2008年第4回市議会(9月議会)で石田和子議員が代表討論
2008,10,08, Wednesday
7日、市議会本会議で議案採決に先立っておこなった石田和子議員の代表討論はつぎのとうりです。
私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論を行います。
まず、2007年度(平成19年度)の各会計決算認定についてです。
国は、国民には「財政難だから」といって、増税と負担増を押し付け、社会保障制度を「持続可能にするため」などといって、年金、医療、介護などの社会保障制度をいっそう貧弱なものに改悪し、いわばセーフティネットが隙間だらけでネットの役割を果たしきれない事態を招き、格差と貧困を拡大させてきました。
いま、全国の自治体の多くが財政困難に直面しているのは、バブル崩壊後の国の経済対策として、市債発行を充当率まで引き上げながら急増させたため、それがいま、公債費の増となって財政を圧迫し、さらに三位一体の改革で一般財源の減少をもたらしたことなど、国の失政が原因であることは明らかであります。
しかし、本市の財政状況は、国の悪政の影響をはらみながらも、一般的に財政力の豊かさを表すとされている財政力指数では、政令指定都市の中で第1位であり、財政の弾力性を表す指標である経常収支比率でも指定都市平均を下回るなど、相対的に優位といえる状況にあります。にもかかわらず、減債基金からの借入れを行わないと収支の均衡を図れないと、財政環境の厳しさを強調してきました。2007年度は287億円の借入れを行って収支の均衡を図るとしていましたが、実際には17億円の借入れしか行っていません。2005年度は148億円、2006年度は235億円、そして2007年度は287億円の借入れが必要だとしてきた財政フレームは、市民に「そんなに市財政は大変なのか」という意識を植え付け、我慢を押し付けるための、実際にはあり得ない作為的な財政フレームだと言わざるを得ません。それでも川崎市は、本市の財政環境は依然として厳しいとして行財政改革継続の必要性を強調し、市民サービスの削減を合理化しています
そのうえで市長は、私立幼稚園保育料補助の拡充や小児医療費助成の拡充などを、行革効果の還元などと言っていますが、とんでもないことです。これらの事業は「住民の福祉の増進を図ることを基本」とする自治体の使命として、何を差し置いても優先して取り組まなければならない事業であります。当然行うべき事業を「成果の還元」などと、その位置づけを低めるならば「成果がなければ福祉の拡充はない」ということになります。これでは、削るべき、あるいは、急がなくてもよい大規模事業は温存・推進し、福祉の水準を戦前の「恩恵」にまで低めることになるということを指摘しておきます。
行革で2003年4月からの6年間で2,100人を超える職員を削減したと成果を誇っていますが、職場は慢性的な時間外勤務とサービス残業が蔓延しているのではないでしょうか。過労死ラインといわれる時間外勤務100時間以上、もしくは2ヶ月間平均80時間以上となり、産業医との面談を義務付けられた職員が、わずか1年間で108人から223人と倍加しているのです。長期療養者の中のメンタルヘルス不調者の割合は増え続け、2007年度は54.9%と過半数を超えるまでになっています。さらに、2001年度から2007年度における自殺者27人のなかで、精神疾患の治療中または既往があった人が7人になっています。
こうした事態を踏まえても、それでも市長は「組織的に能率的に仕事をするという意識がまだまだ浸透していない証拠」といいきるのでしょうか。職場の実態をリアルにつかみ再検証することこそ市長の責務であると指摘しておきます。
住宅用太陽光発電設備設置補助事業についてです。
補助事業の2007年度予算額は1,800万円でしたが、決算額は半分の975万9千円でした。2006年度は申し込みが135件もあり1,800万円全額を使い切り、なお申し込みを断るほど人気が高い補助金でした。それが、2006年度は1KW当たり5万円、上限20万円だった補助金を、2007年度は1KW当たり3万円、上限12万円に減らしたために、申し込みが110件に減り、2007年度決算は予算額の半分になってしまったのです。
