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学童保育と全児童対策の連携事業(大阪府吹田市)を視察

2008,05,14, Wednesday

2008年5月13日 日本共産党川崎市会議員団

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日本共産党川崎市会議員団は4月14日、大阪府吹田市の学童保育と全児童対策の連携事業について視察・調査のため、吹田市役所で同市職労役員との懇談、市担当部局の説明を受けた後、市立小学校1校を訪問しました。
吹田市では全児童対策事業「太陽の広場」がはじめられましたが、すでに公設公営でおこなわれている学童保育事業との統合・一本化の道ではなく、両事業の違い・独自の役割を認め、「連携」の道を選択しました。そしてその「連携」が現場で実践されています。
市古映美、石田和子、石川建二、斉藤隆司、井口真美、勝又光江、大庭裕子の議員7人と政務調査員2名がこうした内容を詳しく調査するために同市を訪問したものです。

吹田市職労役員との懇談

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14日午前11時から吹田市職員会館で、同市職労役員との懇談を行なった。市職労副委員長、学童保育指導員労働組合書記長、学童保育執行委員長、山田第2小学校(午後の視察先)の学童保育指導員らが対応してくださった。
市内すべての36小学校で公設公営の学童保育
石川建二議員が「川崎市では、全児童対策に学童保育事業を統合・一本化し、公設公営の学童保育を全廃しました。個別の事業として連携・発展させている吹田市での取り組みを学び、子どもの放課後事業のあり方について参考にさせていただきます」とあいさつした。
吹田市では、学童保育事業が公設・公営で市内すべての小学校36校の校内に設置されている。月曜日から金曜日まで、下校時から午後5時まで(午前8時半からの日も)、学校の余裕教室やプレハブ、下足ホールを改築した専用室で行なっている。在籍児童数によって配置指導員数と教室数が定められる。1クラス定員は40名、基本は2クラスで、人数が多くなったところは、学校側と相談し、理科室など特別教室も放課後活用しながら、100名以上の児童を受け入れている学校もある。
全児童対策事業は「連携で一緒に進めよう」と当初から職員組合で議論

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文部科学省の「新こどもプラン」が策定された翌年2003年度から、市が直接責任を負う全児童対策事業の「太陽の広場」事業が開始された。2008年度までに週1日実施が33校に拡大、地域ボランティアのフレンドさん、学習アドバイザーの協力で実施され、「キャプテン」と呼ばれる地域の学校長(元校長)が配置されている。07年11月から3校で週2日、3日、6日実施の拡充モデル事業が開始され、学童保育事業と連携して児童の放課後の居場所づくりを行なっている。
指導員労働組合の書記長は「全児童対策が全国的に進められ、他都市では学童保育がそれに吸収されるなか、組合で議論したのは、すべての児童の放課後対策は、子育て支援として決して悪くない、大いに結構、頑張ろうと。組合は両方を一緒に進める立場だと。その後、行政も全児童対策と学童保育の連携強化を言うようになった」と述べた。
学童保育の遊びの文化を全児童対策事業にも
書記長は、吹田市の学童保育事業の現状と全児童対策事業「太陽の広場」との連携について詳しく報告してくれました。
書記長は「子どもたちが安全に過ごす場を保障することは大切なことで、もっと充実していく必要があるということ、そのために学童保育はどのような役割を果たしていけるのかを考えたときに、学童保育の持っている遊びの文化を地域に発信し、『太陽の広場』の充実に働きかけられないか、などを意見交換し、学童保育が『太陽の広場』をリードして連携していく方針を立てた」と述べ、「全国的に一本化していく動きの中で、いまのところ手探り状態。地域との連携、地域教育協議会と協力して、連携を深めてやっていこうと。『太陽の広場』の拡充が全校に広がっていくだろうが、がんばって学童保育を守っていきたい」と述べた。
また連携の様子について、書記長は「学童保育としても『太陽の広場』の子どもたちとみんなで遊ぶ機会をつくり、『太陽の広場』のフレンドさんにも受け入れられ、ケガの時の対応などもフレンドさんと密に連絡を取るようになった」と述べ、連携は現場からの立場で指導員の意識改革について「学童保育が家庭だとすると、目の前で困っている人がいたとき、縦割りで無視するのでなく、人間として自然に対応するはずという考えで、いまの連携に至っている。そういうなかで行政も考え方が変わり、連携が最優先課題だと位置づけるようになるまで5年かかった」と説明された。
遊びの連携が広がって、メリットがいっぱい
山田第2小学校の学童保育指導員は、「連携で遊びが広がってきて、メリットはいっぱいある。しかしモデル実施2年目で、学童保育と全児童対策が一緒(一本化)になるべきないことも実感している。両方充実させていく必要がある」と述べた。
遊びのメリットの具体例として「学童保育では毎年しめ縄づくりをしているが、『太陽の広場』のボランティアさんから『作り方がわからない』といわれて、子どもたちが『ぼくたちが教えてやる』と一緒にやって、『飾り付けも教えて』と評判がよかった。学童保育も3年生になるとリーダーシップがとれる力がついてくる。こうやって学童ならではのもの、遊びの文化を『太陽の広場』に返せる」と話された。
「一本化はむずかしい。あくまでも学童保育がベースに」
市職労副委員長は、「組合も全児童対策と学童保育を一体化した世田谷方式などを見てきたが、どうしても全児童対策に引っ張られる。学童保育は生活の場で、学童保育と全児童対策は目的が別で、『一体化はまずい、連携だ』と議論を進めてきた。全児童対策は地域のボランティアの方々がやっているので、学童保育の指導員に頼らざるを得ない面が出てくる。学童保育があることが地域の子どもにも喜ばれている。子ども同士の学び合い、班活動、安全確保など、一体化したところはむずかしい。あくまでもベースは学童保育にあると思う」と述べた。
またこの問題での組合の取り組みを説明され、「行政が一本化するぞという方針を打ち出す前に、こちら(組合)から連携方針を出した。早い段階から他都市の視察もして、学童保育指導員のモチベーションも高めながら、取り組んできた。市長も施政方針で『連携が大事』というようになったが、学童保育のたたかいはまだ序盤戦。『太陽の広場』を全校でやるとなると、一本化の条件が整ったということになる。これから本丸のたたかい」と述べ、労働組合の機敏な動きと市民的な共感を得る積極的な政策提案が、学童保育を守る大きな力になっている姿を話しました。
こうした経験を聞いて、石川議員は「学童保育と全児童対策の『住み分け』でなく、2つの連携をうまくやっていることに驚きました」、市古議員は「学童保育の指導員の果たしてきた役割は大きく、全児童対策(太陽の広場)事業にいろんな助言をして、とてもよい働きをしていることに感心しました」と感想をのべた。

