市民の福祉くらしのために財政を使うべき〜片柳議員が代表討論
2017年第3回川崎市議会定例会の最終日、日本共産党の片柳進議員(川崎区)は代表討論を行いました。
片柳議員は「財政が厳しい」という根拠について、一つ一つただし、何一つ「財政が厳しい」という根拠にはならないと述べ、市の財政論には、3つのごまかしがあることも指摘しました。
また、議案第87号川崎市市税条例の一部を改正する条例の制定について、固定資産税等の特例措置の対象の中にいわゆる「企業主導型保育事業」が含まれており、これは「会社がつくる保育園」と言われる「認可外保育施設」であり、こども達の健全な成長と発達を考えるならば待機児童解消は認可保育園を中心に進めるべきで企業主導型保育事業を減税してまで推進するべきではないことから反対しました。
片柳議員の討論の発言は次の通りです。
代表討論
私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論を行ないます。
2016年度(平成28年度)決算の各会計決算認定についてです。
歳入の特徴についてです。
2016年度一般会計決算では、市税は4年連続の増収で3年連続の過去最高を記録。基金については、減債基金残高は初めて2000億円を超え、財政調整基金にも積み増しをしました。収支については、減債基金への積立を取崩し額だけにすれば、収支は32億円のプラスとなり、健全化指標についても、すべての指標で早期健全化基準をはるかに下回り、きわめて健全です。財政力指数は依然、政令市でトップを続け、1を超えたことから、普通交付税は政令市で唯一の不交付団体となりました。このように本市は「財政が厳しい」とは言えず、むしろ、政令市の中で豊かな財政を持つことが指標でも明らかになりました。
市長は「財政が厳しい」理由に「扶助費の増大」を挙げていましたが、増加した部分は、保育所増設のためにどうしても必要な費用であり、増加した部分のほとんどは、国や県からの補助金で賄われるため、経常収支比率は20%にすぎません。健康福祉費の構成比は減となり、一人当たりの扶助費の額は政令市平均を下回るなど、決して十分とはいえません。減債基金と財政調整基金へ85億円も新たな積み増しをしていることを考えると扶助費が財政を圧迫しているとは、とてもいえず、「財政が厳しい」という根拠にはなりません。
減債基金についてですが、減債基金への積立ルールの根拠である実質公債費比率は早期健全化基準をはるかに下回り、残高も政令市平均の1.8倍になるなど、さらなる積み増しが必要という水準ではありません。ルール通り積み立てる理由に、将来の世代に負担がかかることを挙げていますが、10年間、積み増しをしなくても10年後の実質公債費比率は13%に過ぎず問題はなく、10年後以降の取り崩し額も400から500億円で平準化しており、減債基金が足りなくなるような状況はありえません。何よりも積み立てルールは、実質公債費比率抑制のための計算上の基準であり、ルール通りやるかどうかは市の裁量に任されています。今やらなければならない課題が山積みなのに、ルールを優先して積み増しをすることは、市民の納得を得られないし、積み増しをしてから借り入れる方法はとるべきではありません。
将来の人口減少についても、財政が厳しい理由としていましたが、新たな人口推計では、本市は政令市で生産年齢人口の比率は最も高く、平均年齢で最も若い都市です。人口は、これから13年間、増え続け、市税収入は30年間、今より多いのです。しかも、年少人口はこれから13年間、増え続けます。人口減少も「財政が厳しい」という根拠にすることはできません。
このように、私たちは「財政が厳しい」という根拠について、一つ一つただしてきましたが、何一つ「財政が厳しい」という根拠にはならないことを明らかにしました。
加えて、市の財政論には、3つのごまかしがあることも指摘しました。第1は、財政が豊かなのに、「財政は厳しい」として、福祉・くらしの予算を抑制してきたことです。扶助費は政令市の平均以下に抑えられ、特に小児医療費助成の範囲や、認可保育園の待機児、特養ホームの待機者は政令市で最悪の状況です。第2に、市税収入を予算で低く見積もり、減債基金への過大な積み立てをして、収支不足を過大に見せていたこと。第3に、「財政は厳しい」といいながら臨海部の不要不急の大型開発に過大な投資をしていることです。市民に対して、これらの矛盾をどう説明するのでしょうか。
小児医療費助成制度の拡充、認可保育園や特養ホームの大幅増設など、今必要な課題は山積みです。不要不急の臨海部の大規模事業は中止をし、減債基金へのため込みをやめて、市民の福祉・くらしのために財政を使うべきです、強く要望します。
歳出の特徴についてです。
小児医療費助成制度についてです。
今年度、政令市の10市が中学卒業まで、7市が小学6年生まで医療費助成を行い、17政令市中13市が所得制限なしで実施しています。
