横浜市総合リハビリテーションセンターを視察
2008,05,23, Friday
川崎市の「川崎市リハビリテーション福祉・医療センター」再編整備計画は、基本的な考え方として「病院での急性期治療・急性期リハビリテーション・回復期リハビリテーションを受けたのちの、社会復帰までに必要なリハビリテーション・社会生活支援および、その後の障害管理を担う」としています。
共産党川崎市議団は4月25日、川崎市のリハビリテーションセンターに必要なありかた・機能を検討することを目的に、横浜のリハビリテーションセンターを訪問、設置の考え方・施設の機能・障害者に対する支援のあり方の説明をうけました。井口真美、宮原春夫、石川建二、大庭裕子、勝又光江の各議員が参加。社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団庶務課長、横浜市総合リハビリテーションセンター総務課長、横浜市健康福祉局生涯支援課障害支援係長、社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団横浜ラポール館長、横浜市健康福祉局障害福祉課長さんらに対応いただきました。
横浜市総合リハビリテーションセンターについて
施設紹介DVDを視聴したあと、調査項目にそって総務課長より説明があった。以下、主な説明の内容。
施設のコンセプト…障害を持った人が、地域で暮らすための支援をすることに特化している。入所や入院施設もあるが、利用期間は短く、入院で平均1か月。入所で5ヶ月弱。障害の様子をよくつかみ、自宅に帰るために必要なプログラムを組み立て、その人に見合ったゴールを設定して、達成したら地域に帰る。
「総合」の意味は…障害児は早期発見、早期療育が決定的。区の福祉保健センター、療育センターと連携し、リハセンが中核施設としての機能を持つ。知的障害者はこの支援の範疇に入る。療育センターは基本的に3:1の職員配置を行い、毎日通ってもよいとしている。
医療との連携について…19床の入院施設を持つ病院を併設。しかし急性期の患者さんは受け入れない。病院で治療と一定のリハビリを受けてきた回復期に入った患者を受け入れている。そういう段階では医療施設は不可欠。リハビリも医療行為として行っている。
その人がどうやったら自宅に帰り社会復帰できるかという相談業務、プログラム作成が重要。OT,PTなどのほかに建築士(住宅改造の設計をする)、工学技師(障害にあった機械の開発、作成)など23職種の専門家を職員として置いている。
指定管理者について…もともとこのリハセンを専門的に運営するために事業団を作った。そうしないと、直営では異動があって専門家が育たない。たまたま自治法の改正で委託の場合は指定管理者にしなければならなくなったので、平成18年から5年間の指定管理にした。その後どうなるかはわからないが、他の福祉施設(調べたところたとえば療育センター)を指定管理にする条例では、特に問題がなければ引き続いて指定管理者に指定するという条文をいれているところもある。これから民間にするのなら独立行政法人という方法もあると思う。
施設見学
福祉機器を研究・開発する部門では、さまざま工夫を凝らした機器を開発しており、商品化もされているという。(写真は開発した機器の紹介パネル)
自立訓練のためのアパートの一室を模した部屋もあった。風呂や台所、居間があり、職員のサポートを受けながら、そこで食事を作ったり風呂やトイレを使う訓練を行う。
●障害者スポーツ文化センター・横浜ラポールについて
館長の説明は以下のとおり。
障害者にとってスポーツの意義…「障害者はスポーツをしなければならない」(大分車いすマラソン8連覇のドイツ人の言葉)。スポーツを通して体力をつけ生きる勇気をもらうことができる。
施設のコンセプト…リハビリセンターと連携して、リハビリの一環としてのスポーツを指導するが、リハビリそのものを行うものではない。それはあくまでもリハセンの仕事。ラポールでは生涯スポーツへの過程を支援する。だれでも一人でもくればすぐにその人にあったスポーツを紹介し、継続するよう支援する。職員も専門知識を身につけている。基本的に障害者は無料(ボーリングのみ障害者は一ゲーム200円)。利用者は年間約10万人。うち、川崎市からも6000人利用している。
アリーナ…バスケットコートが2面、ゆったり取れる広さ。2階は手すりつきのランニングコース。視力障害があっても走ることができる。歩行訓練をしている人がいた。体の半分に麻痺のある人が卓球を楽しんでいたり、車いすでバスケットの練習をしている人も。
ボーリング場…たいへん人気が高い。視力障害者のために、残ったピンを手で触って確認できるようになっているなど、障害に対応するようさまざまな工夫がされている。
サウンドテーブルテニス…視覚障害者が、ボールの中の砂の音を頼りに行う卓球。このために防音室がある。川崎でもうるさくないところでやりたいという要望が強い。
プールは車いすでも入っていくことができ、手すりなど完備している。
このほかたくさんの種目に対応した施設があり、トレーニングルームには、車椅子を動かすのに必要な筋力を付けるための機械など、障害者の特性に合わせた機材を導入している。
●視察で学んだこと
川崎市では、リハビリテーションセンターという名前でも、実際に社会復帰のためのリハビリが十分に行われているとはいえないのではないかと思われました。本来、リハビリとはその人が持っている機能を最大限生かして社会生活に適応するための能力を培うことであり、どういう障害を対象にしてどういう支援を行うかというコンセプトによって必要な施設がおのずから明らかになるということを学んだ。スポーツセンターも川崎市は今後整備を予定しているが、これもどういうコンセプトでつくるかということが明らかでないと、お金がかかるだけに、中途半端なものになる。リハセンの再編整備に当たって、市内の障害者がどういうリハビリを行いたいのか、そもそもどういう施設が必要なのか、をしっかりととらえることが前提であり、そのうえで必要だということになった施設はきちんとつくることが必要であると感じた。