「CO?削減施策のためには、太陽光発電等の自然エネルギーを含む再生可能エネルギーの活用は大変重要」というのであれば、もっと多くの人が太陽光発電を設置できるよう、一件当たりの補助額を引き上げるとともに予算総額を大幅に引き上げることを求めておきます。
保育事業についてです。
2007年の3月に2011年度までの保育基本計画改訂版が策定され、4月には、待機児をゼロにすると市長は言われていましたが、実際には4月時点で465人の待機児童をだしたことで、新規事業も含めた保育緊急5カ年計画が6月に策定されました。しかし、2007年度内の緊急対策も含め、小規模認可保育所10か所を含む15か所、625人の受け入れ増がはかられたものの、保育基本計画改訂版、及び保育緊急5カ年計画策定後1年目の2008年4月時点の待機児童は2007年4月より118人も増えて583人に上りそのうちABランクが201人も占めました。
人口急増地域を始め、格差と貧困が広がる中で潜在的な要求も含め保育所へのニーズが一層高まることは避けられません。新規事業については、園庭がない問題などを指摘してきましたが、定員に満たない状況が生まれており改めて事業の検証を行うと共に、保育の質も含めた市民のニーズを適切にとらえた計画の見直しを強く求め、待機児童解消策として、認可保育所の緊急増設を求めておきます。
公立保育園の民営化及び指定管理者制度について、こどもの育つ場にコスト論を導入すべきでないこと、児童福祉法24条の保護者の保育所を選ぶ権利と保育を受ける権利を保障すべきであること、同法45条の最低基準を理由にその設備または運営を低下させてはならないということをしっかり遵守することを改めて主張しておきます。
教育費についてです。
2007年度は、就学援助費の中の校外活動費が削減されました。社会科見学などに必要な費用について、2006年度までは6500円まで支給されていたものが、小学校で1510円、中学校2180円に引き下げたため、2006年度決算では2250万円だったものが、2007年度の決算額は1219万円と、半減しました。経済的に困難だからと就学援助をうけているのに、ただ市の制度が変わっただけで、総額で1000万円の負担をしなければならなくなったのです。こんな理不尽なことはありません。その前の年は自然教室の食費を全額自己負担にし、その前の年は就学援助から卒業祝い品をなくす。それぞれは予算全体から見れば、わずかな額に過ぎません。それを削るというのはまさに市の姿勢そのものが子育てにお金がかかるという市民の悲鳴を全く無視していることを示すものです。市民の声をうけとめ、教育費の保護者負担を減らすことに全力を挙げることを強く求めるものです。
障害者施策についてです。
2007年度の決算では障害福祉費の不用額が22億円となりました。この年はその前年度に比べて障害福祉予算を実質約2億円削減し、私たちは「応益負担で苦しむ障害者の切実な願いに背を向けるもの」と復活を求めたものです。それでも「このくらいは使われるだろう」と計算してたてた予算にも関わらず、使われなかったわけです。私たちは一貫して、障害者の負担軽減を図らなければ、必要なサービスを受けたくても受けられないと指摘してきましたが、そのことをみごとに証明しているものです。2008年度は7月からの国の軽減策により一層市の負担が減ります。障害者の皆さんの願いを真摯に受け止め、必要なサービスを必要な人が利用できるよう、制度の改善を求めるものです。
原油・原材料高騰被害に対する対策についてです。
原油・原材料高騰が中小零細業者の経営を直撃しています。一刻も猶予できないこうした事態に対して、2007年から私たちは原油高騰対策を求め、今議会でも運送業者のサーチャージ制促進を含めて対策を求めてきました。本市でも、4月から開始した不況対策資金の利率をさらに0,1%引き下げ、10月以降も継続することが約束されましたが、さらなる利率の引き下げや、物価統制令で価格に転嫁できない浴場組合への燃油高騰対策や、石油高騰のあおりを直接受けるクリーニング業界など、深刻な打撃を受けている中小零細企業に対し、直接補てんすることも検討することを求めておきます。
雇用対策についてです。
