を広げる努力をするよう求めましたが、経済団体に要請するとの答弁にとどまりました。大手企業が高校生の採用に消極的で、この間、一人も採用していない大手企業が半数もあり、残りの企業も3年間で一人あるかないかという実態は、市の取り組みの弱さの表れではないでしょうか。国からの補助金の範囲にとどめず、企業への申し入れをはじめ、雇用創出に具体的な手立てを講じることを強く求めておきます。
中小・零細企業の経営の実態を見ても、2010年度の負債総額1000万円以上の市内企業の倒産件数は前年度比15%増の135件、金額でも増加しました。神奈川県全体では、前年度比で倒産件数・金額とも減らしているのとは対照的でした。
わが党は、経営に苦しむ中小・零細企業の支援策は融資制度の拡充にとどまらず、経営を直接支える、機械リース代、家賃補助など固定経費への補助を行うべきであると提案し要求しましたが、市長は、それに応えようとはしませんでした。今議会でも提案した「リフォーム助成制度」は、すでに386自治体で取り組まれ、その経済効果は立証されています。市内経済の活性化策として是非実施するよう、改めて求めておきます。
市民生活の分野では、切実さをましている特養ホームの整備の遅れも一向に改善されていません。2010年1月段階で5339人の待機者は、1年後5700人を超えました。これに対して市は、入所を必要とする人数を「介護度3」以上で「在宅の方」に絞り込み、恣意的に必要整備数を少なくし、実態に合わない整備計画にしています。
特養ホームや保育園など市民生活に密着した福祉型公共投資は、雇用の創出、消費の拡大、保育者・介護者の雇用機会の増加、精神面での健全化など大きな波及効果をもたらし、経済対策としても効果の高いものです。ここにこそ、税金を重点的に振り向けなければなりません。しかし、市長は「行財政改革」で確保した財源で「必要な施策に重点的に配分してゆく」などとして、「殿町3丁目地区でのライフサイエンス・環境分野における研究開発拠点の形成」「国際コンテナ戦略港湾計画」を推進する姿勢を強調しました。
先端企業を誘致する目的で、UR都市機構から殿町3丁目の1.3㌶の土地を23億円で購入、第1段階として0.6㌶を「財団法人実験動物中央研究所」に貸出し、第2段階として0.7㌶を大手不動産などに貸し付け、建物を建ててもらい、市がそのスペースを賃借するという複雑な経緯で開発を進めました。しかも、建設費用は「イノベート川崎」で約4億円の助成をつけているのです。市民が保育や介護で施設がないと困っているときに、企業誘致には、まさに、至れり尽くせりです。これが、市長の言う「重点的配分」の姿です。「重点的配分」の在り方が間違っているのではないでしょうか。
さらに、国際コンテナ戦略港湾計画では、3機目のガントリークレーンの設計費が計上されたほか、「港湾道路東扇島水江町線直轄工事」の負担金は2億4540万円余でした。今年、9月に公表された「京浜港の総合的な計画」では、川崎港のコンテナ取扱量を2030年までに年間40万~50万TEUに増やすというものでした。2009年の実績は3万1192TEUで、現在の処理能力のわずか23%しか稼動していません。なのに「計画」は現在の取扱量の13倍以上に増やすというのです。明らかに過大で空想的な目標と言わざるを得ません。
東日本大震災による被災地の港湾施設の被害総額が4280億円と言われ、その復旧復興が求められているときに、10年間で最低でも5500億円を京浜港・阪神港につぎ込むことは復興を遅らせることにつながります。市長は、被災地の「復興支援は非常に重要」といいながら、「国の重点投資等により、国際競争力強化に資する取り組みを進めている」と震災前の政策に固執する姿勢を示しました。復興支援が重要というなら、「国際コンテナ戦略港湾計画」から撤退し、国に対しても政策の見直しを迫るべきです。改めて、指摘しておきます。
2010年度決算では、被害想定調査に基づく地震防災戦略や備蓄計画など防災関連計画の策定が盛り込まれています。奇しくも、地震防災戦略は東北地方太平洋沖地震の発生2日前、備蓄計画は前日に公表されました。
しかし、観測史上最大の地震を目の当たりにして、公表された計画を見直さなければならなくなりました。つまり、出された計画では、実際に首都直下等の地震が起きた場合には、対応できなかった可能性が高いということです。
特に、一度火災を起こせば、燃え尽きるまで消し止めることができない市原市や仙台市の石油コンビナートの現実を目の当たりにして、現在、計画上空白の津波対策、液状化対策など臨海部の防災計画が欠かせないことが、明らかとなりました。
総務局長は、「現行の地震被害想定調査及び地震防災戦略を見直し、臨海部も含めたさらなる防災体制の強化をはかる」とのことですので、注視してまいります。
また、各避難場所への防災備蓄の設置など拡充の問題、災害時要援護者の対策など、東日本大震災の教訓を生かして抜本的な充実強化をすべきであることを強く要望しておきます。
議案第131号仮称リサイクルパークあさお整備事業王禅寺処理センター解体撤去工事請負契約の締結について、議案第132号小向住宅新築第1号工事請負契約の締結について議案第133号古市場住宅新築第4号工事請負契約の締結について、議案第134 号川崎国際生田緑地ゴルフ場クラブハウス新築工事請負契約の締結についてです。
公契約条例施行後初めての工事契約です。しかも落札率が議案第132号、133号、134号は80%代。議案第131号の王禅寺処理センター解体撤去工事では46.5%と予定価格の半値以下になっています。
