憲法視点から差別禁止条例案を検討~石川議員が代表質問
12月4日の川崎市議会第5回定例会で、日本共産党の石川建二議員(宮前区)が代表質問し、川崎しんゆり映画祭・上映中止問題や「差別のない人権尊重のまちづくり条例案」(差別禁止条例案)、台風19号による浸水被害の原因と対策などについてただしました。
石川議員は、川崎しんゆり映画祭・上映中止問題について、川崎市が「懸念を伝えた」ことから主催者側は「予算を握る市との関係悪化は、映画祭の存続にかかわる」という認識を持ち中止を決断したと述べ、こういう市の対応は、表現の自由、検閲の禁止を侵害することにつながるものであり、許されないと指摘しました。
「差別のない人権尊重のまちづくり条例案」について、障がい者やLGBTの皆さんの置かれている実態に、禁止規定を設けるべき立法事実があることを認め、「合理的配慮を欠くことの禁止」、「アウティングの禁止」を盛り込んだ差別禁止規定を設けるよう求めました。またヘイトスピーチ規制部分について、「広範な市民の皆さんの運動が今回の条例案の提案に結び付いたことを心から歓迎する」とのべ、憲法21条「表現の自由」、憲法31条「適正手続きの保障」の観点から質問しました。
台風被害について、排水樋管周辺や河川関係の浸水被害の原因と対策、土砂災害、避難所、生活の再建について質問しました。
福田市長は、映画祭での上映中止は「主催者が決定した」こととしてあくまでも主催者側の問題としました。
石川議員の質問原稿はつぎの通りです(議事録ではありません)
代表質問
私は、日本共産党を代表して2019年第5回定例会に提案された諸議案、ならびに市政一般について質問を行ないます。
市長の政治姿勢についてです。
川崎しんゆり映画祭・上映中止問題について、市長に伺います。
10月27日に開催した「川崎しんゆり映画祭」で慰安婦問題を扱った映画「主戦場」の上映が予定されながら、いったん中止されました。この映画祭の共催者が川崎市となっており、市は開催費用約1300万円のうち約600万円を負担しています。主催者は、7月下旬に「主戦場」を上映する方針を決め、共催者である川崎市に報告。8月5日、一部の出演者が上映禁止を求める訴訟を起こしていることから、市の担当者が主催者に上映について懸念を伝えたことにより、いったん、上映見送りを決定。しかし、経緯を知った映画関係者から「表現の自由への公権力の介入だ」などの批判が相次ぎ、主催者は一転して、最終日の11月4日に上映したという問題です。
上映を中止した理由についてです。市から主催者に「裁判になっているようなものを上映するのはどうか」という懸念が伝えられたことが、中止判断の一つになったということです。しかし、これを理由に中止をすれば、裁判をすれば公の場で表現活動、上映ができないことになってしまうなど萎縮効果、表現の自由を侵害することにつながります。裁判になっていることを中止理由にすべきではありません。川崎市は、こうした懸念を伝えるのではなく、懸念や不安があれば、共催者としてそれを払しょくする立場に立つべきです。
「市が懸念を伝えた」という行為自体が中止理由になっています。市長は「この市の対応は適切だった」と述べています。しかし、「予算を負担する市の懸念は圧力だ」という声や「行政が懸念を伝えること自体問題。目に見えない形で事前検閲が行われたに等しい」という批判が上がっています。川崎市当局からの懸念について、主催者側は「市からの懸念はメールや文書などの証拠が残らない形で」「しかし、かなりの強さをもって」伝えられたと話しています。また「予算のおよそ半分を負担している川崎市との関係悪化は映画祭の存続にかかわる」という認識を持ったということです。このように予算を負担している市からの懸念は、予算にかかわる圧力となっています。だからこそ、市から懸念を伝えること自体が、「圧力になった」「検閲だ」などの批判が上がっているのです。市長は「表現の自由とは全く関係のない話だ」と述べています。しかし、憲法21条は「一切の表現の自由は、これを保障する。検閲はこれをしてはならない」としており、表現の自由と検閲の禁止は一体のものです。市が懸念を伝えるという行為が主催者側にとって予算にかかわる圧力と認識されれば、この行為は表現の自由、検閲の禁止を侵すことにつながり、許されません。懸念を伝えることが、主催者に対する制限や圧力につながるという認識はなかったのか、伺います。
朝鮮学園付属幼稚園への「幼保無償化」の対応などについてです。
10月から開始された、幼児教育・保育の「無償化」は、ベビーシッターや一時預かりなども対象とされている一方、朝鮮学校附属幼稚園など外国人学校や一部の幼稚園類似施設は対象外となっています。こうした状況に対し一部の自治体では、独自に外国人学校の利用者に対し「幼保無償化」と同様の給付を行う救済措置をとっているとのことです。
外国人学校も「幼保無償化」の対象とするよう、川崎市から国に働きかけるべきですが、市長に伺います。また本市も、外国人学校と幼稚園類似施設の利用者に対し「無償化」に準ずる措置を取るべきです。市長に伺います。
私たちは2校あるうちの川崎朝鮮初級学校を視察し実態を伺いました。2013年度、神奈川県は朝鮮学校への経常費補助を打ち切りました。同年、川崎市が支出していた840万円の補助金について市長は就任早々に執行停止しました。経常費補助などが打ち切られたもとで校舎の老朽化がすすみ、4階から3階にまで雨漏りしているのに、保護者による応急補修しかできない状況です。「無償化」からの除外でさらに生徒が減ることを危惧する思いも伺いました。保護者の皆さんからは「『すべての子どもの成長を支援する』と言いながら、等しく納税もしているのに、なぜ無償化されないのか」などの声が寄せられているとのことです。
