私立幼稚園の保育料に区が最大月額26,000円補助~東京・江戸川区の幼児教育施策を視察~
2009,04,30, Thursday
川崎市は私立幼稚園の入園料も保育料も17政令市で一番高く、2009年度に合計474,800円(入園時、年額平均)、保護者負担は全国平均(同、年額294,000円)より年間18万円も高いという異常事態です。それなのに、国基準をこえる市単独の上乗せ補助は、所得が一番高いEランクだけ。全ランクの子どもを対象に市単独補助の実現をという要求に、阿部市長は背を向けたままです。
そうしたなか、都内で一番手厚い補助をしている区があると聞いて、日本共産党川崎市会議員団は、4月24日、東京・江戸川区に視察調査に行きました。竹間幸一、市古映美、宮原春夫、石田和子、石川建二、井口真美、大庭裕子の各市議が参加しました。
●区立の保育料との「格差是正」が目的で始まった私立への手厚い補助
一行は江戸川区役所で、区立幼稚園の事業内容、私立幼稚園の保育料補助について、担当課から、パワーポイント(スライド)も使ってレクチャーを受けました。
江戸川区は、区立幼稚園が5園(平成20年度、在園児数597人)、私立幼稚園が39園(同、在園児数1万1457人)。
私立幼稚園の保育料に対し、国基準の就園奨励費のほか、区が「保護者負担軽減費補助金」として、所得制限なしで、すべての所得階層(A~Eランク)に園児一人につき月額上限26,000円(年間31万2千円)まで補助しています。(都の補助と合算)
私立幼稚園への手厚い補助は、月額3,000円という都内で最も安い区立幼稚園の保育料との「格差是正」を目的に昭和50年(34年前)から始まり、順次引き上げられ、平成11年度には現在の額になりました。このとき、区内の私立幼稚園の保育料は月額平均約29,000円だったので、区立と同じ月額3,000円程度で私立に通えるようになりました。(現在、区内の私立幼稚園保育料は月額平均31,000円程度)。区堺に住み、他区の私立幼稚園に通う子どもの保護者にも、これらの補助は適用されています。
また同区は、私立幼稚園の入園料補助金8万円(上限)も出しています。
●平均年齢が都内で一番若く、出生率・乳幼児数とも都内1位
現在、江戸川区の総人口は67.5万人(23区中4位)。これに対し、乳幼児数(0~5歳)が約4万人は23区中1位、出生数約6,500人も同1位、また平均年齢41.1歳は23区中で一番若い区です。合計特殊出生率は、国が1.34、都が1.05、都内では渋谷区のように0.7台もあるなか、江戸川区は国並みの1.33で都内1位です。(平成21年度)
同区の一般会計予算規模は約2012億円で、そのうち児童福祉費は約365.5億円。そのうち、幼児教育に約48.2億円(児童福祉費の13.2%)をかけています。その内訳は、私立の保護者負担軽減補助金が40.8億円(都負担は4億円程度)、就園奨励費は6.6億円(国負担は1億円程度)など。
●広々した園庭、緑が多い素晴らしい環境~区立鹿本幼稚園を視察
この日、江戸川区役所でのレクチャーに先立ち、一行は、区立鹿本幼稚園を現地視察。同園の園長(区立園長会会長)から、同区の区立幼稚園の状況、事業内容などについて説明を受け、同園の施設を見学しました。
同区の区立幼稚園は、5園ともに2年保育、お迎えは保護者が行ないます。牛乳は毎日出しています。子どもの体をつくる、遊びの中で子どもたちに学ばせる、心と心をつなげ、幼児期から感動をと、5園は同じ考えで幼児教育を実践しています。
住宅街にある区立鹿本幼稚園は、自然環境に恵まれており、園庭は広く、緑が多く、遊具も充実、プールもホールもあります。子どもたちが安心してのびのび遊べる、幼児教育には素晴らしい環境です。
園庭にも、その外にも、チョウが飛んでくる、いろんな昆虫がくるように、年間20種類の野菜ができる、園の畑があります。食べることの楽しさを実感するため、月1回、お楽しみ会食では、自分たちが育てた野菜が園内の調理室で調理され、子どもたちが食べます。年1回は保護者も参加して、子どもと保護者が感動を共有しているそうです(全員が体験できるように年間10回に分けて)。
園舎の中も見せていただきましたが、廊下も教室も広く、ゆとりを感じました。
●昨年度から開始された「親子ひろば・あいあい事業」
区立幼稚園は区民の財産ということで、平成20年4月から始まった「親子ひろばあいあい事業」は、区立幼稚園を広くコミュニティの場として提供し、幼稚園が主体的に地域の応援団と協力して行なう子育て支援事業です。
午前の広場(0~3歳児と保護者)、午後の広場(0~5歳児と保護者)、土曜の広場(同)で、親子の遊び広場、園庭開放、親子ダンス、紙芝居、お話会、木工教室、ウォークラリー(月1回程度)など。非常勤2人、専任の指導員が配置され、応援団スタッフを構成し、地域の力で事業を支えています。現在、全区の応援団は122人、地元の町会長なども応援団に参加しているそうです。
また全区立幼稚園で行なっている、ショートサポート事業は、保護者の就労や家庭の通院、兄弟姉妹の学校行事、冠婚葬祭など、一時的に教育時間外の保育が必要な在園児を預かる事業(保育時間、午前7:30から午後6:30)。あくまで緊急時の預かり、いわゆる延長保育ではありません。