また、県内の実施状況を見ると、33市町村のうち、中学卒業までは18自治体に広がり、そのうち所得制限なしは11自治体にのぼり、窓口負担金を導入したのは川崎市と横浜市だけです。このように、本市の助成制度は、対象年齢、所得制限、窓口負担金などの比較で政令市最低水準と言わなければなりません。全国的にも厚労省のまとめを掲載した新聞報道では、高校卒業までが378自治体で全体の22%、中学卒業までが1005自治体で58%、所得制限なしは1432自治体で82%と速いスピードで拡充が進んでいます。
本市は所得制限があることで、1歳から小学6年生までの全体では27300人余.17%が助成を受けられません。また、拡充された小学4年生から6年生までは8800人余で26%、4人に一人の割合で助成が受けられません。
所得制限と一部負担金を撤廃し、中学卒業までの医療費助成を実施するのにあと18億円あればできます。豊かな財政を生かして一刻も早く、中学卒業まで、所得制限と一部負担金の撤廃で医療費助成の拡充を強く求めます。
保育所待機児童の解消についてです。
2017年4月の認可保育所の利用申請は就学前児童数の36.5%に達し、近い年度に4割台になることが見込まれます。近年、定員増に対し入所申請がはるかに上回るなど、人口増や保育ニーズの急増に、増設の規模とテンポが追いついていません。2016年度の認可保育所整備事業に関わる決算について、6月補正含めて1,895人分の定員増の予算を計上しましたが、整備されたのは1,520人分でした。こども未来局長は民間事業者活用型の募集に対し、多くの応募が得られなかったことが理由と答え、民間事業者活用型の整備は「補完的な整備」ということでした。3千人近い隠れ待機児童を真に待機児ゼロにするために、庁内あげて公有地の活用に全力を挙げるとともに、民有地も活用し認可保育園の抜本的な増設を求めます。保育士の確保のために、処遇改善の充実も強く求めます。
放課後児童健全育成事業(学童保育)についてです。
2015年度に、児童福祉法の改正、及び「子ども子育て支援法」により、学童保育の自治体の責任が強化されました。放課後児童健全育成事業の運営費基準額が見直され、2016年度の交付要綱において、運営費単価における国庫補助基準額が引き上げられ、2016年度の国庫補助対象経費は、8億269万円で市の負担割合は、従前の3分の2から3分の1に減り、2億7千万円です。
保護者が就労している児童を対象にした「放課後児童健全育成事業の設備及び運営の基準条例」における「ひとつの支援単位」である40人を超える学校は2016年度86校から今年度90校へ、そのうち80人を超える学校は38校から42校へ、120人を超える学校は6校から8校へ増えています。分科会では、「今後も利用児童の増加に伴い基準面積の確保が必要と見込まれるが、引き続き、学校施設の有効活用や計画的な改修を含めた柔軟な対応に努める」との、従来どおりの答弁でした。しかし、今後、さらに増大するニーズに対し、更なる学校施設の有効活用には限界があると考えます。
また、子どもによっては、わくわくプラザの大人数になじめないお子さんもいます。民間事業者による学童保育を選択する児童、保護者もいます。本市の子どもの権利条例では、「子どものおかれた状況に応じ、子どもにとって、必要な支援を受けることができる」としているのですから、選択権を保障すべきです。
横浜市は全児童事業にも民間の学童保育事業についても、国庫補助金の申請を国に対し行なっています。本市も基準条例を満たし、市に届出を行う民間事業者の学童保育を利用する児童も、国庫補助の対称にすることを強く求めます。
少人数学級の拡充についてです。
学級編成権限が県から本市に移譲されたことを期に、少人数学級を視野に教職員を増員すること、また少人数学級と少人数指導の選択について学校の学級編成権限を尊重することを求めましたが、市が独自に少人数学級に踏み出すことについては明確な答弁がありませんでした。代表質問後の調査で、札幌市、さいたま市、堺市も市が独自に少人数学級に踏み出して、16政令市が独自に取り組んでいることが明らかになりました。政令市への移管を期に、せめて小学校3年生、中学校1年生への少人数学級の拡大を急いで行うよう求めておきます。
特養ホームの整備についてです。
特別養護老人ホームの待機者は今年4月1日現在で4276人、そのうちなるべく早く入居したい人は3156人で、全体の74%を占めています。待機している年数が3年以上を超えている人は39.8%で、3年前より14.3ポイント増えています。特養ホームの整備が進まず、待機期間が長期化していることが明らかになりました。こうした深刻な事態なのに、2017年度の新設は5月に1ヵ所94床の開所だけ、前市長最後の5年分の増設が1519床に対して、福田市長が手がけた3年分ではわずか430床だけです。「今すぐに入居したい」という本人・ご家族の切実な願いと大きくかけ離れています。横浜市のようにまず、要介護3以上の方がおおむね12ヵ月以内で入居できるような整備目標を掲げて、テンポをあげて整備を進めることを求めます。
