京浜港国際コンテナ戦略港湾計画について特別報告 「政策的に誤り」
12月1日に開かれた「市議選政策(案)報告のつどい」で、「国際コンテナ戦略港湾計画 川崎港の巨大化計画について」の特別報告を明治大学の山口不二夫教授と海事再生委員会の小出修三委員が行いました。これは、京浜港(東京港、横浜港、川崎港)が「国際コンテナ戦略港湾」として選定されたことにともない川崎港のインフラ整備などに巨額な資金がつぎ込まれる問題について、日本共産党川崎市議団が財団法人政治経済研究所(山口孝理事長)に委託した研究にかかわって、現時点で解明できた内容について説明したものです。政治経済研究所は過去に川崎コンテナターミナル(KCT)の破綻処理問題についての研究報告もまとめています。
日本共産党市議団の議会質問で、港湾局は、第4バースの整備など関連する港湾整備事業費は今後10年間で1000億円と答弁しています。しかし周辺道路の整備なども含めればさらに膨らむ事は明らかで、京浜港が当面のキャッチアップ目標としている韓国では、釜山新港整備に9兆1500億ウォン(約8000億円)以上を投資して30バースの整備を進めています。
山口教授は、今回の民主党の「新成長戦略」は、コンクリートから人へという言葉に象徴されるように土木建設によるものではなく、環境関連市場の活性化、医療介護・健康関連サービス、観光地域活性化戦略が柱であり、「国際コンテナ戦略港湾」政策はおそらく従来からの政策を潜り込ませたもので、「成長戦略」の本質ではないと指摘しました。そして、ここ数年アジアの生産・消費地は日本からはなれつつあり、日本の地理的優勢は低下していて、これから日本の港がハブ港湾の地位を獲得するには「兆円」水準の膨大な投資と港湾・荷役コストの低廉化のための財政出動、スポークシステムの確立が必要で、その結果もたらされるものは、コンテナという数量は多くとも利益の薄い物流と追加財政出動、すなわちお金をかけて利益の薄い物を運び、低賃金で貧しくなるというものになると述指摘しました。最後に「戦略港湾」政策において川崎港が不適切であるなら、川崎港の将来として、新産業として観光・IT・環境・遊びで高付加価値を獲得する方向で、観光・レクレーション機能を強化したレジャー港湾としての発展もあると述べました。
小出氏は、▽アジアではシンガポール、上海、香港、釜山、ドバイなどが、世界規模のコンテナ物流システムの国際ハブ港として確立されていて、日本の地方の国際港湾は釜山のフィーダー網の中に組み込まれていること。▽メガオペレータや、国家プロジェクトとして位置づけた国が、巨額の資金を投入してハブ港の整備を進めてきていること。▽「外航海運会社が日本に事業の中心を置くのが最善かどうか、常に自問自答してきた」日本郵船がコンテナ船の運行・管理などの事業の中核を国内からシンガポールに一元化、海運アライアンスに参加している日本企業に日本への寄稿を外すよう海外連携会社から圧力がかかっていることなど、「世界の海運会社の日本離れは急速にすすんでいる」(宮原耕治日本船主協会会長)。などから、世界的規模のコンテナ物流システムの中で新たに京浜港が「国際ハブ港」の位置を獲得するのは非常に困難と述べ、「国際コンテナ戦略港湾」計画に疑問を呈しました。