議会報告

2019年12月16日

差別のない人権尊重のまちづくり条例案に賛成~渡辺議員が代表討論


★渡辺IMG_920612月12日の第5回川崎市議会定例会で、渡辺学議員(幸区)が日本共産党を代表して諸議案にたいする討論を行いました。

渡辺学議員は代表討論で「差別のない人権尊重のまちづくり条例」について、「当事者をはじめ、広範な市民の皆さんの運動が条例案提出に結び付いた」と歓迎しました。そして、障害者・LGBTの差別に関して「合理的配慮を欠くこと」「アウティング(本人の合意なく性自認や性的指向を暴露すること)」も、条例で禁じられうること、これらに関する個別条例の制定も可能であることが審議で確認されたと指摘。憲法21条や同31条の観点から問題点を指摘し、一定の明確化、限定化がされたと評価し賛成を表明しました。
同条例案の採決では全会一致で可決、成立しました。諸派の2議員が退席しました。自民党が提案した同条例案に対する付帯決議案には日本共産党は反対しました。

渡辺議員の討論原稿は次の通りです(議事録ではありません)。

代表討論

私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論を行ないます。

議案第157号川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例の制定についてです

本条例案は、第二章で、不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進を掲げ、第5条で、「人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする「不当な差別的取り扱いをしてはならない」と規定しています。

私たちはこの間、憲法学者、弁護士、総務省・法務省にも意見を伺ってきました。また、障がい者団体の皆さん、LGBT当事者やご家族のみなさんから要望をお聞きしてきました。その中で切実に寄せられたのは、差別と偏見の中で苦しめられてきた現実と差別根絶の立場から、条例に明確な「差別禁止」条項を規定してほしい、とりわけ、障がい部分では「合理的配慮を欠くこと」を禁止内容とした禁止規定、LGBT当事者の方からは「アウティング禁止」を盛り込んでほしいとのことでした。代表質問、委員会審議を通じて、『不当な差別的取り扱い』の概念にこれらの内容が含まれ得ることが認められました。また、今後、明確な差別禁止規定を設けた条例制定があり得ることも確認されました。今後、こうした内容を具体化する取り組みを求めていきたいと思います。

 第三章以降の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進、いわゆるヘイトスピーチ規制部分についてですが、私たちは一貫してヘイトスピーチは許さないという立場であらゆる場でヘイトスピーチ反対の声をあげてきました。

この間の当事者の皆さんをはじめ広範な市民の皆さんの運動が、今回の条例案の提案に結びついたことを心から歓迎するとともに、本規定の検討に際しては、憲法21条「表現の自由」、憲法31条「適正手続の保障」の観点からの検討を行なってきました。憲法による表現の自由が人権の体系上「優越的地位」にあり、その規制立法は厳格な基準に基づく審査、すなわち、「やむにやまれぬ」理由に基づく「必要最小限度の制限」であることが要求され、規定が漠然・不明確な場合、過度に広汎な規制の場合は違憲とされること、さらに刑罰を規定する場合は、規制対象となる行為とそれに違反した場合に科される罰則との間に均衡が図られていることが必要であることを指摘し、本条例をこうした観点から検討してきました。

私たちは「罰則もありうる」が、罪刑法定主義から要請される構成要件の明確化をはかるという立場で臨んできました。そして、6月の文教委員会、9月議会で行ってきた議論の結果、私たちが指摘した「3回の違反行為の内容」「特定の国もしくは地域」「あおり」「侮蔑」などの用語、「手段」などについてそれぞれ、より明確化または限定化がされました。また、私たちも求めた通り、1回目の違反・勧告の後、「公表・罰則」の前に「差別防止対策等審査会」の意見を聴くという項目も加わりました。

しかし、「勧告」「命令」の前に、『緊急を要する場合で「差別防止対策等審査会」の意見を聴くいとまがないときはこの限りではない』との項目が加わったことについては、この要件が加わることにより、「差別防止対策等審査会」の意見を聴くことが原則だったのに、例外事例と判断される場合が多くなり、原則と例外が事実上逆転することになりはしないか危惧する立場から質しました。委員会審議で、「緊急を要する場合でも最大限審査会開催の努力をすること、開催できず市長の権限で勧告・命令を出した場合は速やかに審査会を開き報告することを求めたのに対し、答弁で確認されました。

本条例の保護法益や23条の市長の告発についても質しました。これらについては、適用段階で厳格に行うことも含め、さらに深めていく必要があるものと考えます。

以上、素案から成文までの間に私たちが行った憲法21条、31条の観点からの指摘・質問に対して一定修正されたこと、何よりも当事者の皆さんの置かれた現状に心を寄せ、本条例には賛成するものです。

