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2007年12月27日

先進的な少子化対策、子育て支援策~福井県・福井市の視察報告レポート~


2007,12,27, Thursday

「先進的な少子化対策、子育て支援策~福井県・福井市の視察報告レポート~」と「【検証】福井県と川崎市の「姿勢の根本的な違い」はどこに?~「合計特殊出生率」を上昇させる立場への転換こそ~」を掲載しました。(2007年12月 日本共産党川崎市会議員団)
先進的な少子化対策、子育て支援策を学ぼうと、日本共産党川崎市議団は11月1日・2日、福井県・福井市を視察。竹間幸一、市古映美、石田和子、石川建二、勝又光江、大庭裕子の6議員が参加しました。以下、視察で得た主な内容を紹介します。
●「女性の就業率」「共働き世帯割合」全国1位を支えているもの
福井県は「女性の就業率」「共働き世帯の割合」が全国1位(いずれも平成17年国勢調査)。05年、全国で唯一、合計特殊出生率を上昇させ、全国2位に躍進しました。(04年は1.45で11位、05年は1.50で2位、06年は1.50で7位)
県の総合的な子育て支援策を紹介するリーフレット『福井県の少子化対策』は、「県では、少子化の流れを変え、安心して子どもを生み育てることのできる環境を整えるため、保育サービスの充実をはじめ経済的支援、結婚対策、さらには子育てに優しい地域社会づくりなど、結婚から子育てまで総合的な施策を推進しています」としています。
●3人目以降はお金がかからない「ふくい3人っ子応援プロジェクト」
視察1日目は、まず福井県庁で「ふくい3人っ子応援プロジェクト」など、県の少子化対策について、県子ども家庭課の欠戸郁子課長補佐から説明していただきました。
同プロジェクトは、出産、保育、医療など主な6事業をパッケージにして、第3子以降にかかる各事業の利用料金を原則無料化するもので、06年度からスタートしました。

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具体的には、第3子について、(1)妊産婦診費は全14回分を無料化(福井市は第1子から5回まで公費負担)、(2)保育所の保育料を無料化、(3)一時保育・特定保育の利用料を無料化、(4)小学校3年生以下の一時保育、送迎等のサービス経費を無料化、(5)病児デイケア(病児保育)の利用料を無料化。いずれも財政負担の補助率は、県が1/2、市
町が1/2で実施。(6)乳幼児医療費は県補助に上乗せして、県内の全自治体が第1子から所得制限なしで就学前まで無料化。
これらの第3子以降のプロジェクト(6事業)の総費用は、07年度当初予算で、約6億8千万円。取り組みを開始するなかで、県内の出生総数が06年(7,324人)は8年ぶりに増加に転じ、前年より176人増加、そのうちの100人が第3子ということです。
●企業における子育て応援の取り組みを支援
仕事と子育てを両立できる職場づくり、企業における子育て応援の推進にも熱心です。「父親子育て応援企業表彰」は、子どもの誕生や学校行事にあわせた休暇取得の促進、ノー残業デーによる定時退社の実施など、父親の子育てを応援する取り組みを行なう企業を表彰する施策で、受賞企業は県の入札参加資格で加点評価されたり、「中小企業育成資金貸付金制度」で優遇(保証料を県が全額補給)されるなどの特典があり、05年、06年の2ヵ年で16社が受賞しています。