消防力の強化についてです。
地域防災力の強化の要は消防力の強化です。消防職員は川崎市の条例定数をほぼ満たしているものの、いまの川崎のいざという場合の災害対応、警防対応などを考えるととても充足していないことが、質疑のなかでも明らかになりました。消防署には高度な消防車種は配備されているにも係わらず、それに見合う消防職員が足らず、乗換えでしか対応できない、という深刻な話も聞きました。
応急手当普及啓発活動、いわゆる市民救命士の養成についても、「救急業務体制のより一層の充実を図るため、増大する救命講習の需要に十分応えられないことなどから」という理由で、2016年度から、救命講習を全面民間委託にしてしまいました。しかも、テキスト代等として市民の費用負担も発生するようになりました。本来なら市民負担なしで一番現場の実態を知っている消防職員が講習にあたるべきではないでしょうか。
救急車の充足問題でも、川崎は人口が増え、高齢化も進むなかで、救急搬送も重症、中等症の方が増え、救急車の「適正利用」で解決する事態ではない、ことも判明しました。そのなかで、全ての救急車27隊がフル稼働しても足りず、予備の救急車を活用する「第2救急隊」が臨時で編成される事態が何回も起こりました。
国基準の必要隊数は33隊で、今後麻生区に1隊配備されるとしても、5隊不足している事態を放置することなく、一刻も早く増隊することを求めます。市民の命、安全をまもるためにも国の整備指針から149人も不足している事態を、正面から受け止め、条例を見直し国の整備指針に添う形の消防職員の増員を求めます。
住宅リフォーム助成についてです。
助成制度をつくることについて市長の対応を質したところ「情報発信力や営業力強化を目的とした研修や住宅相談会を開催してまいりたい」と従来の答弁を繰り返すだけでした。2016年度、全国600自治体以上で取り組まれた「住宅リフォーム助成制度」は、市民のリフォーム需要を喚起し、地元建設業や商店に結びつけることで、地域経済を暖めます。各地で試され済みの経済対策である「住宅リフォーム助成制度」を急ぎ検討するよう、改めて求めておきます。
道路維持補修等についてです。
分科会や総括質疑において、市民の要望の強さや、市内の道路や街路樹の現状を示して、補修等を抜本的に進めるよう求めました。しかし市長は「今後も計画的・効率的な予算執行を図る」とこれまでと変わらないだけでなく、「市民との協働による美化活動を推進する」と市民のボランティアに頼る姿勢を示しました。市民はすでに自分たちで草刈りをしたり、道路の掃除をしています。9月のいっせい美化活動には、たくさんの方たちが出ておられました。市民の方たちの善意にお任せするだけでなく、市民生活に密着する道路補修や街路樹の剪定などへ予算の抜本的な増額を求めておきます。
東扇島堀込部の埋め立て計画についてです。
昨年度の決算の中で、支出済み額1億3700万円余を計上し、東扇島公有水面埋め立て事業のための調査、設計等に充てていますが、現時点においても、そもそも埋め立てる目的もあいまいで、工法も、具体的な検討内容も不明のまま、リニア新幹線の建設発生土を受け入れることだけが決まっています。つまり、JR東海の建設発生土の処分のために、処理費用として掛かる費用を全額JR東海に求めないで、200億円に上限を定め、市民にとって不要な埋め立てのために40億円以上の負担を市の税金を充てるというもので、無駄な大規模事業の極みです。本事業については、中止することを強く求めておきます。
羽田連絡道路についてです。
経済波及効果について昨年度委託調査を実施しましたが、そもそも、連絡道路を作ることのメリットを委託調査しなければならないこと自体に、連絡道路の必要性がないことが表われているのではないでしょうか。しかも、総括質疑でも取り上げましたが、貴重な干潟を破壊して、元通りにすることなどできるはずがありません。今からでも遅くありません。事業を中止することを強く求めます。
国際戦略拠点マネジメント構築業務委託料についてです。
ドイツの事例においても、クラスタマネジメント組織は、自治体が独自の財源をもって運営するようなものではないということが分かりました。しかもその運営には、ライフイノベーション分野に深く精通したリーダーが不可欠ということで、自治体職員の出向や退職職員の天下りで担えるものではないということもわかりました。
その上で、国際的なクラスター形成を目指すというのは、あまりにも無謀な内容と言わざるを得ません。また、市内中小企業への連携ということが、曲がりなりにも自治体が取り組む理由付けになっていたわけですが、結局、中小企業に対して自主的な参加を求めるだけでした。そもそも、殿町の研究開発拠点においては、市内中小企業支援にはなり得ないという私たちの指摘の通りになっています。改めて、キングスカイフロントへのこれ以上の財政支援は、やめるべきことを指摘しておきます。
議案第87号川崎市市税条例の一部を改正する条例の制定についてです。