市内の朝鮮学校はいずれも市の公教育の中から始まりました。1979年に外国人が教育を受ける権利などをうたった国際人権規約を政府が批准し、翌年から川崎市は朝鮮学校への補助金を交付。1986年に本市は『外国人教育基本方針』を制定、2000年には『子どもの権利に関する条例』で、国籍、民族、言語等において少数の立場の子どもが、自分の文化等を享受し、学習し、または表現することが尊重されることを宣言して、学習権保障の取り組みがすすめられてきました。
本市はこのように、外国人の民族固有の言葉や文化を含めた学習権を保障する世界の人権保障の当然の到達点をふまえて、多文化共生の教育をすすめてきたはずです。その立場で、県に対しても経常費補助をはじめとする補助を再開するよう要請するとともに、市が従来行ってきた補助も復活すべきです。市長に伺います。
川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例案についてです。
川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例案が提案されました。
本条例案は、第二章において、不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進を掲げ、第5条で、「人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする「不当な差別的取り扱いをしてはならない」と規定。第三章以降は、ヘイトスピーチ規制に関して規定しています。以下、条文に沿って質問していきます。
第二章の人権全般に関しての規制についてです。
第5条は「不当な差別」の禁止ではなく、不当な「差別的取り扱い」の禁止と規定されています。
私たちは素案が発表されてから、当事者の皆さんの意見をお聴きするとともに、総務省、法務省、憲法学者や弁護士など法律の専門家から意見を伺ってきました。
9月議会でも議論したように、障害者分野では、すでに障害者基本法、障害者差別解消法があり、障害者基本法4条は「何人も障害者に対して障害を理由として差別すること」「その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」とされ、障害者差別解消法8条は「障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取り扱い」を禁止し、違反者には過料という罰則が課せられます(12条、26条)。
2006年に採択され日本も署名した「障がい者権利条約」では、障害に基づく差別とは、「合理的配慮の否定を含むあらゆる形態の差別」とされ、これを受けた禁止条例は全国30余りにものぼっています。全国で初めて制定した千葉県では、合理的配慮を欠くことを『差別』と規定しました。
障がい者差別解消法があるもとで条例が必要な理由として、九州弁護士会連合会は2017年10月「地方自治体に障害者差別禁止条例の制定を求める宣言」を行ない、条例を定める意義として、障がい者に対する差別を許さないとする地方自治体の強い意思を発信する効果があるとし、条例を定める必要性として、障がいのある人が障がいのない人と平等に暮らせる地域づくりを目指す基盤は地方自治体にあること、障がいのある人の権利を救済するシステムは地域の実情にあったより実効性のあるものでなければならないこと、障がい者差別解消法の付帯決議で、法で規定されていない事項を上乗せ・横出し的に定めることが容認され、自治体が地方の実情に応じた施策を定めることができるとされたことをあげています。9月議会で答弁されたように「既存の法の適用は阻害されない」という姿勢ではなく、川崎で障がい者差別を許さない内容の条例にすることが求められているのです。
そもそも、憲法第14条は「人種、信条、社会的身分により、……差別されない」と明確に宣言しているところです。先般、ご意見をお聴きした憲法学者は、「今回提案された人権条例案の不当な差別規定はまさに憲法第14条の地方政治の場あるいは公共団体との関係においてより具体化する規定とみることができる」とし、「現に行われている不当な差別行為に対しては、より実効的な禁止施策が採用されてもよいと考えるが、市民と事業者の努力義務および罰則なしの不当な差別的取扱いの禁止にとどまっている」「しかし、適正手続を踏まえた規制は容認されるのではないか」と指摘しておられました。実際、「国立市人権を尊重し多様性を認め合う平和なまちづくり基本条例」では、第3条において「何人も、人種、皮膚の色、民族、国籍、性別、性的指向、性自認、しょうがい…その他を理由とした差別を行なってはならない」と不当な差別禁止を明確に掲げています。
この間私たちがお聞きしてきた障がい者のみなさんの要望は、川崎市でも差別禁止、合理的配慮を掲げた条例を制定してほしいということでした。素案に対するパブコメにもこうした意見が寄せられています。LGBT、性的マイノリティの方からも、パブコメでも意見が出されていたように、明確な差別禁止規定を設けてほしいとの強い要望があります。LGBT法連合会-性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者に対する法整備のための全国連合会の案でも、第3条で明確な差別禁止を掲げています。実際、国立市は、「アウティングの禁止」を盛り込んだ条例も制定しています。「不当な差別的『取り扱い』」には含まれない、「合理的配慮を欠くことの禁止」「性的指向・性自認を他者が本人の意思に反して勝手に公表すること―アウティングの禁止」を盛り込んだ、明確な「差別禁止規定」を設けてほしい、当事者の方々のこの要望に応えないのでは、人権全般条例の存在意義が問われることになりませんか。
パブコメのときの論議では、禁止規定を設けない理由として「表現の自由」を上げましたが、以上の論議、憲法学者、国立市の条例などからしても、「表現の自由」が差別禁止規定を設けない理由にはならないと考えますが、伺います。