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「子育て支援奨励金制度」は、労働者数300人以下の中小企業が行動計画策定や就業規則等の整備を行ない、育児休業や子どもの看護休暇等の利用に努めた場合に、企業に奨励金を支給するもの。05年度は22社、06年度は32社が奨励金支給を受けました。このほか、「子育て応援プラスワン宣言企業」募集、県ホームページ掲載なども。これらの制度を普及促進するために、県の労働担当職員が2人1組で、毎年、数百社を訪問しているそうです。
●若者の結婚推進へ、200人の相談員が仲人役として活動
子どもを増やすには結婚する人を増やすことも必要と、若者の結婚相談事業に取り組んでいます。「結婚相談員による迷惑ありがた縁結び」事業は、県婦人福祉協議会の200人の結婚相談員が、県結婚相談所のほか県内12地区で定例相談日(月2回以上)を設けるほか、家庭訪問するなど地域の仲人役として活動。組合加入の理容・美容店をまわって未婚の男女を探す様子は、NHK番組でも報道され話題になりました。05年度は43組、06年度は55組の成婚実績があるとのことです。男女が出会い交流する市町のイベントへの支援もしています。
●有資格者400人以上が相談相手として登録「子育てマイスター」
「子育てマイスター」制度は、保育士、看護師、医師、助産師、栄養士、教員など子育てにかかわる資格をもつ人を「子育ての相談相手」として県に登録し、学校や保育園などで子育て講座などを行なう事業です。初年度の05年度は予想していた200人程度を上回り、400人近くが登録し、今年4月時点で430人登録。内訳は、保育士が一番多く約200人、歯科医50人、看護師46人など。基本的に無報酬のボランティアですが、個人のプライバシー保護等があるので、登録は国家資格のある人に限定しているそうです。
●県民あげて妊婦・子育てを大切にしようと、「ママ・ファースト運動」
今年度から開始した新規事業「ママ・ファースト運動」は、企業や地域団体などとの共同により、子育てを応援する機運を高め、妊娠中の母親や子ども連れ家族を優先する運動を展開するもの。公共交通機関などでの優先席の設置や協力店舗におけるキッズルームの提供、子ども3人以上の子育て家庭に対する割引サービスの実施など、子育て家庭を優先し、応援する取り組みを広げようという啓発運動です。
「レディーファースト」の言葉をもじったもの。妊婦や幼い子を連れた人には、「電車やバス等で席を譲ろう」「ベビーカーでの段差等の上り下りに手を貸そう」「ドアの開閉に手を貸そう」「スーパーのレジや駐車場で子ども連れ優先に協力しよう」などの呼びかけも行なっています。
欠戸課長補佐から頂いた名刺にも「はじめよう ママ・ファースト運動」のシンボルマーク(シール)が貼られていました。身近なところから、妊婦や子育て世代を県民あげて大切にしようというキャンペーンです。
●児童相談、子ども救急医療などの「電話相談」も

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このほか、04年度からの「24時間365日児童相談」は、児童虐待などの相談に対応するため、児童相談所で24時間365日電話相談を行なう事業。「子ども救急医療電話相談」は、子どもの急病に対する保護者の不安に対応するため、毎日夜間(19時~23時)に小児科医による電話相談を受け付ける事業です。
不妊治療費助成事業も、国は年2回までで3~5年の期限付きですが、県としては、年3回までで、支給年の制限もなくすという拡充をしています。
●福井市で新規オープンした「子育て支援室・相談室」

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県庁でレクチャーを受けた後、一行は、福井駅東口に今年4月完成した再開発ビル「アオッサ」(福井弁で「また会おう」の意味)の5階に開設した福井市の「子育て支援室・相談室」を視察。同市男女共同参画・子ども家庭センターの井上滋子所長から説明していただきました。
「子育て支援室」は、福井市の子育て支援センターの一つとして新たに開所。利用料無料、毎日午前9時~午後4時まで、
子どもを遊ばせながら、父母が保育士など専門スタッフに子育ての相談が気軽にできます。土・日にはルームいっぱいに子どもがあふれるそうです。一行が訪れた時も、若い保育士が子どもと遊びながら、笑顔で迎えてくれました。利用者数は開設した当初は1ヵ月間で延べ300人台が、9月には1ヵ月間で692人と、増えつづけています。
「支援室」として、子育てや介護など各種講座も開いており、お父さんの料理教室も定員いっぱいになるとのこと。県警の協力で、護身術教室も開催しているそうです。
●多様な形態で充実、悩み相談を受ける「子育て相談室」


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「子育て相談室」は、多様な形で相談活動を展開。「子ども相談」(毎日)は子育ての不安や子ども(15歳未満)に関する相談、「女性相談」(月・水・金)は女性が抱えている様々な問題や悩みについての相談、「子育てママダイヤル」(電話相談、随時)は妊娠、出産、子育てに関する電話相談など。さらに感心したのは、小児科医師、精神科医師、弁護士などによる「専門相談」が無料(要予約)で受けられることです。この日は精神科医師による相談が行なわれていました。相談室職員は「最近の相談はメンタルや性の問題が多くなっています」と話していました。
開設以来、相談件数は増加傾向です(4月20人、5月90人、6月130人、7月141人、8月108人、9月152人)。
視察2日目は、まず福井市役所で、同市教育委員会学校教育課の平田佳代子主幹・指導主事、松川秀之主査から幼児教育、幼稚園施策について、また、同市保育児童課の岩崎文彦氏から保育園の整備状況と子育て支援策について、それぞれ説明を受けました。
●私立より多い市立21園が過疎地まで幼児教育の場を保障