「役割が異なるが、両方とも大事、車の両輪」と吹田市担当者

このあと午後1時から、行政のレクチャーを受けた。全児童対策「太陽の広場」を教育委員会地域教育部こどもプラザ推進室長が、学童保育事業を児童部子育て支援室児童育成課長が説明した。
児童育成課長は、学童保育の児童の過ごし方について、「ただいま」と帰ってきて宿題をやり、1年生は3年生を見習うなど異年齢を生かし、班活動を行なっていると述べ、この間、共働き世帯が増え、5年間(平成15年―20年)で育成室学級数は59クラスから68クラスに増え、定員も2,580人から2,930人に増えたと説明。現在籍児童数は2,056人で待機児童が1人いること、障害児も増加傾向で多いところは9人いる学校もあり職員を加配している。今後、大規模化と時間延長への対応を検討中と述べた。
全児童対策と学童保育の役割分担について、増山課長は「全児童対策は安全な居場所、学童保育は子どもの健全育成が目的で、役割が異なるが、両者とも大事で、車の両輪と考えている」と述べ、市民の受けとめはパブリックコメントなどで「両立させてほしい」という意見が多いと語った。
こどもプラザ推進室長は役割分担を明確にするに至った論議、意見交換について「こどもプラザモデル事業の段階で、学童保育を担当する児童部の職員も入って検討してきた」「連携してやっていくと主旨でうたっている。対象児童が異なるということ。学童保育事業の位置づけは、一つは保護者の就労支援、小学校1~3年生対象はこの事業だけで非常に重要」と述べた。
また「これまで大きなケガがないのが幸い」「フレンドさんに見ていただいて、判断に迷うときは学校長(キャプテン=元校長)が判断する。午後5時までは学校長がいないといけないが、それ以降は校長、教頭が残っている。社会教育の立場から校長に管理責任を負ってもらっている」と述べ、「学校内で自分の子どもが活動している限り、おれのところの責任じゃないとは言えない」と協力して運営されている状況を説明された。