低入札の無理が、手抜き工事につながるか、もしくは下請け業者や労働者へ単価や賃金の切り下げにつながっているとしたら、公契約条例をつくった意味がありません。
予定価格よりも大幅に低入札の工事で、作業報酬下限額以上の賃金を支払って、適正な品質を確保できるのか、公契約条例施行後初めての工事請負議案として、条例の真価が問われます。適用労働者に作業報酬下限額以上の賃金が支払われているのか、提出された台帳の内容を確認すると同時に、適用労働者への個別の聞き取り調査を含め、徹底していただきたいと思います。
また、適正な品質を確保することについても、現場監理に当たっては、ベテランの職員を当たらせるということですが、中間検査だけでなく、一つ一つ工程ごとの点検も含め、監視強化を徹底していただきたいと思います。
中でも、議案第131号の王禅寺処理センターについては、危険なアスベスト処理もあり、絶対に不適切な処理は許されません。その点を強く指摘しておきます。
議案第176号平成22年度川崎市後期高齢者医療事業特別会計についてです。
高齢者に差別医療を持ち込む後期高齢者医療制度に反対であること、今期の保険料改定にあたって、さらなる減額をすべきだったと考えることから、認定できません。
議案第185号平成22年度川崎市病院事業会計についてです
2010年第1回定例会において、公立病院における時間内の分娩料を8万円から12万円に引き上げる改訂が行われました。わが党は、今、若い世帯は雇用が不安定で、収入の減収など経済的にも大変な世帯が増加するなか、安心して出産するためにも、少子化を克服するためにも、可能な限り、出産費用を抑えることが公立病院としての責務と考えることから、2010年度川崎市病院事業会計予算に反対した立場から、この決算に認定できません。
議案第187号平成22年度川崎市水道事業会計決算認定について、および議案第188号 平成22年度川崎市工業用水道事業会計決算認定についてです。
2009年9月議会で水道料金改定を行い、2010年度から料金体系が変わり、その最初の決算となりました。一般家庭の9トンから10トンの部分の改定による値下げ総額は4000万円程度だったのに対し、1000トンを超える大口利用者の値下げ総額は約2億7000万円となりました。また、工業用水で補てん水をやめて新たに上水との直接契約になったことで、実質的に契約者は値下げになり、その値下げ分が8億4000万円となりました。これも大企業ですから、大企業の値下げ額は合計で、11億1000万円となりました。一方、「行革効果の還元」などと称して、直接市民が値下げの恩恵にあずかったのは1世帯わずか50円で合計4億3000万円でしたが、これは3年間だけです。ところが、水道事業全体では8億9000万円の資金不足が出ていることが明らかになりました。施設整備の費用がかさんでいることが理由です。わが党は、大企業に手厚い料金体系のあり方は、市民の命の水を安定的に供給する水道事業としてあってはならないこと、補てん水を廃止するなら、水道事業と工業用水道業の健全な経営のために相応の水道料金を求めるべきであることを主張してきましたが、そのことが料金改定の一年目から証明されました。大企業優先の事業を推進した決算には反対するとともに、あらためて、市民本位の料金体系への転換を求めるものです。
請願第13号高津区久末の県中小企業従業員宿舎跡地に多目的ホールと防災施設を併用した特別養護老人ホームの整備に関する請願についてです
高津区久末地区は他の地区に比べ、公営住宅が多く、高齢化率は川崎市全体16.6%に対し久末地区22.28%と高齢化が急速に進み、老後の不安が大変大きくなっています。また、川崎直下型の地震が起きる可能性が高まっている中、一次避難所で対応しきれない場合の対策として、近隣の公共施設を補完施設に充てるとしていますが、当該地区は、久末小学校のほかは老人憩いの家や子ども文化センターなど公共施設がほとんどなく、防災機能をもつ特養ホームの要望は住民の強い願いです。
また、昨年6月議会において、保育園や特別養護老人ホームの整備のための県有地の提供を求める意見書を県に提出。川崎市からも「2011年度の県の予算編成に対する要望書」に、県有財産の貸付制度を創設されるよう要望されました。
県は、当該地に、警察官舎建設計画を進めておりますが、特養ホームの整備数が最も少ない高津区内の貴重な県有地は、地域の実情や住民が望む活用方法を最優先にすべきと考えることから、この請願を採択することに賛成です。
報告第16号土地信託の事務処理状況についてです。
信託期間満了を迎え、最後の事務処理状況の報告です。
貴重な市民財産を20年間も銀行資本に信託し、配当利益を当てにして市財政に充てようとするやり方は、自治体としての本来のあり方から逸脱しているとして土地信託に対して当初から反対してきたことから報告第16号については承認できません。
私たちは、予算議会において、不要不急の大規模開発の見直し、基金の取り崩しによって、市民生活の切実な願いに答えるべきと予算の組み替え動議を提出しました。その経過も踏まえ、2010年度決算認定にあたっては、一般会計決算、下水道事業会計、競輪事業特別会計、港湾整備事業会計、公共用地先行取得等事業特別会計、介護保険事業特別会計については認定できません。
以上の立場から、議案第170号、議案第171号、議案第176号、議案第178号、議案第179号、議案第183号、議案第185号、議案第186号、議案第187号、議案第188号、報告第16号については反対、及び認定・承認できないこと、その他の議案、報告については、賛成及び認定・承認することを表明して討論をおわります。