禁止規定を設けてほしいというパブコメの意見に対して、パブコメの審議の際、市は禁止規定を置く「立法事実はない」との答弁でした。しかし、川崎市では、1977年の市バス乗車拒否事件があった後も障がい者に対する差別は長く障がい者の皆さんを苦しめてきました。そうした差別の中で、相模原やまゆり園事件のように命まで奪われる事態まで起きています。LGBTについても、衆院議員の「生産性がない」などの差別発言など差別・偏見で傷つけられる事態が後を絶ちません。一橋大学法科大学院生の事件のように、アウティングされることによって命を絶つ事例も起きています。
私たちは多くの障がい者団体の皆さんから要望をお聞きしてきました。千葉県は条例制定にあたって、草案の検討過程で約1年をかけて関係団体などからヒアリングを行い、県内30か所以上でタウンミーティングを開催してきたとのことです。新潟県は当事者の皆さんの意見を2年間かけてお聴きしてきたとのことです。
また、LGBT当事者のみなさんからもご意見をお聴きしてきました。LGBT当事者の方たちは差別に傷付き、市内で私たちに会う時にも細心の注意を払われていましたが、勇気を出して会ってくださり、要望を寄せてくださいました。
条例制定にあたって、障がい者の皆さんやLGBT当事者の皆さんからの丁寧な聞き取りを行っていれば、川崎で差別禁止規定を設ける「立法事実」がないとは到底いえないはずです。川崎市でも禁止規定を設ける「立法事実」が存在することを認めるべきですが、伺います。
また、当事者の皆さん、憲法学者、弁護士、総務省・法務省などの意見を真摯に受け止め、本条例においても、明確に「差別禁止」を規定すべきだと考えますが、伺います。
「性別」「年齢」による不当な差別についてですが、「こどもの権利条例」「男女平等かわさき条例」などとの関係がどうなるのか、という点についてです。
「男女平等かわさき条例」には、「性別による差別的取り扱い」のみならず、「性的な言動により、相手の生活の環境を害する行為」をも禁止しています。人権条例案には「不当な」「差別的取り扱い」しか規定されていないことから、9月議会でその関係をただしたのに対し、骨子案の段階で明言されていた「上位法」ではないと否定。事前の調査で、それでは前法・後法の関係なのかと聞いたところ、「しいて言えば一般法・特別法の関係」と答えましたが、翌日、それも撤回されました。
そこで、改めて伺います。すでにある条例との関係はどのようなものなのか、明確にお答えください。
第3章以降の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進、いわゆるヘイトスピーチ規制部分についてです。
2016年5月、差別を受けた当事者のみなさんをはじめ、広範な市民や各政党・会派も超党派で反対の声を上げるなど、世論の広がりを受けて「ヘイトスピーチ解消法」が成立したのに、その後も川崎でヘイトスピーチが繰り返されています。こうした事態のもとで、当事者の皆さんの思いはいかばかりだったでしょうか。その思いに心を寄せつつ、私たちはヘイトスピーチは許さないという立場で富士見公園のときも平和公園のときも川崎駅でも毎回、あらゆる場に立ってヘイトスピーチ反対の声をあげてきました。議会の中でもガイドラインの迷惑要件を外すことなどを求めてきました。私たちは、この間の当事者の皆さんをはじめ広範な市民の皆さんの運動が、今回の条例案の提案に結びついたことを心から歓迎するものです。
さて、本規定の検討に際しては、憲法21条「表現の自由」、憲法31条「適正手続の保障」の観点からの検討が必要です。憲法による表現の自由は「自己実現」と「自己統治」にとって不可欠な機能を担うことから、人権の体系上「優越的地位」にあり、その規制立法は厳格な基準に基づく審査、すなわち、①「やむにやまれぬ」理由に基づく②「必要最小限度の制限」であることが要求されます。規定が漠然・不明確な場合は違憲とされ(「明確性の基準」「漠然性ゆえに違憲無効」の理論」)、また、過度に広汎な規制の場合も違憲とされます(「過度の広汎性ゆえに違憲無効」の法理)。さらに刑罰を規定する場合は③規制対象となる行為とそれに違反した場合に科される罰則との間に均衡が図られていることが憲法31条の罪刑法定主義の観点から必要です。本条例もこうした観点から検討されなければなりません。
私たちは「罰則もありうる」が、罪刑法定主義から要請される構成要件の明確化をはかるという立場で臨んできました。そして、6月の文教委員会、9月議会で行ってきた議論の結果、私たちが指摘した「3回の違反行為の内容」「特定の国もしくは地域」「あおり」「侮蔑」などの用語、「手段」などについてそれぞれ、より明確化または限定化がされました。そのうえで何点か質問させていただきます。
勧告・命令・公表についてです。
私たちも求めた通り、1回目の違反・勧告の後、「公表・罰則」の前に「差別防止等審査会」の意見を聴くという項目も加わりました。しかし、「勧告」「命令」の前に、『緊急を要する場合で「差別防止対策等審査会」の意見を聴くいとまがないときはこの限りではない』との項目が加わりました。差別防止対策等審査会の意見を聞くとした趣旨は、憲法の保障する表現の自由を不当に侵害しないため、という答弁でした。
しかし、ヘイトスピーチが行われる場合は、『緊急を要する場合で「差別防止対策等審査会」の意見を聴くいとまがないとき』と判断される場合が多いのではないかと考えられます。したがって、この要件が加わることにより、「差別防止対策等審査会」の意見を聴くことが原則だったのに、例外事例と判断される場合が多くなり、原則と例外が事実上逆転することになりはしないか危惧するものです。
