台風被害実態に沿って支援を手厚く〜市古議員が先議案代表質疑
11月25日、第5回川崎市議会定例会で、市古次郎議員が先議議案である川崎市一般会計補正予算案について、日本共産党川崎市団を代表して質疑しました。この補正予算案は台風15号と19号により被災した市民や中小企業、農業者への支援のための費用、市施設復旧のための費用を追加するほか、人事委員会勧告に基づく市職員の給与・手当を引き上げる費用を手当する内容のものです。
市古議員の質問原稿は次のとおりです。(議事録ではありません)
代表質疑(分割先議)
私は日本共産党を代表して、提案されました諸議案のうち議案第187号、議案第190号令和元年度川崎市一般会計補正予算について質問いたします。
市民ミュージアムについてです。
議案第187号で計上された2100万円の補正予算は、被災した収蔵品を保全するために冷凍倉庫に移動し、保管するためのものとのことです。すでに収蔵品にカビなどが発生しているとの状況も報告されています。質量ともに全国有数の重要な収蔵品群について、これ以上状態悪化しないよう保全することが取り急ぎ求められるため、この予算は必要なものと考えます。しかし、市民ミュージアムのある等々力はハザードマップ上でも5mを超えて10mまでの浸水が予測されていたことからすれば、市民ミュージアムの収蔵庫が地下に置かれていたことも含め、水害対策がどのように行われていたのかは検証されなければなりません。
指定管理にあたり2016年4月に市民文化局が示した仕様書では「災害対応マニュアル等の作成」という項目を設け、「対応マニュアルを作成し、適宜必要な訓練や講習等を実施すること」とされていました。また、これを受けた、共同事業体による応募した際の事業計画書には「ハザードマップの確認」との項目が示されていました。しかし事前の調査で、その実態は「市民ミュージアムがハザードマップのどこの位置にあるのかの確認を行うこと」にとどまっており、「今年5月の職員全体朝礼で館長からハザードマップに関する話を行った」とのことでした。
ハザードマップの浸水深に応じた対応マニュアルの作成や訓練や講習などが行われていたのか、伺います。ある市民ミュージアムの関係者は「過去に収蔵品を上層階に移すべきと検討されたことがあった」と述べていますが、ミュージアム内部ではどのような検討が行われたのか、伺います。
中小企業・小規模企業復旧支援事業費について伺います。
議案第187号の補正予算では、中小企業・小規模企業復旧支援事業費として、台風15号により被災した、市内中小企業の機械設備等の復旧に要する経費の一部を補助するとして、1億円の補正予算が計上されています。これは補助率4分の3、上限額3000万円とする神奈川県との自治体連携型補助金です。さらに議案190号の補正予算では、中小企業・小規模企業復旧支援事業費として、台風19号により被災した市内中小企業の機械設備等の復旧に要する経費の一部を補助するとして33億1500万円余の予算を計上しています。この事業費は、被害額4000万円までは、台風15号の時と同様の自治体連携型補助金を使って、被害額4000万円を超える部分については、被害額の10%、上限額3000万円を補助するものです。被害額が4000万円を超えた部分については市の単独補助金として1億5600万円が計上されています。
台風19号の被害に遭われた高津区の町工場のお話では、浸水は最大3m、2階に避難された方も腰の高さまで水が押し寄せてきたとのことです。1階の機械は全て浸水し修理不能、納品間近だった製品も浸水、被害額は1億円以上に及ぶということです。周辺の工場も被害額は最大で3億円以上、1億円を越える工場も数件あるとのことです。議案190号の制度を適用した場合、例えば1億円の被害に遭われた事業者には3600万円しか払われず、6400万円は自己負担となってしまい、融資を受けることをためらい事業継続をあきらめる事業者がかなり出ることが予想されます。補助額の拡大など、更なる抜本的な支援が必要と考えますが、伺います。
次に休業を余儀なくされた労働者の給与について伺います。「事業は休業中でも従業員の給料は払い続けている。大切な従業員をクビにすることはできないが、あと2か月しかもたない」とのことです。厚生労働省は台風19号の災害に伴う雇用調整助成金の特例措置を追加実施しました。これは被災により事業活動が縮小して休業等を行った中小企業で働く労働者に賃金の5分の4、最大年間300日助成する措置です。市の支援メニューには見当たりませんが、神奈川県も対象地域になっていますので、本市でも活用は可能と思いますが、伺います。
被災された事業者の中には、廃業を余儀なくされる方もいらっしゃいます。浸水し修理不能となった大きな機械の処分に35万円もかかってしまうということで、「せめて処分費用だけでも援助してもらえないだろうか」という話もお伺いしました。今回の被災が原因で止む無く廃業を決断された市内事業者の方々に、修理不能となった特殊機械の処分費用補助を行なうべきと思いますが、伺います。
加えて台風19号被災直後、事業系被災ゴミを市が回収することを知らずに、ご自身で負担し被災ゴミを処分した事業者の方もいらっしゃいます。制度を知らなかったという理由だけで負担が大きくなってしまうのは不公平です。領収書等を元に償還払いすべきと考えますが、伺います。
被災農業者向け経営体育成支援事業費についてです。
今回の補正は、台風15号の被害に対し1050万円、台風19号の被害に対しては630万円の補助を行うというものです。
何れも、国の「強い農業担い手づくり総合支援交付金」を活用したもので、市内農業者の生産設備等の復旧に要する費用の一部を補助するものです。
私たちは、11月5日にJAセレサを訪れ、市内農家の被災状況を伺いました。市内の農家でも深刻な被害が発生しています。JAセレサの調査では、台風15号と19号を合わせ、市内の被害件数は作物被害244件、施設被害101件、被害総額は最大で3254万9千円と想定されています。
