「地方自治法改正案の廃案を求める意見書(案)」(日本共産党提案)
地方自治法の一部を改正する法律案については、本年3月1日に政府が閣議決定し、法案を国会に提出した後、同年5月30日に衆議院で可決され、現在参議院で審議が行われている。
現行法では、災害対策基本法や新型インフルエンザ等対策特別措置法など個別の法律に規定されている場合についてのみ、国は自治体に指示することができるが、本法案は、大規模災害や感染症のまん延など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生した場合には、個別法に規定がなくても国は補充的な指示として、指示権を行使し得ることが最大の問題となっている。
また、補充的な指示の要件となる国民の安全に重大な影響を及ぼす事態については、どのような事態を想定しているのかも具体的に示されていない。
本法案をめぐっては、本年5月21日の衆議院総務委員会における参考人の意見陳述の中で、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態の範囲について、自然災害、感染症、武力攻撃が同時・並列的に議論されてきたが、当該議論にのっとれば当然、武力攻撃等が含まれることになり、結果的に、憲法及び地方自治法を理念的、構造的、機能的に破壊するような改正案になっているとの発言がなされている。
また、平成12年施行の地方分権一括法でも、国と地方は上下・主従の関係ではなく、対等・協力の関係と位置付け、国の関与は必要最小限としてきた流れに逆行するなどとして、日本弁護士連合会や全国知事会は、反対や懸念を表明するとともに、首相の諮問機関である地方制度調査会もかつての答申においては、国が法令や補助金などを通じて地域の課題に関わることで必要以上に画一的な対応が強いられ、住民ニーズからのかい離が生じていると指摘している。
さらに、本年5月11日には、東京都杉並区長を中心とした9市区町村長が、国の補充的な指示について、懸念の声を上げているほか、自治体の労働組合なども反対の声明を出しており、国はこうした意見を尊重すべきである。
よって、国におかれては、国と自治体の健全な関係の維持、発展を妨げ、憲法と地方自治法を破壊する地方自治法改正案を廃案とされるよう強く要望するものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。