そこで伺います。素案でもパブコメでも出ていなかったこの項目が入ったのはどういう理由か、また、「緊急を要する場合」とはどういう場合を想定しているのか、「緊急の場合」とは誰が判断するのか、伺います。
保護法益についてです。
「差別を受けている者」のどのような具体的利益を保護するのか、すなわち、本条例の保護法益は何かとの問いに、パブコメの回答では「居住する地域において平穏に生活する権利」と答え、さらに文教委員会では「人格権」とも答えています。誰の権利かとの問いに、「集団を構成する自然人」とも答えています。「集団」なのか、集団を構成する「自然人」なのか、が問題です。人格権とは個人が持っている権利であり、平穏に生活する「権利」も個人が対象です。「集団を構成する自然人」という概念の重きが「集団」にあるとすれば、保護法益は個人的法益を超えた、いわば「社会的法益」ということになりませんか。刑法で社会的法益として保護法益とされているのは、騒乱罪、放火罪などの「公共の平穏」に対する罪、有価証券偽造罪などの「取引の平穏」に対する罪、などがあります。本条例の保護法益はこれらのどれに該当するものなのか、伺います。
23条の告発についてです。
23条で「市長の命令に違反したものは50万円以下の罰金に処する」とされます。
この告発について、パブコメでは「市長が行う」とありますが、刑事訴訟法239条2項では「官吏又は公吏はその職務を行うことにより、犯罪があると思料するときは告発しなければならない」とあり、義務的です。他方、1項は「何人でも犯罪があると思料するときは告発できる」とあり、誰でも告発できることになるとも考えられますが、こうした点を明確にするためにも条文に規定すべきだと思いますが、伺います。
教職員の働き方についてです。
現在開かれている国会で、教職員給与特別措置法の一部改正する法律案が審議されています。これは公立学校の教員に「1年単位の変形労働制」を導入するというもので、教員の勤務時間を「繁忙期」と「閑散期」にわけるものです。「繁忙期」に1日10時間労働まで可能とし「閑散期」と合わせ平均で1日あたり8時間に収めるというものです。
そもそも人間の生理は「繁忙期」の疲労を「閑散期」で回復できるようにはなっていません。変形労働時間制は人間の生理にあった「8時間労働」の原則を破り、今でも深刻な長時間労働を合法化し、残業代も払わず放置する制度です。
「繁忙期」の超過勤務時間分は「閑散期」の夏休みに取るということですが、閑散期でも、こどもの夏休み中も連日のように業務があり、年次休暇の消化すらできないのが現状です。教員の方たちからは、「夏休み中も研修が多く、センター研修、免許更新制、コンピュータのプログラミング学習など連日のように業務がある」などの声が寄せられています。このように閑散期でも忙しいのが現状で、とても閑散期に繁忙期の超過勤務時間をまとめて取ることはできません。
この法案のもう一つの重大な問題は、都道府県・政令市が条例によって導入できるとしていることです。現行法では、制度導入に職場ごとの過半数の労働者の同意が必要です。しかし、法案では各自治体の条例で定めるとされ、現場の教員の意思が無視され、労働者の合意なく、1日8時間を超えた労働を強制できることにつながります。
以上のように、変形労働制は、長時間労働を解決するどころか、人間の生理に反し、繁忙期の勤務をさらに忙しくし、労働者の合意なく長時間労働を強制するものです。川崎市の教員に「1年単位の変形労働制」をもちこむべきではないと思いますが、市長の見解を伺います。
現場の先生方の長時間労働の実態は深刻です。私たちは、この間、36校の学校を訪問し、小・中学校の校長と懇談を重ね、教員の働き方の実態をお聞きしてきました。小学校の校長は「教員は毎日5時間6時間の授業があり、休み時間も子どもたちとの接触でほとんど職員室には帰れない」「勤務時間内に授業準備もできず、午後10時まで残って授業準備する人もいる」と話してくださいました。現在でも長時間労働の実態は深刻なのに、それをさらに助長する「1年単位の変形労働時間制」は解決方法にならないことは明らかです。長時間労働の解決に必要なのは、教員の増員や業務の削減ではないでしょうか、伺います。
障がい者施策についてです。
障がい者、とりわけ重度の障がいを持つ方が、親から自立して自分の望むところに住み、地域社会で暮らしていくための施策について伺います。
はじめに、身体障がい者のグループホームについてです。
本市における身体障がい者のグループホームは3事業所5施設に止まり、なかなか増えません。そんななか、今年2月に宮前区で知的障がいと肢体の重度重複障がい者を受け入れるグループホームが新設されました。本市では肢体不自由者対応の新設施設にはスロープやエレベーターの設置などバリアフリー化の工事費を含む2,000万円が補助されます。しかしバスルームやトイレなど、共有スペースに設置するリフターは補助の適用外で、建設費として市の補助を受けてもなお、自己資金が2,000万円近く必要になったとのことです。この施設の場合は所有していた土地を利用しましたが、土地の確保からとなると、さらに施設建設のハードルは上がります。身体障がい者向けグループホームでは、建設費補助のさらなる増額が必要と思いますが、見解を伺います。
また、人員配置の課題もあります。国の基準では、支援区分6・定員5名に該当する施設では、管理者、サービス管理責任者のほか、世話人1名、生活支援員2名となっています。しかし、重複障がい者対象の前述の施設では利用者の入浴も職員一人では難しく、突然けいれんが起きるなど目が離せないため、利用者1名に2名の職員が必要とのことです。重度障がい者支援や夜間勤務などに対する市の加算を得ても、十分な人員確保ができず、ボランティアでやりくりをしているとのことでした。利用者が安心して生活できるサービスを提供するには、市の加算を拡充すべきと考えますが、見解を伺います。