固定資産税等の特例措置の対象の中に、特定事業所内保育施設が含まれています。これは、いわゆる企業主導型保育事業です。
「企業主導型保育事業」は、2016年度から始まった国の事業で、「会社がつくる保育園」と言われる「認可外保育施設」のことです。
企業主導型保育事業として展開される事業所内保育は認可外施設であり、新制度の実施主体である市町村の関与を必要としませんが、新制度の枠内の事業でもあるので、内閣府が補助金の管理、事業費の執行を行い、都道府県が指導監督し、事故などがあった場合は、施設の設置運営者が責任を負うという、保育に対する責任の所在が多元化しており、非常にわかりにくい事業となっています。
また、企業主導型保育事業は、定員19人以下でゼロ歳から2歳児を対象とする小規模保育事業の基準を守ることを原則としており、小規模保育B型での保育士配置2分の1の基準を持ち込み、施設設備の基準は努力義務にしようとしています。調理室や園庭の設置基準については既に緩和されていますが、その基準さえも曖昧にしようというものです。これでは、保育の質を担保することができません。今回の減税は、「企業主導型保育事業」である特定事業所内保育施設について、「待機児童解消に資する」として、事業用地・施設の固定資産税・都市計画税を3分の1へと減税する内容です。私たちは、そもそも保育の実施は、児童福祉法で定められた自治体の「責務」であり、こども達の健全な成長と発達を考えるならば、待機児童解消は認可保育園を中心に進めるべきであり、企業主導型保育事業を減税してまで、推進するべきではありません。よって、本議案については、賛成できません。
議案第88号、川崎市印鑑条例の一部を改正する条例の制定についてです。
この条例は、マイナンバーカードによるコンビニ交付が開始されたため、行政サービス端末による印鑑登録証明書の交付申請を廃止するものとのことです。
委員会の質疑で、現在の本市のマイナンバーカードの交付は17万3千人、コンビニ交付の実績は今年の4月から8月で月平均3000から3500件とのことです。それに対して行政サービス端末に必要な市民カードの発行数は約24万人、今年の同時期の利用件数は5000から6000件とのことで、現時点で行政サービス端末の方が、マイナンバーカードより利用者が多くなっています。
これまでも全国でマイナンバーにかかわる情報漏洩などがたびたび起こっており、各種アンケートなどでも「マイナンバーカードをつくりたくない・つくる予定はない」という方が多数を占めています。行政サービス端末は、情報漏えいまで通じるセキュリティの心配がなく、市民のだれもが登録すれば利用できるシステムです。現在の利用者はじめ、「マイナンバーカードの必要性を感じない」という多数の方々にとって、その廃止により、大きな不利益を生じることになるため、この議案には反対いたします。
議案第111号平成28年度川崎市後期高齢者医療事業特別会計歳入歳出決算認定については、高齢者に差別を持ち込む後期高齢者医療制度に反対の立場から、反対です。
請願第37号「所得税法第56条の廃止を求める意見書を国にあげることに関する請願」についてです。
自営商工業者の多くが家族労働によって事業を支えています。しかし、事業専従者控除を配偶者に86万円、その他の家族に50万円しか認めていません。これは時給に換算すれば配偶者は344円、その他の親族は200円です。
家族従事者の多くは女性です。昨年2月に開催された第63会期国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、「家族経営における女性の労働を認めるよう所得税法の見直しを検討すること」を勧告しました。つまり、その働き分が給料として認められないことは、まさに女性差別以外の何ものでもないということです。
委員会審査でも、私たちの質問に対して、白色、青色いずれの申告方法でも適正に申告されていることを認めた上で、申告制度全体の見直しが必要「青白の区別することなく適正に申告されることが理想」だとの認識を示されました。
申告方法での違いがない中で、家族専従者給与を認めない所得税法第56条を直ちに廃止すべきであり、本請願については採択することに賛成です。
私たちは、予算議会において、不要不急の大規模開発を見直し、基金の取り崩しなどによって市民生活の切実な願いに応えるべきと予算の組み替え動議を提出した経過も踏まえ、2016年度決算認定にあたっては、一般会計、競輪事業特別会計、後期高齢者医療事業特別会計、港湾整備事業特別会計、公共用地先行取得等事業特別会計、下水道事業会計、水道事業会計については認定できません。
以上の立場から、議案第87号、議案第88号、議案第106号、議案第107号、議案第111号、議案第114号、議案第118号、議案第121号、議案第122号については反対及び認定できないこと、請願第37号その他の議案、請願、報告については、賛成、同意及び認定することを表明して討論を終わります。