”財政が厳しい”論、事実でないことが明らかに~井口真美議員が総括質疑
川崎市議会第4回定例会で10月5日、井口真美議員が日本共産党を代表して総括質疑に立ち、2014年度決算についてただしました。
井口議員は、歳入・歳出の両面から質問し、市長の「財政が厳しい」という結論に矛盾があることを明らかにしました。歳入について、2014年度決算で市税収入が過去最高になったことと、歳出についても、扶助費が引き続き増大と強調していることについて、扶助費の増額分の一つである子育て給付金などは、国からの給付金でまかなわれるものであることとを指摘。現在残高が1822億円ある市の積立金である減債基金からの借り入れについても、今後一挙に巨額の市債を返済する時期も当分来ないこと、2019年度には収支不足が解消すると市が見通しを立てており、あいまいな試算によるその間の収支不足額をもとに”財政が厳しい”と強調することは妥当ではないと批判しました。減債基金の積み立て分を活用すべきだと市長にただしました。
そのほか、学校教職員の欠員による教員への過度な負担や、特別養護老人ホーム整備事業費や、道路の街路樹維持管理費、臨海部の大規模事業などについてもただしました。
質問原稿は以下の通りです(議事録ではありません)。
井口真美議員の質問
私は、日本共産党を代表して、決算審査特別委員会の総括質疑を行います。
最初に、2014年度決算の財政状況と減債基金についてです。2014年度の決算における市税収入は過去最高で、当初予算に照らしても約43億円も増えています。健全化指標の数値は全て基準をクリアしています。2014 年度予算議会での説明でも、市税収入は過去最大となり、当初予算では減債基金からの新規借り入れをせずに収支均衡をはかることができたと説明。前市長が常套文句としてきた”財政が厳しい”という言葉は当てはまらない状況となりました。
ところが「行財政改革に関する計画」「新たな総合計画」策定方針では、今後大きく市税収入が増加することは見込めないと断定。”今後とも本市財政は厳しい状況が続く”との結論を導いていました。私たちは、事実と異なる試算に基づいて次年度以降の財政の厳しさを強調するのは間違いだと指摘してきました。「新総合計画素案」では「今後の収支見通し」を前提として、市の市税収入は人口増などによる納税者数の増加、景気回復による所得の増加などによって堅調に推移していると評価。2016年度124億円2017年度187億円2018年度28億円の収支不足が生じるとする一方、来年2016年度以降は普通交付税の不交付団体へ移行する見込みであり、2019年度以降は収支不足も解消すると予測しています。その結果、“財政が厳しい”という言葉は出て来なくなり、私たちが指摘したとおりの結果となりました。
ところが、「一般会計・特別会計決算見込の概要」では、「引き続き厳しい財政状況」と大きく見出しをつけながら、これを裏付ける内容についての説明はありません。しかし、歳入では、個人市民税が納税者増などで19億7900万円増、固定資産税も家屋の新増築の増加で29億900万円の増など、市民税は2年連続の増収で過去最高額となっています。歳出についても、扶助費が引き続き増大と強調していますが、増額分のひとつである子育て世帯給付金、臨時福祉給付金などは国からの給付金でまかなわれるもので、ことさら強調する理由がありません。「新総合計画素案」でも、「少子高齢化のさらなる進展に伴い、引き続き社会保障関連経費の増加等が見込まれる」から、「計画的に財政運営を行っていく必要がある」とされていましたが、この間毎年人口が約1万人増え、今後15年間も人口増が続く見通しです。そのため、「素案」でも、「日本全体の」少子高齢化状況を根拠に挙げざるをえなかったものです。
そもそも、2016年度124億円、2017年度187億円、2018年度28億円の収支不足の見込み自体、その試算の検証が必要です。2015年度の収支不足見込み額について、2014年2月の「川崎市行財政運営プログラム」(案)では44億円でした。ところが、2014年8月の「中長期の収支推計」では194億円となり、その半年後の「2015年度予算案について」では54億円とされています。わずか半年ごとに140億円~150億円もの推計の誤差が生じた理由について何の説明もなく、また新たに2016年度124億円、2017年度187億円、2018年24億円の収支不足が生じるといわれても説得力はありません。また、「中長期推計」では、2015年以降毎年200億円もの収支不足が生じ、今後10年間で1633億円~3941億円と試算していましたが、今回の決算資料と2015年度予算資料によれば、4年後の2019年以降は収支不足が解消するとされています。この点でも、2016年~2018年の収支不足額の見込みの信頼性が問われます。
