震災復興・がれき処理視察(2) 陸前高田市
5月15日は、陸前高田市を視察しました。陸前高田市役所で共産党横浜市議団といっしょにレクチャーを受けました。はじめに岩手県から派遣されている陸前高田市議会事務局の松田局長補佐から被害状況の説明、市役所が復興へ苦労された経験をお話しいただきました。次に、松田局長補佐と藤倉市議(共産党)から復興計画とその進捗状況、がれき処理の概要などについてうかがいました。(以下・敬称略)
・復興計画と進捗状況
計画の大枠ができたところで、具体的に着手するのはこれからという段階だ。高台移転の場所も決まっていない。「平地には住まない」ということが決まったところ。(松田)
JRの駅をどこに置くか、国道45号線はどこを通すか、まちづくりの中心になる基本的なこともまだ決まっていない。5年後に防潮堤を12.5mにすることは決まった。防潮堤がないと安全が確保できないので土地利用を本格的に始めることができない。がれきを処理して土地を利用可能な状態にするまでに、5年間の猶予があるともいえる。(藤倉)
・被災状況とがれき処理の概要
津波被害が広域にわたったため、がれき置場となる土地もあり住宅地から離れていることが話されました。
国が当初見込んでいた処理量92万tは、実際には150万tに増え仙台市の量(130万t)を超えているそうです。
増えたものは水田に入ったガラスやヘドロなどで「堆積物」としてがれき扱いになり、埋め立てるしかないものの、県内の処分場にはもう埋め立てる余地はなく、再利用を検討中という段階だそうです(「堆積物」は51万t・表)。
広域処理の必要性については、「現在可燃物は太平洋セメントですべて処理できる見込みだが、その工場も被災しており1カ所だけに依存していると危ないので、受け入れてくれる自治体があればお願いしたい。市民感情からすれば『がれきを毎日見て暮らすのは辛いので早く処理してほしい』という思いがある」と話されました。
・三陸全体の廃棄物処理を視野に
陸前高田市の木材に関しては太平洋セメントの協力で処理の見通しが立っているが、三陸全体では処理のめどが立っていない。だから廃棄物処理に関しては「陸前高田市が大丈夫だからそれでいい」とはならない。太平洋セメントも放射能が高く検出されるなどしたら処理をお願いできなくなることも考えられる。そうなったときに他の受け入れルートを考える必要がある。市民には(がれき処理を)早くすれば利用できる区域も広がる、早く処理すればよいという願いがある。(松田)
市長は「県・沿岸部全体として処理する必要がある。大船渡・陸前高田は太平洋セメント中心に処理するが、量が量なので引き受けてくれるなら処理してほしい。それが行政の責任ではないか」といったことを話している。(藤倉)
・陸前高田市独自の処理能力向上は
仙台市は、国の補助金などの見通しがつくのを待たずに独自に処理場をつくった。陸前高田市は仙台市と異なり数億円もかかる処理場を独自で作るほどの体力がないし、仮につくったとしてもがれきの処理が終わった後には不要になる施設であり、独自につくるという判断はできなかった。(松田)
当初市長は仮設プラントをつくって処理すると言った。処理場の建設には環境の基準などクリアすべき条件がたくさんあり建設までに2~3年かかるために断念した。こういうときこそ自治体が力を発揮する仕組みがいるのではないか、と思う。国の制度がこうした非常事態に対応できていないと感じている。(藤倉)
・がれき仮置き場・旧市役所ー現地視察
レクチャーの後、松田局長補佐と藤倉議員の案内で、高田地区の仮置き場と旧陸前高田市役所を現地視察しました。
仮置き場に積まれていた土砂(「堆積物」として扱われるもの)には5cm以下のビニール片やガラスなどが入り混じっていることを藤倉議員に説明していただきました。
・左上:高田地区のがれき仮置き場
・右上:「道の駅高田松原」付近の作業の様子
・左下:陸前高田市民会館
・右下:陸前高田(旧)市役所
・今後の課題
陸前高田市・大船渡市では、可燃物の処理は太平洋セメントでほぼ行える見込みとのことでした。しかし、両市の堆積物や漁網などの焼却処理ができないものについては見通しがついておらず、三陸地域全体の廃棄物処理の見通しもまだ立っていません。
広域処理を要望する被災自治体と受け入れ自治体の割り振りが今後どうなるのか、処理の進捗状況や受け入れ自治体の動向によって割り振りの見直しはあるのか、堆積物などの処理の見通しはどうなるのか、こういったことを明らかにするのは今後の課題です。
日本共産党川崎市議団は引きつづき岩手県などへ視察を行い、被災地の状況をそのままつかみ、本当に必要な支援のありかたを明らかにしていく予定です。