2021年第1回川崎市議会定例会 予算組み替えについて
新型コロナウイルス感染症の拡大により、国民生活と経済は先行きの見えない厳しい状況に陥っています。川崎市では、今年1月に即応病床の使用率が90%を超え、救急搬送についても受け入れ先が決まらず自宅待機を余儀なくされるなどの状況がありました。病床を増やし、医師、看護師を確保する財政支援が必要です。また、市民の事業や雇用、生活を守る措置を講じ、新型コロナ収束に向けて感染拡大防止と医療崩壊阻止に全力を傾ける必要があります。
2020年10月から12月期の国内総生産GDPの速報値は、前期に続きプラスにはなったものの、新型コロナウイルスの蔓延により記録的な落ち込みから抜け出せず、リーマン・ショック直後の2009年以来のマイナスなるなど、コロナ禍による日本経済の苦境が続いています。雇用をめぐる環境も厳しさを増しており、新型コロナウイルス感染症による解雇、雇い止めは厚生労働省が把握しているだけで現在9万3千人を超え、実態はさらに多いとみられます。中小業者は消費税の2度にわたる増税で消費不況に陥っていたところにコロナ感染が大きなダメージを 与え、十分な補償もないまま休業要請、時短営業による景気低迷で、三重四重の打撃を被っています。
また、コロナ禍で、子育て世代の貧困率は悪化しており、年間就労収入は母子家庭では平均200万円で、母子家庭の母親を含む、非正規雇用の女性がより深刻な状況に陥っています。社会保障制度は改悪され、高齢化に伴う自然増さえ2021年度予算案では、1300億円も削減しました。年金も4年ぶりに0.1%のマイナス改定です。
川崎市においても、市内の雇用者数は2017年度の調査で77万9千人と5年間で約10万人増えているものの、非正規労働者が増大していることなどから、年収300万円未満は約3万2千人増えて、市内労働者の約43%に上り、一方で年収1,500万円以上は約2倍となっており、貧困と格差が広がっています。
こうした中、地方自治体には国の悪政から市民生活を守る防波堤の役割を果たすことが求められていますが、新年度予算案は、市民の福祉や暮らし、市内中小企業への支援、雇用対策など極めて不十分なものとなっています。
その一方で、不要不急な大規模事業への予算は大幅に増えており、市民にとって必要のない臨港道路東扇島水江町線整備に約73億円、コンテナターミナル整備事業に約20億円、東扇島堀込部土地造成事業に約7億円など臨海部にかかわるものとして約120億円といった多額の予算が計上されています。
我が党は、市民生活を支えるための緊急課題に絞って、次の組替えの基本方針及び内容により2021年度予算案の再提出を求めるものです。
《組替えの基本方針》
第1に、新型コロナウイルス感染症対策として、現在、神奈川モデル協力医療機関として認定を受けている市内の医療機関に直接的な財政支援を行う。また、高齢者入所施設の介護現場では、直接的な身体接触が必要となる上、クラスターが発生しやすい状況があり感染を予防するためにも、介護従事者への定期的なPCR検査を行うことです。
第2に、子育て世代の賃金・経済状況が悪化する中で、共働きをしなければ生活できない世帯が急増しており、保育園の利用申請率が就学前児童の約4割に上っているなど、かつてない勢いで保育園ニーズが高まっていることから認可保育園の緊急増設を行う。私立幼稚園の入園料について補助制度を創設する。小児医療費助成制度の通院の所得制限と一部負担金を撤廃し、中学生まで拡充する。一人ひとりの子どもに目が行き届き、学習・生活指導などあらゆる面から教育条件を改善する有効策として、少人数学級を小学3年生から中学1年生まで実現すること、小・中学校の自然教室食事代補助の復活などです。
第3に、高齢者に増税・負担が集中している状況下で、介護保険料を第7期の額に戻す。安心して介護を受けられるよう、介護援助手当を復活、特別養護老人ホームを増設し、人材確保が困難な介護老人福祉施設等に職員の定着・確保を図るための支援を行う。敬老祝金・長寿夫妻記念品を復活する。削減した障害者支援施設等運営費の市単独定率加算を復活する。非課税世帯などの低所得の障がい者の医療費を無料にし、 重度障害者等入院時食事代補助制度を復活することです。
