川崎市内空中放射線量の測定結果について
7月21日 、日本共産党川崎市会議員団は、6月23日から7月2日にかけて専門家と市民の協力を得て行なった空中放射線量測定の結果を発表しました。
1、測定場所について
(1)川崎市内全域の69ヵ所で測定した。測定場所は公園・広場とした。一部に医療・福祉・農業など、公共性の高い場所で測定したところもある。
(2)公園・広場内では、できるだけ中心的な場所を測定地点とした。また可能なかぎり土の上で測定したが、アスファルトや砂利、芝生上で測定した箇所もある。また、線量が高いと考えられる滑り台の下や側溝、公園の遊具や砂場でも測定している。
2、測定結果について
測定を行った結果、以下の特徴がうかがえた。
(1)測定時点では市内全域で、一般人の1年間の被曝量(自然放射線および医療放射線を除く)の上限とされる年間1ミリシーベルト(毎時0.19マイクロシーベルト)を下回っている。とくに市内北西部では相対的に低い数値が測定された。
(2)一方、市内南東部は相対的に高い数値がみられ、年間1ミリシーベルトに近い地点も存在した。
(3)側溝、滑り台の下など、局所的に年間1ミリシーベルトをこえる線量を示す場所も存在した。
3、測定方法など
(1)地上高1m、0.5m、0m(地表面)でそれぞれ測定値を10秒間隔で10回読み取り、その平均値を算出した。
(2)測定器は、日立アロカメディカル社 PDR-101型 ポケットサーベイメーターを使用した。
発表資料
(1)川崎市内の放射線測定結果詳細表
(2)川崎市内の地上1m地点の放射線量測定地図(全市一覧、放射線量等値線)
(3)空間線量率の測定結果についての専門家のコメント
○坂巻幸雄先生のレポート
空間線量率の測定について―川崎市の場合
●日本共産党川崎市議員団は、2011年6月23日から7月2日にかけて、市内全域の68ヵ所で、空間線量率(環境放射線)の測定を実施した。以下は、この測定に関するとりあえずのレポートである。
●測定器は、シンチレーション式サーベイメータ(メーカー名:日立アロカメディカル社、型式名:PDR-101型)を用いた。標準的には、公園等の広場の中央で、なるべく表土が表れている場所を選んで、測定器を地表面から1mの高さに保持して、表示値を10秒間隔で10回読み取り、平均値と標準偏差、変動係数を算出する。次に地表に測定器を降ろして、同様の測定を繰り返した。
これ以外にも、必要に応じて、建物や公園の遊具の周囲、草地、道路上などにも測点を設けた。
●測定に用いたPDR-101型サーベイメータは、日本共産党東京都議員団と同神奈川県委員会が、都内・県内全域調査ですでに使用しているので、今回もこれを標準とした。
なお、東京都が「都内100箇所測定」で用いた、同社製のTCS-166型は、PDR-101型よりもさらに約0.03μSv/h 低い値を示すので、比較の際には注意を要する。
●市内全域にわたって福島原発事故の降下物の影響が出ているが、事故前の神奈川県下の自然放射線レベル平均値・0.030μSv/hがほぼ倍増したくらいで、程度としてはごく微弱である。年間被爆線量が1mSv/h超える地点は、今回の調査ではなかった。
今後、福島原発で再び非常事態が発生しない限り、日常生活上の危険は大きくはない。放射性物質(主にセシウム134、セシウム137)は地表に沈着しているので、対策としては、農作業や泥遊び後の、手洗いとうがいの励行、砂ぼこりが立つときのマスクの着用など、専ら若年層を対象にした内部被爆防止策が重点となる。
●放射性物質の地域分布のムラで特徴的なのは、東京都川からの流入ルートが、多摩区北部、中原区、川崎区と3波に亘ってみられることである。これは、事故直後の気象条件を反映した結果なので、現在も汚染物質の流入が続いているという意味ではない。
但し、空間線量率自体はさほど大きくない場合でも問題が生じる例はある。東京都府中市では、空間線量率が0.085μSv/hに過ぎなかったのに、学校農園で収穫した荒茶からは規制値以上(1,560Bq/㎏)のセシウムが検出された。福島県下の稲わら―牛肉汚染も同類である。乾燥を伴う農産物の後処理過程では、汚染物質の濃度が結果として高まるので、相応の注意を払っておくことが望ましい。
局所的なムラとしては、雨どいの落ち口や、公園のすべり台の下端部等、雨水が集中するところにいわゆるホット・スポットができやすく、今回の調査でもその傾向は現れていた。
小区域の精密測定の実施は、行政当局も加えての今後の課題である。
(2011/07/20 文責:坂巻幸雄)
○野口邦和先生のコメント
・日本共産党川崎市会議員団の放射線量等の測定は適切に実施されている。
・事故前の川崎市における地上1mの自然放射線量は平均0.075μSv/hであった。今回の川崎市議団による測定値は最大でも0.329μSv/h(百合ケ丘第4公園側溝、5cm・地表面)、次いで0.291μSv/h(生田浄水場西、セノン稲田堤寮前歩道、5cm・地表面)であった。特段の問題があるレベルではないが、側溝などは泥などを除去して洗浄すれば、0.1μSv/h以下に下がるはずである。
・上記のように事故前と比較すると高い場所があるものの、多くは0.05~0.15μSv/hの範囲内にあった。
・事故に起因する放射線量は1年後におよそ8割、3年後におよそ5割、7年後におよそ3割に低下する。降雨による洗浄効果を考慮すると、もう少し早く下低下することが期待できるはずである。
・上記の確認を含め、今後も定期的に測定を継続することが求められる。
日本大学歯学部専任講師 野口邦和