臨海部で9.6mの側方流動、1.7万KLのオイル溢出と予測~コンビナート研究の報告会開かれる
日本共産党川崎市議団が早稲田大学理工学術院の濱田政則教授に委託していた、臨海コンビナートの地震防災に関する研究の報告会が、10月28日おこなわれました。
研究内容は地震動による川崎市臨海コンビナート(浮島、千鳥、水江、東扇島、扇島)の液状化および長周期振動による被害の予測です。
濱田教授は、(1)東北地方太平洋沖地震(2011年)による臨海コンビナートの液状化、(2)東京湾北部地震による液状化および側方流動の予測、(3)東海地震及び東南海地震連続発生によるオイルタンクのスロッシング振動の予測、(4)護岸被害による直接被害額の算定、について報告しました。
衛星写真判定や現地調査から東北地方太平洋沖地震では、東扇島、扇島、浮島、水江で噴砂が確認でき、確認できないところでも臨港消防署千鳥町出張所にて観測された地震波と埋立地の地盤ボーリングデータから下層部で広範囲に液状化が発生していたとみることができると指摘しました。
そして東京湾北部地震を想定(5地域の最大課速度555~757Gal、震度6強~7)した場合、護岸構造を考慮すると、予測される液状化層の厚さと護岸の水平移動(側方流動)量は、東扇島で9.0mと8.0m、扇島で8.5mと9.6m、浮島で9.0mと3.5m、千鳥で9.0mと2.8m、水江で8.0mと5.1mに達すると報告。
水平方向の変位や地盤の沈下等により発生する地盤のひずみがオイルタンクに与える影響は、浮島、水江、東扇島の地域では、15%(43基)が1.0%以上の水平方向のひずみを、12%(36基)が1.0%以上の垂直方向のひずみを受けると推測できると述べました。
また、航空写真から判定したタンクの直径・高さ・液面高さ(内容量)を用いて、東海地震及び東南海地震連続発生を想定した場合に内容物がタンクからあふれ出る量(溢出量)は、水江で5基から43.6KL、東扇島で6基から6,036KL、浮島で31基から8,976KL、根岸(横浜市)で6基から2,354kL、合計48基から17,410KLが溢れると推測できるとのべ、オイルが運河や東京湾に流出すると火災の危険、火力発電所や湾内物流の長期停止などにつながる可能性があると指摘しました。
護岸移動による被害額は、構造資料などが入手できた検討対象護岸約30km(重力式17km、矢板式13km。検討対象外は約16km)のうち護岸移動量2m以上(全損)の総延長は約10kmと予測され、護岸の被害額の総計は約282億円と見積もりました。
最後に濱田教授は、臨海部コンビナートの防災問題は、川崎だけでなく京葉地区も同様であり、東京湾岸の機能が停止したら首都圏全体の問題にもなること等から、経産省・国交省・文科省など関係省庁や中央防災会議、東京湾岸の1都2県、土木学会・建築学会や日本地震工学会、日本学術会議などが協力して、「大都市圏臨海部の地震防災性向上に関する協議会」を設置して、臨海部の地盤・護岸および危険物施設等の実態調査と情報公開、危険箇所等の被害予測および社会・経済への影響調査、対策の検討、法制度等の整備等をすべきと提言。今回は、データの収集・調査に臨海部企業の協力がほとんど得られなかったなかで取り組まざる得なかったけれど、そうした機関ができることにより正確な研究のために必要な協力もえられることになるだろうと述べました。
濱田教授の研究の詳しい内容は後日、掲載する予定です。
【更新2012.11.5】濱田講演で使用されたパワーポイント資料と講演の動画(約1時間17分)を掲載しました。http://www.jcp-kawasaki.gr.jp/archives/6363