次に、重度障がい者が地域で一人暮らしをするための支援についてです。
他傷行為など強度行動障害があるなどの重度障がい者は、グループホームでの集団生活が困難な場合があります。こうした方が地域で自立して生活するためには、24時間付き添う介護者が必要です。2014年から「重度訪問介護」の対象が行動障がいを伴う知的障がい者や精神障がい者にも拡大されました。東京都多摩地域では、この制度を活用して強度行動障がいを持つ自閉症の方がヘルパーの介護を受けながら、アパートで自立生活をしている事例があります。通所施設で過ごす時間以外、自宅アパートでの食事、入浴、排せつなど生活全般にわたり24時間体制の介護が実現されています。本市では、重度障がい者が地域での一人暮らしを望んだ場合、どんな支援を行っているのか伺います。また、その事例がない場合、何が課題となっているのか伺います。
特別養護老人ホーム増設についてです。
2019年10月1日現在、特養ホーム待機者は2602人。4月の2570人からさらに増えています。有料老人ホームの設置数・定員数は4月からの半年間で13施設・定員434人増えています。
民間介護事業所の調査によると有料老人ホームの月額料金の相場は15万円から35万円。一方、特養ホームは6万円から15万円です。有料老人ホームが増えても、特養ホームの待機者が減少しない理由の一つには、料金の問題があるのではないのでしょうか。今、国民年金のみを受給する方の平均受給額は月5.1万円です。国民年金の方が要介護3以上になった時に入居できる施設は特養ホームしかありません。
川崎区にお住いの70代の方から「認知症で介護度5の101歳の母が特養ホームに入れずに2年待っている。子どもたちも70代、80代と高齢になり、それぞれ病気もあり母の介護ができない。一日も早く特養ホームに入りたい」と切実な声を伺いました。介護度5の待機者が全市で550人もいる異常な事態です。にもかかわらず、残り1年となる第7期かわさきいきいき長寿プランではあと230床しか計画されていません。保険料は取られるのに、介護サービスを利用できないのでは何のための介護制度かわかりません。せめて介護度5の方が早急に入れるよう、緊急増設すべきです。伺います。
国民健康保険の被保険者資格証明書、短期被保険者証についてです。
本市の昨年5月時点の国保料滞納世帯に交付した資格証は4,978世帯、短期証は3,800世帯です。短期証は最長期間6ヵ月と短く、特別な理由が無いと判断され保険料を1年間以上滞納している場合は資格証明書が交付されます。資格証世帯はいったん窓口で医療費全額を支払わなければなりません。経済的困窮が理由で保険料が払えない状況ですから医療費負担が重く治療をためらい、重症化を招くことになります。
横浜市は、国保料滞納の大半は意図的ではなく、厚労省通達などに基づく特別な事情があると判断して2016年の資格証交付とりやめに続き、今年8月から短期証の交付をやめ、通常の「被保険者証」の交付としました。本市でも横浜市のように、厚労省通達に基づく「特別な事情」と判断し資格証や短期証の交付は行わない対応とすべきです、伺います。
国保料滞納による差押えについてです。
2018年度の差押え件数は5,215件もありました。滞納の背景に失業や生活苦、多重債務の問題が隠れています。寄添い型で生活再建と自立支援を最優先に行う必要がありますが、最低限度の生活費、児童手当などさえ差押えるなど過度な執行が行われている例があります。本市ではこのような対応は行っていないのか、伺います。
国民健康保険料軽減及び子どもの均等割免除についてです。
国保だけに導入されている所得割の他に支払う均等割は、組合健保や協会けんぽなどには無い、無収入者にも負担を求め、家族が増えるほど負担を増やす構造的問題があり無くすよう求めてきました。同じ所得でも国保加入者は夫婦、小学生2人世帯で協会けんぽの2倍の保険料となることはこれまでも指摘してきた通りです。地方6団体も国保財政の基盤強化の観点から1兆円の公費投入を行い協会けんぽ並の保険料に引下げることを求めています。本市もあらゆる機会を通じて国庫負担の引上げを要望していくとしています。
本市では均等割部分の保険料は141億円と試算されています。均等割による高すぎる国保料を引下げるには、法定外繰り入れの継続と増額を行うべきです、伺います。
また、19歳未満の子ども全員の均等割を免除した場合の予算は10億5,700万円、2人目以降の免除は3億7,400万円、3人目以降の免除は8,400万円と試算されています。子どもの均等割りを減免する自治体がひろがっています。子育て支援、少子化対策としてせめて子どもの均等割免除に踏み出すべきです、伺います。
公立・公的病院再編についてです。
厚生労働省が9月に公立・公的病院の再編・統合に向けた議論を促すとして全国424の病院名を発表しました。この「2025年に向けて役割・機能の再検証を行うことが必要な公立・公的医療機関」の選定理由は2つあり「A、公的医療機関が担うべき政策医療(がん、救急、小児等)の診療実績が少ない」「B、他の病院と類似かつ近接している」とのことです。
県内では、役割・機能の再検証の対象となったとして10の病院がリストにのりました。川崎市では、市立井田病院が該当しています。井田病院は1949年の開設から70年間、川崎の市立病院として、地域住民の医療の要望に応える事を第一の運営方針に掲げて、川崎の地域医療を支えてきました。ベッド数は383床あり、市内唯一の結核病棟を有する病院です。また、がん診療拠点病院として緩和ケアも行っています。地域包括ケア病棟もあり、地域に欠かせない医療の役割を担っています。川崎地域医療構想調整会議にて、他の医療機関に機能統合することの是非について協議し、2020年9月までに合意を得るとしています。最終的な判断は設置主体である川崎市がを行うということですから、井田病院の今の医療体制を維持すべきです。伺います。
