「財政が厳しい」根拠は何もない〜石川議員の総括質疑
2017年第3回川崎市議会の決算審査特別委員会で9月29日、日本共産党を代表して石川建二議員が総括質疑を行いました。
石川議員の総括質疑の初回原稿は次の通りです。
決算審査特別委員会総括質疑
私は、日本共産党を代表して、決算審査特別委員会の総括質疑を行います。
最初に、2016年度決算の財政状況と減債基金についてです。
川崎市の財政について、私たちは「財政が厳しい」という根拠について一つ一つただしてきました。扶助費については、増加した部分のほとんどは国や県からの補助で賄われ、経常収支比率は20.0%にすぎず、一人当たりの扶助費の額は政令市の平均以下で十分とはいえません。収支不足に充てるとして減債基金から53億円の借り入れをしていますが、減債基金への積立額を取崩額だけにすれば、減債基金から借り入れる必要はなく、収支不足どころか、収支は32億円のプラスになります。減債基金についても、10年間、積み増しをしなくても実質公債費比率は13%で問題はなく、10年間で900億円の新たな財源を作ることができます。消費税増税の延期についても、税率を引き上げれば逆に市の財政や市民の負担増になることから、増税延期によって財政が厳しくなるということにはなりません。このように、何一つ「財政が厳しい」という根拠にはならないことを明らかにしました。これ以外で、何を根拠に「財政が厳しい」というのでしょうかと聞いたのに対し、代表質問では明確な答弁がありませんでした。あらためて市長に伺います。
さらに、市税収入は4年連続過去最高であり、財政力指数は10年以上、政令市トップを続け、市の貯金である減債基金残高は2000億円を超え、政令市平均の約2倍にも達するなど、川崎市は政令市で最も豊かな財政を持つことを明らかにしました。新たな人口推計でも、川崎市は政令市で生産年齢人口の比率は最も高く、平均年齢で最も若い都市です。人口は、これから13年間、増え続け、市税収入は30年間、今より多いのです。しかも、年少人口はこれから13年間、増え続けます。これでも、財政が厳しくなるといえるのでしょうか、市長に伺います。
財政が厳しいことの理由に少子化をあげていますが、だとしたら、今から対策を打たなければなりません。少子化の対策というのは、成果が出るまで長い期間、30年くらいかかります。本気で取り組もうとしたら、今、行なうことが大事なのではないですか。減債基金への積立を取崩し分だけにすれば、毎年、90億円、10年間で900億円の新たな財源ができますし、さらに、収支フレームでみれば2年後から毎年度、20~200億円の収支プラス分も財源にできます。これらを使えば、中学卒業まで小児医療費無料化のための市の負担額19億円、少人数学級実施に19億円、認可保育園25か所3000人分の施設整備費が一般財源で4億円などは十分まかなうことができます。
こういう未来型投資財政にすべきであり、さらに特養ホーム10か所1200人分の施設整備費11億円(一般財源)も十分可能です。市長に伺います。
13款8項1目、学校トイレ環境整備事業費に関連して、伺います。
平成28年度に「学校トイレ快適化事業」を実施した小中学校は、合計7校で決算額は2億9,793万8,110円とのことで、トイレの洋式化率は小学校で約60%、中学校で約54%です。学校は子どもたちにとって、学習だけでなく夕方まで過ごす生活の場です、学校のトイレを全面的に改修・改良すべきです。
文教分科会では、内閣府の「避難所におけるトイレの確保ガイドライン」から、特に避難所となる施設について「高齢者や障害者にとっては、和式便器の使用は極度に困難であるので、既設トイレを洋式便器化していくことが望ましい」としていることを紹介して質問しましたが、避難所としての学校トイレ整備の観点から、改めて総務企画局長に伺います。
内閣府のガイドラインは、「災害時のトイレの確保・管理にあたり配慮すべきこと」として、高齢者・障がい者については「トイレの段差を解消する」「介助者も入れるトイレを確保する」ことをあげ、多目的トイレを設置する対応を求めています。
東日本大震災の被災地である宮城県石巻市では、高齢者が和式トイレにしゃがんだまま動けなくなったという事例も起きています。また、熊本地震で被災した小学校の元校長は「体育館トイレは洋式が一つだけ。しかし車いすで入る仕様にはなっていません。せめて多くの住民の方が使う共有スペースの既設トイレは、災害を想定したバリアフリー対応が必要だと痛感しました」と述べています。
