静岡県浜松市の小・中学生医療費助成制度と幼児教育施策を視察
7月15日、共産党川崎市議団の6人(市古映美、宮原春夫、石田和子、石川建二、勝又光江、大庭裕子)は、静岡県浜松市の子育て支援策を視察調査しました。
「子ども第一主義」「国がやらないなら自治体が先行してやろう」と今年4月から、所得制限なしで中学卒業まで医療費助成にふみだす
15日、浜松市役所ではまず、「小中学生医療費助成制度」について聞き取り。昨年の市長選マニフェストで「子ども第一主義」をかかげた市長のもと、今年4月から実施。議会の一部会派から「財政を考えたら、いきなり中3までは早すぎる」「段階的に」などの意見も出ましたが、市長みずから先行して実施した群馬県などを視察。マスコミでもお金がなくて医者にかかれない子どもが増えている、自己負担が払えない、病院に行けず学校の保健室に行く子どもが増えているなどのニュースが出るようになるなかで、所得制限なしで中学卒業までの助成にふみだしました。
「子ども第一主義」とは、子どもと子育て世代をどうするか、人口の3割を占めるこの世代を元気にしないと、市の将来はないと、「基本的には国がやる制度だが、国が動かないなら自治体が先行してやりましょう」という議論があったと言います。
政令市では、さいたま市に次いで2番目です。浜松市の場合、助成制度の3つの基本原則は、①現物給付、②自己負担額1回500円(通院1回または入院1日あたり)、③助成対象は診療時間内、です。助成対象者はそれまでの就学前が約4万6千人で、小中学生9学年で約6万8千人で、延べ11万人以上に。当初予算は、就学前11億8800万円に加え、小中学生分で約9億円増えました。
市民からは、拡充前に「早く確実に実施してほしい」の声が寄せられ、実施すると「東京や名古屋からの転居にあたって、どこに住むか考え、会社に行く距離が同じならば医療費助成がある浜松市を選んだ」「通院医療費の助成が拡充されて大変助かっている」などの電話・メールが寄せられており、なかには「4月から実施されることをわかって、3月末の病院の予約を取り消し、4月にかかった」など、3月の予約の取り消しが多く出たそうです。
幼児教育3年間と小中学校9年間の連携で「人間形成」67園で充実した公立幼稚園、1人ひとりの幼児教育に責任果たす
この後、浜松市の充実した公立幼稚園の状況、取り組みについて聞き取りしました。同市には現在、公立幼稚園が67園、総定員数9,710人に対し、実員は4,821人。正規職員数285人(園長、幼稚園教諭、給食員)、臨時職員数195人(幼稚園教諭、園務員、キッズサポーター等)です。私立は51園、定員1万5,980人、実員1万1,159人。
大きく分けて、私立は市の中心部、公立は市の中心から離れた周辺部に整備されています。公立幼稚園も3年保育です。公立幼稚園の目的は、「生涯教育の推進、生涯にわたる『人間形成の基礎』の育成」「家庭や地域とともに『地域ぐるみの子育て』を推進」「幼児教育から小学校教育への滑らかな接続」「どの子にも平等の教育」など。
幼児教育と小学校教育の連携を基本にし、幼児教育で遊びを通して、義務教育の9年間につなげていく基礎をつくるのが、公立幼稚園の大きな役割と言います。公立が多い背景には、合併前の旧市町村で、1つの町に1つの公立幼稚園をつくってきた経過があります。
入園料は6千円、保育料は月7千円。僻地で園と自宅が離れている家庭には遠距離通園交通費(ガソリン代)への補助があります。園の統廃合で、自宅の近くに公立幼稚園がなくなった家庭には、市が送迎バス(ワゴン車)を出して自宅までの送り迎えをしています。
1人ひとりの園児の発達やニーズに合わせた、きめ細かな教育を実施するために平成16年度から「キッズサポーター」制度を導入し、多人数クラス、障害児への支援が必要なクラスに担任を助けるスタッフとして、現在、58園に133人配置されています。
公立幼稚園でも、預かり保育(延長保育)を18園で実施。午前7時半~8時半、保育終了後~午後6時半、夏休み・冬休みは午前7時半~午後6時半。預かり保育料は、1ヵ月1万円、1日500円です。
公立幼稚園の運営費は、平成22年度当初予算(歳出)で、幼稚園教諭給与、非常勤職員等報酬などの人件費18億1823万円、臨時教諭賃金、幼稚園運営管理、園建設・施設整備事業などの物件費が7億8247万円で、合計約26億円かけています。
平成21年度末で公立幼稚園を全廃(予算ゼロ)にした川崎市に比べ、幼児教育で公的責任を果たすのが当たり前という浜松市の考え方とは、あまりに大きなギャップがあることにショックを受けました。