2009年第2回川崎市議会定例会 日本共産党代表討論
2009,06,24, Wednesday
6月24日に石川建二議員がおこなった代表討論は次のとおりです。
私は、日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について、討論をおこないます。
議案第60号川崎市保育園条例の一部を改正する条例の制定について、議案第69号川崎市大師保育園の指定管理者の指定について、議案第70号川崎市坂戸保育園の指定管理者の指定について、議案第71号川崎市宮崎保育園の指定管理者の指定について、議案第72号川崎市宿河原保育園の指定管理者の指定についてです。
これらの議案は、建て替えによる民営化と指定管理による民営化に関するものです。公立保育園の民営化にあたって、最も懸念されるのは保育の継続性とその質の担保です。市は引き継ぎ期間を6ヵ月とし、その間、共同保育を行うことで、担保できると説明してきました。
しかし、審議の中でも明らかになったように、その実態は、引き継ぎ期間中にも関わらず、指定管理者から派遣された保育士が退職してしまったり、看護師の配置が遅れるなど、保護者に大きな心配と職員へ大きな負担をもたらすものとなりました。
今年度指定管理となった南平間保育園では、昨年12月に引き継ぎ保育士が退職、その補充に主任保育士が当たり、事業者から保護者に対し、お詫びと対応策についての文章が配布されるという事態を招きました。さらに、同保育園では、1月に配置される予定の看護師が見つからず、引き継ぎ直前の3月24日に配置され、その看護師も事情により4月で退社、そのため市の看護師も引き続き支援に入らざるを得なくなるなど、混乱がありました。宮前平保育園でも、2名が12月末で退職、白鳥保育園でも10月末で主任保育士が退社するなど、今年度指定管理によって民営化した、すべての園で、引き継ぎ途中の保育士の退職がありました。
こうした事態に、こども本部長も「市が考えている通りの引き継ぎができなかった。ご迷惑をおかけしました。」と引き継ぎに混乱があったことを認めざるを得ませんでした。仕様書に引き継ぎ条件などを明記しても、そのとおりに実行できているとは言えない実態があります。このことは、「問題が起こらないように指導してゆく」とした市の態度では、市の責任を果たすことにはならないことを示しています。
こうした事態を引き起こした原因を明らかにし、民営化により生じた問題が起こらないような、事前の対策を講じるべきです。
このような混乱の根底には、職員の処遇問題があり、人材不足の原因ともなっています。「市として職員処遇まで立ち入った指導が必要である」と対応を求めましたが、それに対する回答は「保育園の建て替えによる民営化の場合は、国の定める運営費のほか、市独自の補助金等を支弁して、安定した運営がなされている。指定管理者制度の運営についても、同程度の運営費が確保されている。」「運営費が人件費比率などを含め、適正に執行されているか、適宜、職員雇用等、運営状況の把握を行い、安定した運営の確保に向け指導してゆく」というものでした。
しかし、「安定した運営」という言葉とは裏腹に、民間事業者の中で働く保育士の労働環境は改善されず、「給与が低く親元から独立することができない」、こう話す若い保育士は例外ではありません。
現状は、このような労働環境の下で、保育士の必死の頑張りに支えられているのです。しかし、その頑張りにも限界があります。その結果、民間で働く保育士の離職率は、19年度市内事業者を対象とした調査で18.5%にも上り、公立保育園の2.7%と比べ、約7倍にものぼっています。
人材不足は深刻で、民間保育園では、全国から人材を集めるということも珍しくありません。今年度、全国で5か所の認可保育園を開設したサクセス・アカデミーが指定管理者となった南平間保育園では、その職員7割が新規採用の職員で、職員のチームワークを作るのにも大変だったと側聞しています。優れた保育人材を世に送り出していくということからも、公立保育園の果たすべき役割は、大きなものがあります。
今回の指定管理者の選定にあたっては、保護者と行政の話し合いの結果、仕様書に、保育士配置の「バランスのとれた構成」と「未経験の新任保育士を配置する場合には、新人1名に対し教育担当の保育士を1名配置する」ことを明記するなど、保育水準維持のための工夫が盛り込まれるなど改善が図られました。また、選考基準においても、職員の確保や適正な職員配置の項目の評価点を上げる改善も図られました。いずれも、保護者の粘り強い交渉の成果だと思いますが、そのことが、今後の運営の中で、実施される保証がこれまでの審議で明らかにならなかったこと、保育の質が保たれないことへの懸念が払しょくできないことから、本議案には賛成できません。
議案第75号黒川地区小中学校新設事業の契約の変更については、契約の仕方・教育方法などに疑義があり契約締結に反対した経過から、この議案には賛成できません。
議案第78号川崎市職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例の制定についての市長の専決処分の承認についてです。
本議案は、本市職員に対して6月に支給予定の期末手当・勤勉手当支給割合を0.2ヶ月分(10%)、再任用職員は0.1ヶ月分減額しようとするものです。本市では40歳代で概ね8万円が減額され、2回程度の労使交渉で合意としていますが、一般の職員からすれば到底納得しているとは考えられません。
これまでは公務員の夏のボーナスは、その年の7月までの1年間の民間給与実態調査に基づく人事院勧告で決められています。ところが人事院は従来のルールを破り、4月に臨時調査を実施し、しかも、通常では1万1000企業を対面調査するのに、今回は2700社を対象に郵送調査しただけで、前倒しで減額するという前代未聞の勧告を行ったのです。
本市の人事委員会が意見を出していますが、その意見も国の言う通りの内容であり納得できるものではありません。
神奈川新聞が報じた浜銀総研の「県民のボーナス見通し」では、収益悪化を背景にバブル後最低水準に落ち込みそうだ、としているものの、前年比8.2%減であり、公務員一般職の10%減より低いのが実態であることが判明しています。また、今回の人事院勧告によって公務労働者だけでなく間接的に民間労働者のボーナス引き下げの口実に使われる公算も大きいのです。
深刻な経済危機の中で生活破壊が急速に進んでいる状況をみれば、市民の消費の低迷と景気悪化の悪循環を加速させることになり本議案に賛成することはできません。
以上の立場から、議案第60号、議案第69号、議案第70号、議案第71号、議案第72号、議案第75号、議案第78号については反対及び承認できないこと、その他の議案と報告については賛成及び承認することを表明して討論を終わります。