第4に、貧困と格差が拡大している状況下で、国民健康保険料の年1万円減額、及び19歳未満の子どもの均等割りの免除、被保護世帯への上下水道料金の減免及び入浴援護事業の復活により、低所得世帯への生活応援を図る。とりわけ、「子どもの貧困」が深刻化する中で、小・中学校の自然教室の食事代補助、生活保護・就学援助世帯の入学祝金・修学旅行支度金・就学援助世帯への眼鏡支給・社会見学等の実費支給補助を復活するとともに、補助範囲をPTA会費、生徒会費、体育実技用具費等にも拡充する。市立定時制高校の夜食代補助を復活することです。
第5に、中小企業活性化条例にふさわしく、工場の家賃や機械リース代などの固定費補助制度創設で中小・零細企業者を直接下支えする。建設業の振興とともに経済波及効果が大きく、市民にも喜ばれる住宅リフォーム助成事業を創設する。雇用を巡る環境が厳しい中、こうした取組により雇用拡大を図ることです。
第6に、防災対策の第一の要である旧耐震基準の木造住宅の耐震化促進を図るため、助成対象件数を増やすことです。
第7に、国際コンテナ戦略港湾関連や、臨海部の基盤整備等への投資、臨港道路東扇島水江町線及び羽田連絡道路など市民生活にとって必要性が示されない2本の橋の整備、高速川崎縦貫道路など、不要不急の大規模事業を中止・延期することで、一般会計の市債発行を抑制し、後年度負担の軽減を図ることです。
《組替えの内容》
歳入予算として、不要不急の大規模事業の中止と基金からの借入れ、取崩しなどにより、後年度負担を軽減するとともに、約131億円を確保します。
歳出予算として、提案いたしましたアからネまでの24事業に充当するものです。この組み換えによる総事業費は約152億円、一般財源で約131億円です。市債の発行は約73億円削減できます。
コロナ禍の中、さまざまな負担増で市民のみなさんの生活が苦しさを増しているおり、こうした市民生活の実態に思いを寄せる議員各位のご賛同を心から呼びかけ、予算組み替えの提案説明とさせていただきます。
1 神奈川モデル協力医療機関1箇所当たり1億円の支援金支給(20億円)
2 高齢者入所施設等の従事者に対する新型コロナウイルス感染症検査の実施
(※本事業は神奈川県が実施主体となり県内の対象施設に対して実施する予定)
3 介護保険料について、基準月額保険料を第7期(5,825円)のまま据え置き (19億4,750万円)
4 特別養護老人ホームの緊急増設(5箇所)(4億1,080万円)
5 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設の人材確保のための補助(1施設当たり500万円を支給)(3億7,500万 円)
6 介護援助手当の復活(6億9,200万円)
7 敬老祝金・長寿夫妻記念品の復活(3,131万円)
8 障害者支援施設等運営費の市単独定率加算の復活(2億9,709万円)
9 障がい者で低所得1、2の方の医療費の無料化(1億75万円)
10 重度障害者等の入院時食事代補助の復活(2億6,178万円)
11 被保護世帯への上下水道料金の基本料金減免の復活(1億7,836万円)
12 被保護世帯入浴援護事業の復活(2,547万円)
13 国民健康保険料について、1世帯年額1万円減額(17億9,119万円)
14 国民健康保険料について、19歳未満の子どもの均等割の免除(10億7,837万円)
15 通院医療費について、小児医療費助成の所得制限及び一部負担を撤廃し、中学生まで無料化(19億3,086万円)
16 認可保育園の緊急増設(120人定員規模のものを10箇所増設)(18億7,143万円)
17 私立幼稚園の入園料について、1人10万円の補助(5億9,840万円)
18 少人数学級を中学1年生まで実施する(7億8,736万円)
19 小・中学校の就学援助費の復活(生活保護世帯等への入学祝金・修学旅行支度金、眼鏡支給・社会見学費等)(2,351万円)
20 小・中学校の自然教室の食事代補助の復活(7,045万円)
21 定時制高校夜食費の復活(69万円)
22 木造住宅の耐震補強工事への補助拡充(200件×200万円)(3億882万円)
23 中小・零細企業への固定費(貸工場の家賃、機械のリース代等)の補助(2億円)
24 住宅リフォーム助成制度の創設(2億円)