正規労働者の雇用を拡大する対策についてです。
2018年度、川崎市は、ハローワーク川崎北と共催で、小田急線沿線を就業場所とする企業を募り、沿線在住求職者の正社員雇用を促進するための、面接会を実施し、本市は、「会場の提供」、「市施設における市民向け広報」や「当日の運営」を分担しました。本市は、「これまでの本市主催の面接会では、対象としていなかった幅広い年齢層の求職者に対し、市内及び近隣地域の企業との出会いの場を提供することができた」とコメントされています。
また、ハローワーク川崎では、保育士人材確保対策のため共同事業としてセミナー及び面接会をパッケージにして実施し、本市は、「最新の保育士を取り巻く状況」及び「市独自の保育士就職支援制度」についての説明を行いました。川崎市は、「市の保育士支援策を直接PRできることは非常に効果的であると考えている」と、コメントしています。改めて、実施するにいたった経過と評価、今後の取り組みについて、伺います。
私たちは、正規雇用に転換させる独自策を図るためにも、市内2カ所の公共職業安定所=ハローワークと連携を強め、市内中小企業の実態の情報共有をして、神奈川労働局と雇用対策協定を締結すべきことを求めてきました。政令市では10自治体。県内では、神奈川県、横浜市、小田原市に続き、2019年3月に、横須賀市も締結しました。横須賀市は、労働局だけでなく商工会議所と3者で結んでいるのが特徴です。協定書には、「それぞれの強みを集約し、就労支援策の研究準備段階からフォローアップまでの充実をはかる」「作業の効率化や課題解決に向けた効果的取り組みを実施させる」としています。連携事項については「若者」「高齢者」「女性」「障がい者」「生活保護受給者及び生活困窮者」「その他就労が困難な市民」を対象にしていることから、経済部企画課がとりまとめて全体を把握しています。横須賀市の担当者は、お互いの利点が生かせて様々な事業施策につなげていく」と、期待を表明されていました。
2013年に締結した横浜市では、年に2回の定期的な会議をもち、7月に開く会議では年次計画、1月の会議では、予算が伴う次年度の事業について、確認する場となっているとのことです。6年も続けていると、課題が共有化され、近年では、雇用が集まりにくい建設業の就労面接会を合同で6~7回実施し、正規雇用にもつなげているとのことです。
私たちは、先日、神奈川労働局を訪問し、雇用対策協定等について伺ってきました。雇用協定の意義とメリットについて各自治体にも説明しているとのことでした。協定を結ぶことによって、国の支援メニューなども有効に活用してもらうことができる。各局全体の雇用の現状を把握し、系統的に事業推進につなげてもらいたいとのことでした。9月議会で市長は、「労働団体や雇用主団体、神奈川労働局等の行政機関と日ごろから密な意見交換」を行っているとし、協定の必要性を認めませんでした。しかし、市長が労働局との間で協定を結ぶということは連携が強化され、正規雇用の拡大、人材不足や後継者対策など、実効性をはかる確かな保障になると考えますが、市長の見解を伺います。
防災対策についてです。
台風19号による被害状況は、11月27日現在で、亡くなった方1名、家屋被害は全壊38戸、半壊829戸、一部破損140戸、床上浸水1140戸、床下浸水368戸の合計2515戸、非住家被害が55戸と甚大なものでした。多摩川が氾濫していなかったにもかかわらず、浸水被害面積は全市で合わせて110haを超え、土砂崩れも7か所ありました。
初めに浸水被害の原因と対策についてうかがいます。
台風19号による本市における浸水被害は、8か所で起きました。そのうち5か所は、上下水道局が管理する排水樋管周辺で、あとの3か所は、河川の周辺です。
まず、排水樋管周辺地域についてです。
山王、宮内、諏訪、二子、宇奈根の5か所の排水樋管付近の被害は水だけでなく土砂が流れ込み、この土砂によって住民の生活再建や中小企業、福祉施設の事業復旧の見通しが全く立たない等、甚大な被害が出ています。
原因は土砂の堆積状況から、全て多摩川の逆流による浸水と発表されています。該当する被災地で行われた住民説明会では、住民から「多摩川からの逆流を防げば泥はなく、雨水による被害だけですんだはず、なぜ逆流が始まった時点で樋管ゲートを閉めなかったのか」という声が多く寄せられています。実際に山王配水樋管のゲートの閉鎖を開始したのは22時52分、他の4か所に関してはゲート閉鎖の判断にも至っていません。住民の方々の指摘の通り、泥の侵入だけでも防ぐため、樋管ゲートを閉鎖すべきだったのではないのか、伺います。
更に山王地域での住民説明会では「この水害で家の修理に800万円かかる。補助金も僅かだし、直してまた浸水したら誰が責任を取るのか、減災ではなく、二度と浸水被害がおきない対策をしてほしい」との声もだされました。市内にある17の樋管のうち、ポンプ場から強制排出している樋管は10か所、排出ポンプの付いていない樋管は7か所、その7か所のうち5か所で逆流が発生しています。鶴見川は台風19号通過時、多摩川より3時間前に氾濫注意情報が出されましたが水害は発生していません。横浜市の下水を管理している北部第一水再生センターに確認したところ、鶴見川に直接雨水を放流している雨水管には全て排水ポンプが設置されているとのことです。樋管ゲートを閉鎖し、多摩川の水位に関係なく内陸の雨水を排出できるポンプを設置していれば、今回の排水樋管周辺の水害を防ぐことができたのではないでしょうか。すべての樋管にポンプをつけるべきと思いますが、伺います。
河川関係の浸水被害についてです。
川崎区港町の河港水門は、多摩川の堤防から1メートルほど低くなっており、水門のゲートの上部から水が入ったとのことです。このゲートをふさいでおけば、多摩川の水が入り込むことを防げたはずです。ゲートをふさぐべきですが伺います。
