大田区の医工連携と工場アパートを視察
日本共産党川崎市会議員団は4月18日、東京都大田区の産業経済部産業振興課を訪問、大田区の「医工連携」の取り組みについて説明を受けました。また、大田区が展開している「工場アパート」を2カ所視察しました。
大田区の工業は、従業者9人以下の企業が全体の82%を占める”中小企業のまち”で、機械金属工業は日本の先端的な技術開発をささえてきました。しかし、工場数、従業員数が減少し続け、「住工混在」による操業環境の悪化、海外移転への対応など克服すべき多くの課題に直面しています。
大田区には、多様な製品を生み出す基礎となる切削・熱処理・メッキ等の機械加工を中心としたいわゆる基盤技術に特化した企業群が集積していることから、そうした基盤技術がそろう約4000件の町工場の集積が持つ、多品種少量生産・高精度の加工技術・短納期での試作対応力を活かして「モノづくりの力」を強める取り組みをすすめています。その基礎には、リーディング産業が鉄鋼・石油産業から、自動車・半導体・コンピュータ産業へ、さらにナノテク・宇宙・バイオ等に変わっていっても高度な基盤技術でそれらに貢献することが地域産業のためになると考えています。また旋盤工が、熱処理やメッキ処理も仲間の工場に依頼してまとめるコンダクター役をこなすなど地域業者間の協力関係も生きています。
大田区の医工連携
大田区は、「試してみたい用具の試作を頼める工場を探している」という病院の先生に町工場を紹介するなど、産学連携を推進してきました。これまで産学連携プロジェクト60件のうち35件が医工連携プロジェクトであり成長が期待される分野であることから医工連携支援センターを開設。同センターが病院・大学でのニーズ(要求・課題)を把握し企業のシーズ(対策・解決案)の実態を把握し、助成金等の獲得支援や案件毎のコーディネートを行ない、区内企業に提案、試作・自社製品開発等に取り組み課題を解決していくとりくみです。同センターは、「病院の先生と町工場のおやじの見合いの場」といわれています。ここから、手術中に患者自身の心膜(心臓を包む嚢)から心臓弁を作り心臓に縫い付ける画期的な大動脈弁形成術に不可欠な、弁の大きさを測定する器具などが生まれています。
大田区の工場アパート
従来の都市計画的観点からは生産環境と生活環境は分離するという発想がありましたが、大田区では中小工業の実態から見るとむしろ職住接近が自然で、「住工の調和あるまちづくり」という視点から、1階が工場で2階以上が住宅の「工場アパート」に取り組みました。また地価高騰で資金力のない小規模企業では工場の購入が困難になったことから、新規開業や工場移転の対策に賃貸型の「工場アパート」も建設しています。「地域力を活かした大田区まちづくり条例」では、工業地域等の開発建築物に賃貸工場を附置することの協議を求めています。
視察した「テクノFRONT森ヶ崎」(大田区大森南4丁目)は総工費38億円で5階建て延床面積9,59平米49室全部が工場です。ユニット月額使用料は最安44,000円(5階46.95平米)〜最高883,000円(1階334.58平米)という設定(月額平米単価が937円(5階)〜2,639円(1階))。電気料金は使用者負担ですが共同受電のため割安になるといいます。
「OTAテクノCORE」は民間が建設したものを区が借り上げて企業に提供しています。「高付加価値を生み出すものづくり産業の集積地」をめざしており、工場としては区外から、研究所としては区内業者との連携等を条件としています。