仮にこの収支不足額を前提にしたとしても、減債基金の借り入れをすればすむことであり、収支不足が解消される2019年以降に返済する計画をたてれば済むことです。本市の減債基金の残高は、現在1822億円、2017年度末の残高見込み額は1963億円余、約2000億円に上ります。この3年間で減債基金から126億円の借入れをしましたが、その間、残高は平均140億円ずつ増え合計で459億円増加しました。このまま積み立てをしていった場合、10年後には3000億円を超えると予測されます。分科会のやり取りでも、最低でも「2500億円を超える」との答弁がありました。2019年には収支不足が解消される見通しなわけですから、今後3年間の収支不足の339億円全額を借り入れたとしても、“財政が厳しい”論拠にはなりません。
減債基金の積み立てを行わなかった場合の国からのペナルテイについて質問したところ、実質公債費比率が18%を超えると起債について許可が必要となり、25%を超えると起債が制限されるということでした。本市の今後の実質公債費比率の見通しについて分科会の答弁では、「2021年度に11.6%でピークを迎え、その後低下していく」とのことです。そこで、今後3年間積み立てを行わなかった場合の実質公債費比率について質問したところ、昨年の決算では、2013年度の実質公債比率9.1%が、その後3年間積み立てを行わなかった場合には11.8%になるとの答弁でした。2014年度は8.2%であり、同様に積み立てをしなかった場合、「11.2%になる」とのことでした。今後3年間の積み立てを繰り延べし、約1000億円を中学校給食の実施など市民要求の実現に使ったとしても、何の問題もないではありませんか。この点でも、“財政が厳しい”論は通用しません。
地方自治体の使命は「福祉の増進」にあります。扶助費など社会保障費が予算の中心であることは当然です。川崎市の財政状況は現在も将来的にも「引き続き厳しい」状況とはいえないことが明らかになったわけですから、“財政が厳しい”という主張を持ち出すのはやめるべきです。市長に伺います。
13款1項3目教職員人事費に関連して、公立学校における定数内欠員についてです。2014年度の定数内欠員は317人、総務分科会でも質疑したように、2015年度の定数内欠員はさらに増え326人ということです。欠員は、2010年度の189人から年々増加し、2002年度の118人から見ると3倍にもなっています。退職者もいるのに、275人しか募集せず、採用も284人しかしないというのはどういうことでしょうか。分科会での「今後予測されている児童生徒数の減少期を見据え、将来的に教員の現職定数を超えることのないよう、現段階から慎重かつ計画的に職員配置を行っていく必要がある」との答弁を聞くと、本気で定数内欠員を減らそうという決意はないのではないか、それどころか、2017年度に予定されている指定都市への教職員定数などの権限委譲に向けての布石を打っているのではないか、との疑念すら沸いてきます。特に欠員が多いのは中学校と特別支援学校です。いまいる子どもたちにどう責任をもっていくかです。欠員の補充を1年任期の臨時任用の教員で補っていますが、不登校対策の強化が求められる中、非正規の教員にそういう責任や負担をかけていいのでしょうか。川崎は中学生殺害事件もありました。これだけの欠員を放置しておいて、いくら不登校対策といっても、とても十分な体制はとれません。不登校対策や生徒一人ひとりに目がゆきとどく教育を実現するためにも定数内欠員を早急に改善する、そのために採用人数をもっと増やすべきではないですか、伺います。
教員が十分補充されず、不登校児の対応が求められる中、教員の多忙化、現職死が増えています。現職教員が14年度だけでも8名亡くなっています。その中には、連日残業していた教員が帰宅途中のコンビニでの突然死、現職の校長が学校で倒れて死亡、また自殺者も出ているなど、明らかに過労死や過労自殺の疑いがあります。厚労省は、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」をはじめ、繰り返し月45時間以上の超過勤務により、脳・心臓疾患の危険が高まるとして、時間外労働時間の限度を月45時間以内とするよう求めています。中学校の教員数は約1600人ですが、教員全員が提出したものでない時間外勤務記録簿で自主申告した記録だけでみても、2014年度、月45時間以上残業した教員は460人前後、過労死ライン月80時間を超えている教員は40人前後います。自主申告の時間外勤務記録簿ではなく、横浜市のように全教員の勤務時間調査を行うべきと要望してきましたが、改めて伺います。神奈川労働局は「労働時間の適正な把握のために」という通知を出し、使用者の講ずべき措置として「始業・終業時刻の確認・記録」をあげ、記録方法として原則的には「タイムカード、IC カードなどの客観的な記録」を指定し、「自己申告による労働時間の把握はあいまい」であり「やむをえない場合」に限ると述べています。学校現場でもいまこそ、タイムカード方式にすることが必要と考えますが、伺います。