高津区の多摩川と平瀬川の合流地点の浸水被害は12年前にも起こりました。その時に平瀬川増水時の対応マニュアルを作成し、住民を含めた危機管理体制を作り、今回もそのとおりに実施したが、水が上がってきてしまったとのことです。これは、平瀬川の堤防が、多摩川より低いために平瀬川が越水したからとみられます。平瀬川の堤防のかさ上げについて、県と連携して協議・検討すべきと思いますが、伺います。
多摩区の三沢川周辺については、三沢川があふれたのではなく、三沢川の水位が上昇し用水路の水が流入しづらくなって用水路からあふれたと想定されています。議会では浸水想定区域は5.2haとの説明でしたが、「こんなに狭くない」と指摘し、見直していただいたところ約9.8haはあることがわかりました。実態の把握も不十分なのではないかと、思わざるを得ません。現地調査の中で、あふれた水は用水路を流下してきた水なのか、三沢川から逆流してきたのか、検証しているのか伺います。今年や来年、用水路の氾濫を防ぐための対策はどう考えているのか伺います。
住民の皆さんは「これが繰り返されたらと思うと不安で仕方がない」と言っておられます。今回の浸水被害に共通する原因は、多摩川の水位が上昇したことによって樋管や河川から流入しなくなったことです。多摩川の流量を抜本的に増やす必要があります。来年の梅雨や台風の時期に備え、この冬に多摩川の川底を浚渫するよう、直ちに国に要望すべきですが、伺います。
土砂災害についてです。
市内で起きた土砂崩れ7か所のうち、6か所が土砂災害警戒区域内でした。たまたま人的被害がなかったにすぎません。土砂災害を未然に防止するために、土砂災害警戒区域で宅地防災工事助成金制度の対象となりうる崖については、積極的にこの制度を紹介し、改善を推進すべきと思いますが、伺います。この制度は、宅地防災工事の場合、補助額が工事費用の3分の1かつ上限300万円となっているため、必ず3分の2の自己負担が生じます。がけ地を直すのですから安い工事ではありません。古い住宅地では住民も高齢化しており自己負担が重すぎます。補助率と上限額を引き上げるべきと思いますが、伺います。
避難所についてです。
台風19号が直撃した10月12日は、土砂災害警戒区域には避難勧告、洪水浸水想定区域のすべてには避難指示が出されました。今年3月の内閣府のガイドラインの改定により、避難勧告も避難指示もレベル4として「速やかに全員が避難する」とされ、情報を受け取った市民は避難を始めました。158か所の避難所が開設され、最高時で3万3150人の市民が避難しました。1000人を超える避難者があったのが3か所、500人を超えた避難所が15か所あったとされています。3階以上の校舎の廊下に誘導されたところも、体育館も、座るところもなくなるなどたいへんな混雑で、多摩区では避難者が入りきれないために、当初は開設していなかった中学校2校と多摩市民館大ホールをあとから開設し、市民館には市バスで移送しました。
開設しない避難所が全市で22か所ありましたが、避難指示を出したにもかかわらず、開設しない避難所があったのはなぜなのか、伺います。
地震災害の時は地域の避難所運営会議が避難所の運営を行いますが、風水害の時は原則として行政職員が開設も運営も行うということになっているとのことです。今回、避難者が殺到し、区役所職員や教員の方が2,3人でてんてこまいをしていました。そのため、避難者の名簿を作ることもできず、正確な避難者数を把握することもできていません。避難所の運営にもたいへんな苦労がありました。風水害時も避難所の開設、運営は避難所運営会議と連携すべきですが、伺います。
避難所が遠いために雨の中を避難できなかった方も多く、より身近な場所に避難所が必要です。風水害の場合、垂直避難も有効であることから、洪水浸水想定区域全域で「洪水時避難ビル」を指定するべきです。高層階を持つ市営住宅などの公共施設は、空室や風雨をしのげるロビーなどを利用できるよう要綱を作り、指定して広報するとともに、4階以上の建物を持つ民間企業やマンションなどと協定を結び協力を求めるべきです。伺います。
避難指示が出ていることを知らなかったという高齢者が多く、情報の伝達方法に課題があることが明らかになっています。インターネットやスマホがないとわからないというのでは、伝えたことになりません。かねてより求めているように、自動で電源が入る戸別受信機を廉価で各戸に配布すべきです。伺います。
生活の再建についてです。
被災者生活再建支援法に基づき、居住する住宅が全壊するなどで生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対し、支援金を支給し、生活の再建を支援する「被災者生活再建支援制度」が適用されることになりましたが、支給対象は全壊か半壊、大規模半壊のみで、被災された方の約3分の2は対象になりません。また、「全壊」と認定された家屋でも複数人が居住する世帯の「建設・購入」の場合で300万円と、戸建ての建設や購入には全く足りない額となっています。ある「一部破損」と判定された家では、壁のなかの断熱材が水を吸ってカビが生え始め、1階のすべての壁をはがしてリフォームをしなければならず、4百万円かかりますが、行政からの支援は応急修理制度の30万円のみで、「これではどうしようもない」と言われました。最近新築の家を買ったばかりの40代のご夫婦は「中学生と小学生の子どもがいて、ローンを抱え、蓄えもないのに、リフォームに数百万円かかる」とのことです。国に対し、被災者生活再建支援制度の額の引き上げと対象の拡大を求めるべきですが、伺います。
(仮称)鷺沼駅前地区第1種市街地再開発事業についてです。