落ち着いた様子の「太陽の広場」と校庭で元気に遊ぶ学童っ子

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このあと一行は市のバスで移動し、この日に連携の様子が視察できる吹田市立山田第2小学校を訪ねた。その学校は今年、「朝日新聞」の特集記事(08年3月5日付)でも紹介された学校だ。同校の校長、千里丘中学校ブロック地域教育協議会会長から歓迎あいさつを受けた。
5・6年生はまだ授業中。全児童対策の「太陽の広場」を訪ねると、その日の出席児童たちのランドセルがズラリと並び、出欠名簿が置かれた机が並ぶ。フレンドさんなどボランティアスタッフに見守られながら、子どもたちは将棋を指したり、宿題のドリルの回答に集中し、落ち着いた様子だった。
校庭の向こう側が、学童保育「すぎのこ」。かつての公立幼稚園の職員室だった平屋建ての部屋がいまの学童保育の教室。玄関を上がると畳が敷かれた細長い部屋。奥には水道や冷蔵庫もあり、「生活の場」らしい設備だった。壁に掛けられていた手作りのカレンダーの4月14日のところに、かわいい字で「おきゃくさんがくる」と書かれたシールが張ってあり、この視察が子どもたちの予定に入っていたことが嬉しかった。

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「子どものいいところを見つけるのが役割」と語る学童保育指導員

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校庭では、学童っ子と若い指導員スタッフが「だるまさんがころんだ」や「火水木(ひみずき)」という、いま子どもたちに流行りの遊びに夢中だった。元気に遊ぶ子どもの姿を見ながら、案内してくれた指導員が「一人ひとりの子どものいいところを見つけるのが大人の役割だと思いますが、一人ひとりの指導方針をもって成長を見守る学童保育はそういう役割を果たせますが、居場所づくりの全児童対策とは明らかに役割が違います」と話されていたのが印象的だった。
石田和子議員は「川崎市は『わけへだてなく』という言葉で、学童保育をなくし、わくわくプラザに統合してしまいましたが、目的が違う2つの事業を並立しながらしっかり連携していくこと、児童のそれぞれの置かれた立場を保障することが、本当の『わけへだてなく』といえる」と感想を述べた。

視察で明らかになったこと、注目すべき、参考にすべき教訓

(1)全児童対策事業と学童保育事業の連携を明文化
全児童対策事業である「太陽の広場拡充実施モデル事業(全日実施校)実施要領」でも「拡充実施により、太陽の広場事業と学童保育(留守家庭児童育成室)事業の連携を一層強め、全児童の『共通の居場所』を広く提供する」と明文化している。学童保育事業も1982年に条例化され、新しい総合計画でも、2つの事業を「連携」して取り組むとしているとしている。
(2)注目される連携の様子と両者の努力
「太陽の広場」が小学校により週1日~3日と形態や内容がまちまちなので、連携の仕方はさまざま。双方の連携のためには調整会議が必要ということで、平成19年度のモデル実施要領で「各小学校区に太陽の広場連絡会議を設置する」と定め、同連絡会議が月1回開催されている。(役割=推進本部との連絡調整、プログラムの策定実施、人材の配置等、構成=太陽の広場・留守家庭児童育成室・学校、各関係者)。「太陽の広場」がボランティアを主体に運営されていることから、専門知識を持つ学童保育職員の運営協力が「太陽の広場」のスタッフにも喜ばれ、お互いの協力関係を築く大切な要素になっている。遊んでいる子どもたちには落ち着きがみられ、トラブルはないとのことである。
(3)市職員組合が市民との共同を追求

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学童保育事業が個別の事業としてしっかり位置づけられている背景には、市民の支えがあることも重要な要素となっている。学童保育の職員を組織する吹田市職労では、全児童対策事業を支援する立場からお互い連携することが大切であるという方針を早くから決め、お互いの連携の大切さを広報するチラシ(すいた市民新聞)を15万3千世帯に対し組合員が全戸配布をした。
こうした宣伝・広報活動が、市民世論で学童保育の必要性を認知させ、行政が一本化を掲げることができない状況をつくり出している。また、連携を進めるなかで「太陽の広場」の運営主体となっている地域教育協議会やボランティアの方々との信頼関係を築いている点も、優れた経験である。
(4)障害児への対応が手厚い学童保育
「太陽の広場」への障害児の参加は、当面「保護者同伴」とし、将来的に事業を拡充する中で、障害児が参加することに配慮するとしている。一方、学童保育では、基本的に受け入れており、児童が入学する以前から、検討委員会を設け、経験を積んだ職員と保育園職員との連携で、状態の把握と人的配置を含めた対応策を事前に協議し、受け入れ準備を行なっている。その結果、それぞれの児童の障害にあった体制がとられている。
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