教員の精神疾患も増えており、毎年60人前後の休職者が出ています。厚労省労働衛生課によれば、一般労働者における精神疾患による休業者の割合は0.3%ですが、川崎市の教員の場合は1%と一般労働者の3倍以上に上っています。教職員でみても、文科省の人事行政状況調査によれば、教職員の精神疾患による病気休職者の割合は0.55%で、川崎はその約2倍です。この現状を深刻に受け止め、その原因と対策をどうとるのか、真剣に対応しなければならないのではないでしょうか。伺います。現職の教員が亡くなるということは、子どもたちにとっても学校にとっても大変な事態です。「昨年度に現職死亡された8人については、特段の報告がなかったことから調査はおこなっていない」と分科会では答えられました。事態認識があまりにも欠如していませんか。過去3年間の現職死された教職員一人ひとりについて、その理由、勤務状況などを調査すべきと思いますが、伺います。
官公需発注についてです。 今回工事契約について、伺いました。分科会でも市内中小企業が受注しやすい環境づくりをすすめ、市内経済の活性化や中小企業の育成などにつとめていく、ということが答弁されました。昨年6月からの「工事請負における入札契約制度の見直し」において、最低制限価格の算定における直接工事費の算定率を国のモデルを上回る95%から100%に引き上げました。しかし、一般管理費の算定率は国のモデル同様の55%で変更はありませんでした。これを引き上げて最低制限価格を引き上げることについては、国や他都市の動向を注視していきたい、ということでした。「公共建築工事共通費積算基準」では、例えば新営建築工事では5000万円と50億円以上ではその上限額で見た場合、現場管理費率はそれぞれ15.96%、8.22%、一般管理費等の率はそれぞれ10.23%と8.41%と小さい価格の工事のほうが高く設定されています。このことは小さい価格の工事では、現場従業員給与分である現場管理費、本店および支店の従業員の給与や会社利益分である一般管理費等の占める比率が高くなることを認めているということです。直接工事費は100%ですが、それ以外は一般管理費55%、現場管理費80%、共通仮設費90%ということでは、直接工事費以外が占める割合が高い工事は必然的に最低制限価格率が下がることになります。この実態からみて、せめて金額の小さな工事については、一般管理費基準を大幅に引き上げていくことが必要ではないでしょうか。うかがいます。
7款3項1目中小企業支援費の「ものづくりナノ医療イノベーションセンターを活用した市内企業の医療分野進出に関する支援業務委託」について伺います。本事業は、約1400万円で産業振興財団が受託しています。昨年の予算議会の議論の際、研究者と企業が高度に専門的かつ最先端の研究開発に取り組むことが想定されているから、産業振興財団以外の専門機関を当初想定されていたと確認していました。ところが、産業振興財団が受託しています。理由は、公募したにもかかわらず、産業振興財団1事業者しか参加しなかったとのことでした。それでは、どのように周知したのか、入札の周知方法、公告期間と事前の問い合わせ状況について伺います。
次に、産業振興財団が受託した場合については、1400万円もの委託費が必要なのかということです。業務委託報告書にも、「市内中小企業対象2000社を対象に実施しているアンケート調査において、毎年のように廃業が確認されている」と記されているように、アンケート調査、ヒアリング調査、市内企業への情報発信は、産業振興財団の本来業務です。その範囲で、今回の調査結果は、十分に作成可能な内容ではないでしょうか。予定価格を算定した川崎市として、1400万円の試算根拠について、明確にお答えください。 今回の報告書では、意向調査だけで、ナノ医療イノベーションセンターを活用して市内企業が医療分野に進出することは、できないと考えますが、具体的に市内中小企業とのマッチングを可能と考えているのか、伺います。
老人福祉費民間特別養護老人ホーム整備事業及び介護保険事業特別会計に関連して伺います。2014年度の特別養護老人ホーム整備事業費は、7億6千万円余でした。第5期期間中の特別養護老人ホームの増設は10ヵ所、定員903床増に対し、有料老人ホームは特定施設入居者生活介護型と住宅型あわせて34ヵ所、定員1,700床増加しています。あまりにも特養ホームの増設が少なすぎるために、有料老人ホームが急増しているともいえます。特養ホームの待機者が今年4月5307人、そのうちなるべく早く入所したい人は3,844人です。高齢者実態調査によれば85歳から89歳までの単身高齢者は4人に1人、90歳以上は5人に1人です。1人くらしの方の51%が緊急時の為に自宅以外で暮らしたいと答えています。超高齢化の時代、地域の見守りや在宅介護サービスだけでは暮らせない1人暮らし,老老世帯などが今後も増え続けると考えます。第6期期間中の整備計画の上乗せをすべきと思いますが伺います。