本市の学校のうち、体育館にもその近くにも多目的トイレがない学校は、小中学校で55校にのぼります。体育館のトイレの洋式化とともに、多目的トイレの設置計画を新たに定めて緊急に推進すべきです。総務企画局長に伺います。
本市の地震被害想定避難者に見合う避難場所として、総務企画局長は今年3月議会で「体育館及び全ての教室を対象にしている」と答弁しています。教室などを避難場所とするのであれば、内閣府が求めるように、教室近くの既設トイレの洋式化を進めるべきです。総務企画局長に伺います。
農業費について伺います。
まず、新規就農総合支援事業は、国の補助メニューを活用し、新規就農者支援をする事業として行いましたが、対象者がおらず、450万円丸ごと不用額になっています。
国の補助制度ということですが、他都市では、家賃補助や給付金制度と併用して活用していますが、もっと工夫を凝らして活用できなかったのか伺います。
農業担い手経営高度化支援事業は、市内でわずか3人から5人しか選ばれず、しかも、選ばれる対象者は年間300万円以上の農業収入のある人に限られ、それは市内農業者のわずか4%にすぎません。結局、対象者3人しかいなかったので、不用額が発生しています。今年度も、2名しか交付予定者が決まっていません。そこで、来年度の見通しについて伺います。
農業費全体で、不用額として2016年度710万円余残しています。2015年度廃止された、出荷推進対策事業では、400万円余、直売団体育成支援対策事業では、900万円弱の予算でした。これなら、わざわざ事業を中止しなくても、新規事業を行いながら、両事業とも継続できたのではないでしょうか。廃止された両事業を支えにして、川崎の農地と農業を守ってきた農業者は、到底納得できるものではありません。廃止したこれらの事業を復活すべきと思いますが、見解を伺います。
地域密着の道路事業費等と住民要望についてです。
2016年度の区政総務費及び7行政区の道路維持補修事業費、水路整備事業費、街路樹維持管理事業費、公園緑地維持管理事業費の総予算額は、当初予算64億2564万円余で、前年度からの繰越額を含めた決算における予算現額では、67億3,576万円余です。決算では、61億7960万円余、翌年度繰越額2億4257万円余、不用額3億1358万円となっています。
毎日の市民生活に欠かせない地域の生活道路や側溝の傷みなどが随所で見られ、住民の方々から舗装や補修の要望、街路樹の維持管理、公園の維持補修などの要望が多数寄せられます。
陳情件数は、2016年度が26,560件で、その内、処理済みとなっているのは、舗装道路補修は80%、側溝等補修は85%、安全施設整備82%で、約2割程度は次年度に持ち越されています。
この問題は、この間ずっと取り上げてきましたが一向に改善されていません。150万人市民の日々の暮らしに直結する道路や公園等の適切な維持管理のために思い切って予算を増額すべきです。市長に伺います。
コミュニティ交通についてです。
コミュニティ交通支援事業の2016年度の決算額は、コミュニティ交通支援業務委託に545万4千円、高齢者等割引事業補助金に約332万円、高石地区の車両買い替えに600万円で、総額1537万円です。高齢者等割引事業補助金の内訳は麻生区高石地区が約159万円、多摩区長尾台地区が173万円とのことです。2015年度よりも増額されたものの、本格運行はいまだに2地区、試行運転などに取り組んでいるのも2地区に過ぎません。「ミニバスを通してほしい」という切実な声は増えるばかりです。
市長はコミュニティ交通について「各地域の交通課題の解決に向け、重要性が増している」として「さまざまな手法の導入や必要な支援のあり方など幅広い検討」すると答弁されていますが、支援の拡大はわずかで、分科会でも、地元協議会の設立・運営と採算性への支援が必要だということが改めてあきらかになりました。
これまでも求めてきたように、運行経費への支援を行うようにすべきです。市長に伺います。
国際戦略拠点マネジメント構築業務委託料6,488,400円について伺います。
本事業の目的は、拠点マネジメントを行う推進組織、導入する機能、取り組み等の調査検討としています。
ところが、調査報告書を見ますと、国際的なイノベーションクラスター形成に向けたロードマップの作成を目指すとなっています。
その先進的な事例としてドイツの事例を調査していますが、その中で、国際的なイノベーションクラスター形成のために、連邦政府や国土の3分の1を占める州政府が活動資金の半分を支援しています。