議案第159号川崎市無料低額宿泊所の設備及び運営の基準に関する条例の制定についてです

本議案は社会福祉法の一部改訂に伴い、無料低額宿泊所の厚生労働省令で定められた基準を基に居室の床面積を7.43㎡以上と定めるものです。

無料低額宿泊所は生活保護法の対象者など生計困難者に低額な料金で住居を貸付ける施設で、本市でも無料低額宿泊所の入居者の約9割が生活保護利用者です。

本来「住居」ではなく一時的な宿泊所にすぎない無料低額宿泊所を一定の要件を充たせば「住居」として認めるものです。しかし、住居としての質が十分に担保されているとは言えません。これでは「終の棲家」としては言えないものです。

生活保護利用者など生計困難者に住居といえないような低質な宿泊所を合法化してしまう本議案には賛成できません。

議案第163号川崎市家庭的保育事業等の設備及び運営の基準等に関する条例の一部を改正する条例の制定について、議案第164号川崎市特定教育・保育施設及び、特定地域型保育事業の一部を改正する条例についてです

これらの議案は、国が家庭的保育事業等の規制緩和にかかわる省令を定めたことにより、市も同様に規制緩和する条例案です。

 第一に、家庭的保育事業者は現在、保育所・幼稚園などを連携施設とすることが求められていますが、その連携施設を認可外保育施設や企業主導型保育事業者などにも広げるものです。第二に、事業所内保育事業者のうち満3歳以上の児童に対して保育を行うものについては、連携施設の確保をしなくても良いようにする、というものです。第三に、家庭的保育事業者については、乳幼児への食事提供は本来、事業所内での調理を原則としているところですが、家庭的保育者の居宅以外で保育を行う事業者については、事業所内で調理しなくてもよいという猶予期間を5年間から10年間にさらに延長するものです。第四に、家庭的保域事業者が連携施設の確保が困難などの要件を満たすときには、連携施設の確保を五年間猶予するとされていたものを、さらに10年間猶予するものです。

 子どもの命にもかかわる保育の基準について規制緩和を行う議案のため、賛成できません。

議案第165号 川崎市営住宅条例の一部を改正する条例の制定、および議案第166号川崎市特定公共賃貸住宅条例の一部を改正する条例の制定についてです

本条例改正は、民法の改正にともない連帯保証人を廃止するとともに、敷金を2か月から3か月へと増額し、明け渡し勧告の要件の中に迷惑行為の禁止要件を盛り込むことを加えるものです。さらに、特定公共賃貸住宅の空き家を低額所得者が使用できるよう条例の改正を行うものです。民法改正による保証人制度の廃止は、保証人を立てるのが困難な状況が広く存在する中で、必要な改善点だと評価します。また、特定公共賃貸住宅は、20年間の傾斜型家賃方式で年々家賃が上がってゆくシステムとなっていますが、近年空き家が多く、わが党は、2016年3月の予算審査特別委員会等、これまでも「市営住宅への転換」を求めてきた経過からも、評価できるものと考えます。

また、民法の改正によって、賃貸契約が終了した場合の原状復帰義務と原状回復義務の範囲について、一般に通常消耗および経年変化はその対象としないことを明記しました。この変更を受け、UR住宅では、「退去時における住宅の消耗等の復旧費用は、UR都市機構が負担することとしており、皆様に負担いただくことはありません」と入居時のしおりで明記し、通常の使用で汚れた引き手周りの汚れなどは、使用者に負担を求めないとしました。

しかし、民法改正にあたっても特約を定めることが排除されないことから、本市においては、特約を定め、その中で、賃貸契約が終了した場合の原状復帰義務と原状回復義務の修繕義務を負う範囲について、通常消耗および経年変化もその対象とすると明記し、入居者に負担を求めることとしています。この点は、今後の改善を求めておきます。また、迷惑要件を明け渡し勧告の要件に加えることについては、「住まい」は「生活の基本」であり、憲法25条が保障する生存権の土台ともいうべきものであり、「迷惑行為者を排除すればよい」というものではありません。そうした事例では、福祉的な支援が必要な場合も想定されることから、関係局と連携し、当事者が住宅を失うことのないよう、支援を総合的に行うことが必要です。委員会質疑では「迷惑行為の事実を認定した時点で、福祉部局との連携を図る」とのことでしたので、推移を見守りたいと思います。議案第165号、第166号について、退去時の入居者負担の改善など課題はありますが、民法改正による保証人の廃止や空いている特定公共賃貸住宅の入居基準を市営住宅と同様にするなど、改善に結び付く点があることから、賛成するものです。