12款消防費、消防職員定数の欠員について市長に伺います。消防職員定数は、2013年度に条例改正され、1,387人から2014年度1,403人となりました。ところが実際の職員数は、改正後の2014年度,1,383人、2015年度、1,382人で、市条例改正前の定数1,387人にも2年連続で達していません。欠員数は21人にものぼります。国の「消防力の整備指針」に基づく職員数1,545人からすると163人の差があることもわかりました。分科会において、消防局長は「若手職員の転職による退職、他都市消防本部への就職」等といった理由により欠員が生じていることから、欠員が生じる要因を総合的に判断するとともに、これまで以上に魅力ある組織作り、働きやすい職場環境づくりを推進し、欠員の解消に取り組んでまいります」「国基準の定数について、今後とも関係局と十分協議しながら、必要な職員数の確保に努めてまいりたい」とのことでした。
首都直下型の大地震や大水害がいつ起きるかもわからない状況の下、市民の生命・財産を守る為に、市長として、まずは、消防職員の欠員の解消に全力を挙げるべきです。「職員採用計画」の人数をもっと高めるなどの対策が必要と考えますが、市長の欠員解消策の決意と対策を伺います。国基準の定数についても関係局と協議のうえ、計画的に必要な職員の確保をすべきです。伺います。
病院事業会計に関連して市立川崎病院の精神科救急についてです。川崎病院は、精神科救急の県内4県市協調による基幹病院に指定され、夜間、土日、祝日における「警察官通報等による措置入院等の3次救急患者」や「医療保護入院などの2次救急患者」の受け入れを担っています。ところが医療従事者の確保、とりわけ精神保健指定医の資格を有する精神科医の確保が不十分なため、実態は火曜日の夜間のみしか受け入れていないとのことです。分科会では病院局長から、「早急に解決すべき問題のひとつとして認識している」「これまで以上に関係局との連携を図るとともに、関係団体にも、今後、協議をさせていただきながら精神保健指定医をはじめとする医療従事者の確保などに取り組んでまいります」との答弁がありました。2014年度、所管する健康福祉局と病院局、消防局の関係課による庁内検討会議を3回行い、今年度、具体的な解決策について協議を進めるとのことです。聖マリアンナ医科大学病院での精神保健指定医取り消し問題がおこりました。こうしたときだからこそ公立病院として川崎病院の果たす役割はさらに大きいと思います。財政局も含めた庁内検討会議の実施と今後の取組について市長に伺います。
8款8項1目および11款1項1目に関連して、街路樹の維持管理費についてです。道路や街路樹、公園の苦情件数が毎年増え続けていますが、昨年の決算審査特別委員会で指摘したように、維持管理が間に合わず、雑草の生い茂る公園や歩道まで歩行者に当たるほど枝が伸びた街路樹が、未だに改善されていません。街路樹の維持管理費の推移で見ても、2010年度から2013年度の推移でも357万円、764万円、565万円、583万円、と予算に比べて決算が下回っています。そして、2014年度は、なんと1239万円を使い残しています。昨年度といえば、国からの予算配分の変更を過剰に喧伝し、予算執行を1%抑制すると共に、財政が厳しいからと、市民サービスはゼロベースで見直すとしていました。そのさなか、年末の補正予算で建設緑政費の羽田連絡道路整備の先行調査の前倒しのためには、2000万円予算を流用して充てています。市民の要望が強い街路樹の維持管理費こそ予算を確保して使い切ると同時に、予算流用も行って前倒しで行うべきではないでしょうか、市長に伺います。
9款2項港湾建設費、臨港道路東扇島水江町線について伺います。市民分科会の審議では、なぜ、540億円もの整備費が必要なのかは、第三者の有識者で構成される事業評価監視委員会で事業内容が確認されていることから妥当だとしていますが、どうしてその金額が必要なのか、事業評価監視委員会が確認しているから妥当だというのでは、その根拠は分かりません。つまり、川崎市としては確認していないということですか、伺います。また、この橋は、国道ではなく、市道に指定する予定とのことです。ということは、出来上がった橋の管理は本市の責任で行うということです。その際の維持管理費をどのくらい見込んでいるのか伺います。
港湾事業特別会計決算1款2項3目川崎港利用促進コンテナ貨物補助制度についてです。2014年度では、コンテナ1FEUあたりのコンテナ施設利用料収入が約5800円で、補助金が5000円であり、その差がほとんどなく見直しが必要との指摘に対して、補助単価を今年度から約3000円にしたということです。今年度の補助総額は、2014年度決算額を当然下回ると考えますが、見通しについて、見解を伺います。また、直接的なインセンティブを行わなければならないというのは、港湾利用の必然性が低いことをあらわしていると思いますが、後何年、このような制度に頼るつもりなのか、見解を伺います。
以上で質問を終わります。