支援の対象は、ビニールハウス等の生産施設の被害に対して行われるもので、本市のように小規模な生産農家が多いところでは、作物被害への支援は、国の補助金の対象とならないとのことです。しかし、畑に泥が入り込み、土壌に雑菌等が入り込めば、殺菌や次年度の作付けを断念しなければならないこともありうるなど、農作物に対する被害も軽視することはできません。市独自でも支援策を急ぎ検討すべきと思いますが、伺います。11月12日に行ったわが党の第2次の緊急要望でも求めたように、ビニールハウスなど生産施設の被害に対する補助金の申請に際し、国では、工事見積りを3社から取らなければならないとなっており、事業者の見積りを取ること自体が困難な中で、補助申請そのものをあきらめてしまう農家もあると伺いました。補助金申請手続きの簡素化を国に求めるとともに、市としても申請しやすい補助制度に改善すべきと思いますが、伺います。また、ハウス被害など災害によって発生した廃棄物の処理も、現状では有料となっています。国の支援制度の拡充に合わせ、被災者負担を無くし、災害ごみの処分を公的に行うべきと思いますが伺います。
多摩川緑地維持管理事業費についてです。
多摩川緑地維持管理事業費は、台風19号による多摩川河川敷の被害復旧工事を実施するため、2019年度分は約5億4600万円を計上し、2020年度の債務負担行為で3億7600万円、事業費総額は合計約9億2200万円の補正予算を組んで基盤整備を行うものです。
今回の台風では野球のバックネット等、河川敷の施設も大きな被害を受けました。台風への対策はどのように行われたのか、復旧のめどについても伺います。
今回の台風は、多摩川緑地全域にわたって、土砂やごみ・流木の堆積、施設の損傷や流失、洗堀によるでこぼこ等の被害が生じ、2年前の2015年の台風の被害に比べても、甚大であり、そのため予算規模も拡大しています。河川敷のスポーツ施設は、台風被害など受けやすい立地条件ですが、市民にとっては、重要な施設です。簡易な改修で済ませるのではなく、ダスト舗装等、スポーツにふさわしい環境の整備が必要と思いますが、今回の補正予算で整備が可能なのか、できない場合はどうするのか、対応を伺います。
被害者向け住居支援事業費についてです。
台風被害による市営住宅へ避難されている方は、現在でも69世帯で、今後、さらに79戸を受け入れできるようにするための修繕および退去時の修繕費用を市費負担とすることから、合計5682万6千円の補正予算を組むことが提案されました。11月14日現在、台風15号、19号の台風被害により入居希望の問い合わせがあった件数は149件で、そのうち75件は辞退されたとのことです。辞退の理由はお聞きしていないとのことですが、今までの生活エリアからあまり遠くの住宅では、生活再建に支障をきたすとの判断もあったのではないでしょうか。市営住宅に被災された方の中には、お子さんが通う小学校から離れてしまい、「登校時には車での送迎が必要となり車を使っているが、駐車場の確保への支援はできなく、負担となっている」との意見も出されています。被災地の近隣に住宅を確保することが必要と考えますが、見解を伺います。また、その地域の近くに公共の住宅がない場合には、民間の賃貸住宅を市が借り上げ提供する「借り上げ方式」を行い、被災者の生活再建の支援を行うべきと思いますが、伺います。
これから、寒い時期を迎えますが、住宅支援には暖房器具などの貸出や支給はありません。長野県では、台風19号で全壊など、家財を失った世帯に対し、所得の少ない世帯に、石油ファンヒーターや冷蔵庫、洗濯機など必要な家電を支給する支援を行っています。本市でも、無償での貸し出しを含め、家電製品の支援を行うべきと思いますが、伺います。
被災者住宅対策事業費についてです。
台風19号による川崎市内の物的被害状況は、11月12日の時点で全壊38件、半壊753件、一部破損128件、床上浸水1011件、床下浸水344件、非住家被害(全壊・半壊)45件となっています。予算案では、災害救助法に基づき台風で被災した住宅の応急修理を実施するためとして、当面、半壊以上が約200軒、準半壊が約200軒程度と想定して、1億7900万円余が計上されています。
この制度は、半壊以上の場合は59万5千円ですが、「準半壊」は30万円で、「準半壊」とは建物の壁、屋根、床の面積全体のうち、10%から19%に被害がある場合で、2階建ての場合、準半壊にもならない事例が出ています。
住宅は一度浸水すれば、その階は全く生活ができなくなります。壁の中の断熱材は床から天井まで張られており、水を吸って壁全体をはがして取り換えなければならないなど、大きな工事にならざるをえません。床上浸水にあった方からは「準半壊と判定されなかったが、修理の見積もりをとったら合計400万円程度かかることになった。全額自己負担だ」と述べています。災害救助基準の但し書きには「この基準によって救助の適切な実施が困難な場合は…救助の程度、方法及び期間を定めることができる」とされており、被災の実態に沿って支援を手厚くするべきと思いますが、伺います。
鳥取県では、2017年の鳥取県中部地震の被害を受け、住宅損壊割合が10%以上の世帯には上限30万円の支援、10%未満の世帯には1万から5万円の支援を行っています。また、この地震の被害では屋根の被害が多かったので、屋根の修繕に対して、事業者に原材料費などを30万円支援する制度や、生活困窮者が屋根を修理するための補助を30万円から58万4千円行う制度も作りました。
本市においても、水害から一日も早く元の生活に戻れるようにするために、応急修理制度にあてはまらない被災住宅にも支援する、独自の補助を創設すべきと思いますが、うかがいます。
以上で質問を終わります。