しかも、クラスターマネジメント組織が独自に資金調達し、企業間の連携においてもマネジメント組織のリーダーシップが重要ということです。
それを仕切るのは、クラスターの対象領域を深く理解し、産業界にも精通したドクター資格を持つ有能なリーダーと言うことです。
本来、国家的な財政支援を前提としているものを、自治体が独自に莫大な税金を継続的に投入することが必要な国際的なイノベーションクラスター形成を目指すというのか、伺います。また、現在整備中のマネージメントセンターは、ドイツの事例のようなクラスターマネジメント組織を目指すのか伺います。
ドイツの事例では、中小企業が中心で、産業クラスターを形成しています。しかし、報告書では、大企業が多く立地する殿町の施策として、大企業を核とした連携を提案しています。
ナノ医療イノベーション事業に自治体が財政支援する理由として、まがりなりにも医工連携といって市内中小企業との連携を想定していたのではないでしょうか。中小企業との連携を投げ捨て大企業の連携にシフトするのか、伺います。
介護保険事業特別会計についてです。
介護保険料は2000年からの介護保険制度発足当初、(第一期の基準保険料額・月額2950円)から現在は、1.9倍に跳ね上がっています。県内で2番目に高い保険料となっています。2013年度の川崎市高齢者実態調査では、市の介護保険料に対して、「高い」「やや高い」と答えた人は76%とトップでした。同年10月の市長選挙で、福田市長は、川崎市の介護保険料が県内市町村の中で最も高いことから保険料抑制を公約していました。しかし、第六期計画でも基準額は5540円に値上げされました。年金が毎年減額されるなか、介護保険料も年金から天引きされます。現在と将来に不安を感じつつ、残りの年金でやりくりしているという生活実態からすれば、介護保険料の負担はもう限界です。
現在、2018年度から2020年度までの第7期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の策定作業に入っています。2017年3月に発表された「平成28年度川崎市高齢者実態調査」でも、川崎市の介護保険料が「高い」「やや高い」と感じている人の割合は約4人に3人。共産党市議団の市民アンケートでも「介護保険料・利用料の軽減」を求める要求が突出しています。今の階層区分をさらに細分化するやり方も限界に来ています。介護保険給付費準備基金を全部取り崩しても値上げは避けられない状況だということです。あらゆる手段を講じて介護保険料の値上げを抑制すべきですが、やはり一般会計からの繰り入れが必要です。保険料抑制については前回市長選の市長の公約でもありました。一般会計からの繰り入れは市長が決断すればできることです。市長に伺います。
港湾整備事業特別会計、1款2項3目、東扇島コンテナ事業についてです。
コンテナ取扱量が2016年度、初めて10万TEUを超えました。その背景には、川崎港へのコンテナ誘導策があります。国際コンテナ戦略港湾事業関係補助金制度が拡大されてきました。2011年12月から始められた補助事業は、当初、他の港から川崎港に利用を切り替えたコンテナ貨物1FEUに対し、5000円を補助するものでした。2014年には、今まで補助金を受けていたコンテナ貨物に対し、継続して補助できるように制度を広げ、2015年度からは、アジアの諸港を結ぶ航路のコンテナへの補助、2017年度からは冷凍・冷蔵コンテナへの補助や空コンテナを無くす補助、市内中小企業が利用した場合の補助など、補助制度の対象を次々に増やしてきたのです。コンテナ取り扱い量に占める補助対象個数の割合は、2012年49%から2016年には71%とその依存度を高めています。補助金総額も2012年の5182万5千円から2016年には1億2474万7千円と2.4倍にもなりました。2016年度のコンテナターミナルの「利用料および手数料収入」は、2億5456万4千円です。その2分の1に当たる金額を補助しなければ集荷が維持できないということです。分科会で「いつになったら依存がなくなるのか」質したところ「当面の間は、助成制度を活用し、貨物集荷に取り組む」とのことでした。これでは、いつまでも補助制度が続き、税金の投入が膨らみ続けることになります。6月議会でも指摘したように、コンテナ集荷のための補助制度は中止すべきです。市長に伺います。
以上で質問を終わります。