8月13日から9月26日まで環境影響評価の方法書の縦覧が行われました。その中で、初めて146m、37階建てと92m20階建ての超高層マンション2棟が駅前に建設される計画であることがわかりました。しかし、方法書の中には、超高層マンションの側面図は示されていますが、その完成予想図は示されず、どのような建物になるのか、住民にはわかりません。環境アセスメントという建築に至る具体的な作業が始まった今、事業者は、どのような建物の構想なのか、住民に説明する必要があります。しかし、事業者からは、「条例に沿って説明会を行う」というだけで、義務づけられた説明会以外は行わないという姿勢です。この姿勢に対し、10月23日に行われた環境影響評価審議会において、会長から「住民の方々に対して丁寧にもっと説明するように」との要請があったと伺いましたが、どのように発言されたのか、伺います。
住民説明会の開催要望に対し、「方法書に係わる市民意見の概要と事業者の見解」で、事業者は「環境評価準備書縦覧中に住民説明する」と答え、あくまでも、条例上義務のある「説明会」しか住民説明会を開かないとしています。この姿勢は、この審議会後も変わりありませんでした。審議会の内容を受けて、11月14日、住民の皆さんが、準備組合に対し「住民への説明会」を求めた際、事業者は「市の見解では、説明会が必要なのは、容積率緩和があった場合と公共団体の再開発の場合だ」と発言し、説明会の開催要求を拒んだとのことです。『義務がなければ住民が求めていても説明会を行わない』とする姿勢は、審議会の「丁寧にもっと説明するように」との要請に背くものです。現時点における計画の全体像について、住民説明会を開催するよう、事業者に求めるべきです。伺います。
臨海部への投資についてです。
これまでにも、川崎市は、雇用や税収を増やすためといって臨海部には巨額の投資をしてきました。90年代以降、高速川崎縦貫道路の整備に総額6293億円、川崎港コンテナターミナルに400億円、水江町先端産業誘致土地購入に237億円、殿町「国際戦略拠点」整備に70億円、千鳥町再整備に40億円など、30年間で大規模開発に巨額の予算をつぎ込んできました。この90年代以降の市の臨海部への投資は、はたして市の雇用増や税収増につながったのかどうか伺っていきます。
まず、市内製造業の事業所数と従業員数の推移についてです。2008年から2017年の直近9年間で、市内製造業の事業所数は、622事業所、35%減、従業員数は9983人、18%減。臨海部のある川崎区でも、事業所数で172事業所、32%減、従業員数では845人も減っています。特に事業所数では全市も川崎区も3分の1減少するというすさまじい減り方をしています。
市税の中の法人市民税と個人市民税の税額と構成比についてです。2008年から2017年の直近9年間では、個人市民税は71億円増、税収の中の構成比では、個人市民税は税収の4割を占めています。一方、法人市民税は、64億円減、23%減少し、税収の中の構成比は、9.5%から6.9%と大幅に減らしています。特に法人市民税の構成比は、他の政令市は10%ですが、川崎市は6.9%と極端に低く、政令市では下から2番目です。川崎市は「全国でも屈指の工業都市」と言われますが、法人市民税の割合は、全国よりもずっと低いのが実態です。
このように、90年代以降の臨海部への巨額の投資は、25年以上たって雇用や税収の推移をみても、市の雇用増や税収増にはつながっていないことは明らかではないですか、伺います。
羽田連絡道路の目的と必要性についてです。
羽田連絡道路の事業目的について市は「国内外の人やビジネスなどを呼び込む」「観光の振興などに寄与する」としています。さらに「この橋をどのような人が主に利用するのか」という質問に対し、市は「立地企業の就業者が通勤ルートとして」またキングスカイフロントへの「来訪者が利用する」として来訪者の数は「年間1200人」との答弁がありました。
まず、この橋の利用者についてです。「観光の振興に寄与する」という答弁ですが、羽田空港を利用する観光客が、川崎市内、川崎大師に来る場合、すでにある4ルート大師橋、首都高速、国道15号、湾岸道路や、鉄道を利用すればよいわけで、この橋を利用する必要性はありません。「立地企業の就業者の通勤ルート」という答弁ですが、就業者はわざわざ京浜急行・羽田線の駅から来なくても、JR線、京急線、川崎駅からの既存のバス路線を利用して来ればよいわけで、通勤のために橋を作る必要はありません。羽田空港を利用して「当地区に来る来訪者」のためということですが、年間1200人ということは、1日当たり3人、わざわざ、橋を作るまでもありません。以上のことから、羽田連絡道路の必要性は、全くないと考えますが、他にどのような必要性があるのか、伺います。
キングスカイフロントと羽田連絡道路の経済波及効果についてです。
キングスカイフロントと羽田連絡道路の経済波及効果は、10年間で2481億円ということです。しかし、そのうち2114億円は、建設時の建設投資の波及効果で、研究・経済活動による波及効果は、わずか367億円です。実際の税収増ですが、10年間で120億円です。このうち、固定資産税は95億円で、これは所有者がいる限りは収入があるわけですから、キングスカイフロントがあるなしで変わりません。そうなりますとキングスカイフロントや羽田連絡道路の拠点形成による個人・法人市民税などの実質的な税収増は、10年間で5億円、年間わずか5000万円ほどです。市の税源培養というには、あまりにも少ない額です。
結局、殿町「国際戦略拠点」整備に70億円、羽田連絡道路に300億円、市費負担分100億円としても、総額170億円もかけてきているのに、現段階では税源培養にもつながっていないというのが現状です。今後、総額170億円に見合うだけの税収増をどうやってあげるのか、その根拠を伺います。
以上で質問を終わります。