不安定雇用や就職難が広がる中で、青年の雇用問題・就業確保への支援体制の充実について、私たちは繰り返し要求してきました。2007年度から、市独自で就業支援室「キャリアサポートかわさき」を開設し、若年者のキャリアカウンセリング事業を実施しました。さらに、安定した職を得て、自立したまともな生活を送るためには、実態をふまえた対応と支援が求められます。東京都のように融資制度や家賃補助制度の確立にふみだすよう、求めておきます。
防災対策の要である住宅の耐震補強の促進についてです。
2007年度当初予算では、対象戸数70件、3,000万円に対し、2007年度決算では、実施件数36件、2,665万1,000円という実績です。予定していた件数自体少ない上に、予定件数の半分の実績です。
旧耐震基準木造住宅の耐震補強については、市民の生命と財産を守るべき市の責務からしても、喫緊の課題です。そのことは、防災計画上、被害を最小限に食い止め、震災時の応急活動、復旧活動を迅速に進めるうえでも欠かせない重要課題です。他都市の進んだ事例を参考に、規模とテンポを上げて取り組むことを求めておきます。
介護保険事業特別会計についてです。
2007年度実施した「川崎市高齢者実態調査」でも、老人福祉施設の不足の解消が喫緊の課題であることが明らかでした。5,000人にも及ぶ待機者を放置されていることに一刻の猶予も許されません。庁内あげての取り組みで、多床室の比重を高めて整備を飛躍させ、ここ数年の遅れを取り戻すことを強く求めておきます。
年々悪化する人材確保についても、国まかせにせず、川崎市独自の実効性のある人材確保支援の具体化を要求します。
実態調査のもう一つの特徴は保険料の高さの指摘でした。2004年度調査時から「高い」と答えた方は10,8%も比率が増え、8割に達していることを重く受け止めるべきです。
川崎市が県に出資して1円も使っていない、県の財政安定化資金もあることです。この3年間で37億円になる介護給付費準備基金は限りなく、第4期介護保険事業の保険料の軽減に使うべきです。
介護予防費ですが、2007年度は特定高齢者候補者の選定基準を緩和したにも関わらず、介護予防にはつながらず、1億4,700万円余の不用額をだしています。
特定高齢者は把握できても、実際の予防事業の参加に結びついていない、という点をきちんと分析して、使いやすいものにするよう国にたいして要求していくこと、さらに市独自で介護予防施策を充実させていかないかぎり、まさに介護予防は「絵に描いた餅」になります。
保険料の普通徴収の収納率が確実に落ちています。2003年度と比較しても保険料、利用料の低所得者減免件数のうち、生活困窮者の減免件数が半減していることは、制限がきびしく使いづらい制度であること、制度の周知度が低いことの証拠です。保険料の滞納によってペナルティーを課せられる人もでている状況の中で、減免規定を「使える」基準に改めていくことを要望します。
議案第102号川崎市市税条例の一部を改正する条例についてです。
ひとつは65歳以上の高齢者の公的年金等の受給者から住民税を特別徴収として年金から天引きするというものです。
年金から介護保険料、国民健康保険料、75歳以上の方は後期高齢者医療保険料を、ここからさらに住民税を天引きする、国民そのなかでも、年金暮らしの高齢者にターゲットを定めました。特に高齢者は律儀な方が多く、保険料、税金などの収納率はよいといわれているのに、天引きまでおこなう。天引きされることによって、市民税の減免制度や納税の猶予など納税者の権利を阻害する恐れもあります。年金をやりくりして納税していた高齢者の生活を壊すおそれもあります。
委員会では天引きのメリットを聞かれて、納税者がいちいち払う手間が省ける、合理的になるなど、利便性があがるというやりとりもありました。この理屈は庶民生活の実態をみない、高齢者の気持ちを逆なでするやり方ではないでしょうか。
この間の庶民増税はどれだけ、国民の生活を圧迫しているでしょうか。
後期高齢者医療制度がどれだけ高齢者に負担や医療への不安を強いているでしょうか。そのうえ取りっぱぐれのないようにとでもいうように、天引きまでして庶民から取れるだけとる、さらに特別徴収については、市長会が以前国に要望したということですから、おどろきました。納税の義務はあっても、強制的に年金から天引きすることまで、国民は容認しておりません。
