政務調査費使途にもっと市民意見反映を~宮原議員が反対討論
2月14日に開かれた第1回市議会定例会の第1日目に「政務調査費の交付等に関する条例の一部を改正する条例の制定」案が議員提案され、宮原春夫議員(川崎区)が日本共産党代表して反対討論を行いました。 採決では共産党以外のすべての議員が改定に賛成しました。
宮原議員の討論内容は次のとおりです。
「議員提出議案第1号川崎市議会の政務調査費の交付等に関する条例の一部を改正する条例の制定について」の反対討論
私は、日本共産党を代表して、ただいま提案されました、議員提出議案第1号「川崎市議会の政務調査費の交付等に関する条例の一部を改正する条例の制定」について反対討論をおこないます。
この条例案は、昨年の改正地方自治法で、地方議員に支給されている政務調査費を政務活動費に改め、議員の調査研究に限定されていた使途を「その他の活動」にも拡大できることになり、川崎市の条例も改定することになったものです。しかし、この地方自治法の改正をめぐっては、成立経過もその内容もきわめて問題のあるものでした。
地方自治法改正案は多岐にわたり、2012年3月から国会で論議されてきました。ところが、当初の改正案にはなかった政務調査費から政務活動費への改定案が、8月の衆議院総務委員会に「民主党・無所属クラブ」「自民党・無所属の会」「公明党」「国民の生活が第一・きづな」の4会派共同提案で突然、提出され、わずか3時間の質疑で「みんなの党」「国民新党」も賛成のうえ可決。衆議院本会議で可決後、送付された参議院総務委員会でも3時間余の審議で可決され、参議院本会議で可決、成立したものです。
改正をする必要性について議論が尽くされたわけではなく、まして国民に説明がなされることもないままの成立経過を辿っています。自民党議員でさえ、「提案趣旨説明の直後に質問の時間というのは原則としていかがなものか」と述べたことに、審議の拙速さが示されています。
地方自治法改正の内容は、政務活動費をこれまでの「調査研究に資する活動」に加え、「その他の活動」にも支出できるようにしたことです。
「その他の活動」の範囲について、提案者の公明党稲津久衆院議員は、「従来、調査研究の活動と認められていなかった補助金の要請あるいは陳情活動等の旅費・交通費、地域で行う市民相談・意見交換会や会派単位の会議に要する経費のうち調査研究活動と認められていなかったものを対象とできる」と述べています。都道府県議会議長会、市議会議長会などから示されている条例案は、こうした答弁をそのまま条文化したものとなっており、今回川崎市議会の議員提出条例案も、大筋でこの内容と同じものとなっています。
しかし、その範囲は各自治体の条例で定めることとされており、どのような内容にするかは、自治体の議会の裁量に任されているものです。
今回の改正をめぐっては、全国市民オンブズマン連絡会議は、「違法な政務調査費の支出に免罪符を与える」と懸念を表明。施行日までの改正は活動費への名称変更にとどめ、使途基準の内容は十分な時間を取って市民から意見を聴くべきであるとしています。
全国の自治体の対応では、宇都宮市議会は、現条例が失効する3月1日までの条例改正は名称変更等にとどめ、「その他の活動」の内容は今後1年かけて決定するとしています。東京都議会、相模原市議会では、使途を拡大せず、政務調査費を政務「活動」費と名称変更するだけの条例改正案を全会一致で議員提案する予定です。
いま、国民所得の低下や景気の低迷がつづき、震災からの復興も遅れるなかで、有権者は税金の使い道に厳しい意見をもっています。
政務調査費充当をめぐっては、およそ税金の使い方として容認されない事例が相次ぎ、住民監査請求や訴訟が多発してきました。こうした事態をなくすためには何よりも議員自らが襟を正して住民の信頼を回復することが求められています。
まして、川崎市議会では、2003年から2006年の政務調査費の使途を巡り、2012年1月に横浜地方裁判所で、3会派が目的外支出と認定された支出額を返還するよう判決が出され、確定したところです。
こうした実態から出発するなら、いま川崎市議会に必要なことは、使途範囲を拡大するような条例改正をおこなうことではなく、相模原市のように、現行の使途基準を厳格に守る立場に立ちきることではないでしょうか。今回の条例改正は、相模原市議会のように、名称変更だけにとどめるべきだと考えます。
今回提案された条例案は、既に述べたように、その内容も問題ですが、さらに問題なのは、本条例を制定するにあたって、市民の声を聴く機会をまったくもうけなかったことです。他都市では(千葉県議会、大分県議会、福島県議会、新潟市議会など)、条例改正案を議会へ提案する前にパブリックコメントにかけるなどして、市民の声を聴く機会をもうけています。
そもそも、国会での審議においても、「事実上地方議員の第二の報酬になっているのではと批判されている現状にお墨付きを与え、不適正な使い方を是認するための法改正だ、といった疑問をどのように払しょくするのか」(みんなの党柿澤衆院議員)の質問に対して、提案者の民主党の逢坂(おおさか)衆院議員は、「条例の制定に関する議会の審議、その審議の過程に対する住民の監視等により」、防止・是正できると答弁。また、総務大臣も、「議会で条例で決めるということを法定したということは、有権者の前でご議論をいただく」と答弁しているのです。
市民の意見を議会活動に反映すると定めた「議会基本条例」を制定した川崎市議会としては、市民の声を十分に聴く機会を保障すべきでした。こうした機会をもうけなかったことは、「議会基本条例」の趣旨に照らしても疑問の残るものでした。
以上より、本条例案は、内容の面でも、制定手続きの面からも、賛成できないことを表明して、討論を終わります。