議案第170号「都市計画道路殿町羽田空港線ほか道路築造工事請負契約の変更」についてです

この議案は、「羽田連絡道路工事請負契約金」を222億5291万4千円から28億79万8千円増の250億5371万2千円とするものです。今回の変更で3度目の変更となり、当初の契約金、217億1880万円から33億3491万2千円もの増額となります。市の負担額は約56億円にもなり、さらに、今後増えることが予定されています。

代表質問では、羽田連絡道路の必要性の質問に対して、「国内外の人やビジネスを呼び込む」「観光の振興に寄与する」ために「不可欠な道路」という答弁でした。市内の事業所や観光のためなら、わざわざ殿町を通る必要もなく、もともと、既存の橋や道路、鉄道があるわけですから、この橋を作る理由にはなりません。「立地企業の就業者の通勤ルート」という理由も、就業者はわざわざ京浜急行・羽田線の駅から来なくても、JR線、京急線、川崎駅から既存のバス路線を利用して来ればよいわけで、通勤のために橋を作る必要はありません。羽田空港を利用して「当地区に来る来訪者」のためという理由も、来訪者数、年間1200人ということは、1日当たり3人で、わざわざ、橋を作るまでもありません。以上のことから、羽田連絡道路の必要性は、全くないことが明らかになりました。

また、当該地は、野鳥の貴重な生息地で、「生態系保持空間」をまたぐ工事であり、環境を保全立場からも、反対してきました。

以上のような経過から、羽田連絡道路の建設自体に反対ですので、今回の契約金額の増額変更についても、反対するものです。

議案第181号 北部地域療育センターの指定管理の指定についてです

本議案は北部地域療育センターの指定管理を引き続き、社会福祉法人同愛会とするものです。指定管理制度は期間終了後に今回のように公募が行われ、指定管理者が変わることもあり得ます。

地域療育センターは障がいを持つ子どもの成長を促す長期の療育の場です。その子に合せた高度な専門性、スタッフとの信頼関係が継続されなければなりません。指定管理制度は子どもや保護者に継続した療育に不安を繰り返し与えことにもなります。地域療育センターは直営を継続すべきであると指定管理制度導入に反対してきました。 

この立場から、本議案には反対です。

議案第183号川崎市ヒルズすえながの指定管理者の指定についてです

「ヒルズすえなが」は、児童福祉法第38条に基づく母子生活支援施設です。私たちは、もともと地方自治体が行うべき事業を、民間の指定管理者に委託することには反対をしました。その後、同じ事業者が選定されることになった時には、事業の安定性、継続性が担保されることが必要とのことで賛成したこともありましたが、その後、入所者から、入居した時の生活必需品の対応や、退去時の修繕費の対応など、施設側の対応に問題があることがわかり、その後事業者が変わっても、同じような問題が入居者から発せられています。このように問題が続いていることの根源には、本来自治体が行うべき福祉事業を指定管理者に委託したこと、いつ管理事業者が変更するかわからないということでは、事業の継続性が担保されないという問題があることから、母子福祉施設への指定管理者制度は導入すべきではないと考えますので、この議案には賛成できません。

請願第4号所得税法第56条廃止の意見書を国に上げることに関する請願についてです。  

自営商工業者の多くが家族労働によって事業を支えています。所得税法第56条は、事業主の家族が従業員として働いている場合は、どんなに長時間働いても、その給料が税法上の必要経費に含まれないというものです。この条項は、明治時代の家父長制度の遺物であり、業者婦人や家族の労働を認めないなど差別と偏見に基づく制度です。地域経済を支える商店や家族経営を危機にさらし、地域経済の振興を妨げるものです。さらに、働いたらその労働にふさわしい給料を受け取るのは当然のことで、これを認めないということは、国連でも指摘されているように人権問題です。所得税法第56条は直ちに廃止すべきであり、本請願を採択することに賛成です。

請願第7号 幼児教育・保育の無償化に伴う事務手続きについては、内閣府が示した事務手続きに基づき「償還払い」とすることに関する請願についてです

本市が採用している法定代理受領の場合に比べ、償還払いとした場合については保護者がいったん園側に支払う額が大きくなるという問題があるため、賛成できません。

事務負担が大きくなること、説明が必ずしも丁寧に行われなかったことなどの問題が指摘されてきましたので、事務負担の軽減への支援や、丁寧に説明を行うことを求めておきます。

以上の立場から、議案第159号、議案第163号、議案第164号、議案第170号、議案第181号、議案第183号、請願第7号については反対、請願第4号その他の議案、諮問、請願、報告については、賛成することを表明して討論を終わります。