新築の一般住宅における都市計画税の減額制度を廃止することについてです。今回、廃止する理由は「住宅ストックの量が充足されていることに鑑み、目的は達成されている」として、2010年度課税から廃止するというものです。
しかし、耐震改修促進をはかり、改築を促そうとしている時に、減額措置を廃止することは、矛盾するのではないでしょうか。
固定資産税、都市計画税は市の裁量権がきくものです。横浜市では、引き続き減額は継続することとし、6月議会で市税条例の改正を議決しています。その理由として、「家の建設には費用がかかる。すこしでも負担を少なくして建てられるように」とのことでした。
市がすすめる行財政改革のもと、受益者負担が強まっています。なんでも国基準並みにして市民から税金徴収を強化し、増税するのではなく、自治体の裁量権のあるものについて、いまの市民の生活実態からも特に住民の暮らしに直結するものについては、軽減策をとるべきです。
よって、議案第102号には賛成できません。
私たちは、予算議会において、不要不急の大規模開発の見直し、基金の取り崩しによって、市民生活の切実な願いに答えるべきと予算の組み替え動議を出しました。その経過も踏まえ、2007年度決算認定にあたっては、一般会計決算、被保護世帯への上・下水道料金の基本料金減免の復活を求めた下水道事業会計、歳入予算の組み替えとして基金からの借り入れを充てた競輪事業特別会計、港湾整備事業会計、公共用地先行取得等事業特別会計、並びに縦貫道路の共同溝がらみの水道事業会計、工業用水道事業会計については認定できません。
以上の立場から、議案第102号、議案第117号、議案第118号、議案第126号、議案第130号、議案第133号、議案第134号、議案第135号、報告第17号については反対及び認定できないこと、その他の議案、報告については、賛成及び認定・承認することを表明して討論をおわります。
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後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書
本年4月1目から75歳以上の高齢者等を対象とした「後期高齢者医療制度」(その後「長寿医療制度」に名称変更)が始まった。この制度は、財政的観点から医療費を削ることに重点を置き、保険料を年金から天引きする一方、終末期医療や包括払いを導入することなどから、高齢者にとって十分な医療を受けにくくなることが強く懸念されている。
また、低所得層において、従来よりも保険料負担が高くなった例もあり、後期高齢者医療制度加入者の保険料の伸び率が現役世代よりも高くなる可能性がある仕組みとなっている等様々な問題点がある。
75歳以上の高齢者を74歳以下の国民と異なった取扱いとせず、すべての国民の尊厳が尊重される医療制度でなければ、国民が安心し、安定した暮らしを営むことはできない。
よって、国におかれては、最終的に年齢や雇用形態での差異をなくし、医療保険料を国民が公平に負担し、平等に医療サービスを受けることのできる新たな制度設計を行うため、次の事項の早急な実施について特段の措置を講ぜられるよう強く要望するものである。
1 平成21年4月1目に後期高齢者医療制度(高齢者の医療の確保に関する法律)を廃止し、喫緊の措置として、従来の老人医療制度(老人保健法)に戻すこと。
2 速やかに保険料の年金からの天引きによる徴収(特別徴収)を廃止するとともに、65歳以上の国民健康保険料の年金からの天引きも廃止すること。
3 被扶養者からの保険料徴収は後期高齢者医療制度廃止までの間凍結し、被扶養者以外の保険料についても、早急に軽減を図ること。
4 医療保険各法に規定する入院時生活療養費を支給する特定長期入院被保険者を、速やかに70歳以上の被保険者とすること。
5 70歳から74歳までの窓口負担を、平成21年4月1日からも引き続き1割とすること。
6 上記の措置を講ずるに当たっては、地方公共団体及び保険者の負担をできる限り軽減するよう配慮するとともに、国民の間に混乱を生じることのないよう、内容の周知等万全の措置を講ずること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(写真は意見書採択で起立して賛成を表明する共産党議員(左側)他)