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福井市の幼稚園は私立が20ヵ園、市立が21ヵ園です。(このほか、国立の福井大学付属幼稚園=3年保育も) 市立幼稚園21園は小学校併設で設置され、5歳児対象の1年保育が基本ですが、3年保育が5ヵ園、2年保育が3ヵ園あります。隅々まで幼児教育を保障するために、公立が主に過疎地域に整備されています。
ほとんどの園が定員を下回っていますが、「廃園を検討されたりしたことはないのですか」との質問に対し、市担当者は「小学校との関係もありますし、廃園すると言ったら、住民が困ってしまうでしょうから」と話され、児童数が2人だけの園も含め、廃園計画はないそうです。
その言葉からは、公立だからこそ、採算ではなく、すべての子どものために、幼児教育の場を守らなければならないという、姿勢を感じました。川崎市のように民間と公立で園児一人あたりにかかる運営費を比べて公立幼稚園を廃園するような、コスト優先の姿勢はありません。
●福井市と川崎市―幼稚園の父母負担のケタ違いに驚き
幼稚園の父母負担は、公立が入園料11,000円、保育料月額6,100円、給食費1食250円など。私立幼稚園でも、入園料は3万円、保育料も月額17,000円~22,000円程度、これに対し、市の保育料補助は、所得階層によって、第1子の場合で年57,500円~141,900円、第2子の場合で年127,000円~185,000円でます。このように、私立でも、入園料・保育料がもともと低額なので、保育料補助が入れば、公立に比べても父母負担額の大差がなく、ケースによっては、それより安く済むケースも。さらに、第3子以降では保育料補助がどの所得階層でも年25万円程度でるので、保育料が無料に近くなります。川崎市内の私立幼稚園は、入園料が10万円~15万円程度、保育料が月額3万円~3万5千円程度と高額ですが、市の保育料補助は低水準で、父母負担が大変です。こうした現状を比較すると、福井市と川崎市の幼稚園にかかる父母負担額の大きな違いに驚かされました。福井市では、川崎市のように、公立と私立の幼稚園の保育料を比較して、「父母負担が不公平だから」「民業を圧迫するから」などといって公立を廃止するような発想(悪知恵)は起こりえません。
●私立幼稚園の延長保育は午後6時までで保育園並みに
福井市内の私立幼稚園は、ほとんどが延長(預かり)保育を実施していますが、時間も午後6時まで。(川崎市内の私立幼稚園は午後4時~4時半程度です)。延長を利用すれば、子どもを預かってもらえる時間は、保育園とあまり変わりません。
働きながら子どもを預けられる場所が、保育園でも幼稚園でも、これだけ充実していることが、女性の就業、共働きを支えていると思われます。
●「福井の女性は日本一の働きもの」、入所児童が増加する保育園
福井市内の認可保育園は、現在、計78園(公立37、私立41)、園児数は7,255人(平成19年4月1日)。待機児童はゼロです。
同市の状況について、保育児童課作成資料は、「『福井の女性は日本一の働きもの』と言われています」として、「全国的に人口変動の主な指標である合計特殊出生率の減少傾向が続き、平成17年度指標では、全国が1.26、福井県が1.50となったところです。一方、福井市では1.51で、平成15年度以降増加傾向となっています。保育園の入所児童については、年々増加傾向にあります」としています。女性の就業率、共働き世帯割合が全国1位の県ということもあって、幼稚園よりも保育園のニーズが増えています。
●「公立が『保育の質』の基準です」と明快に語る福井市担当者
公立保育園は一部で民営化も検討しているとのことですが、「公立の役割をどう位置づけているのですか」との質問に対し、市担当者は「民間は採算がベースで、採算が取れにくいことはやりません。民間のノウハウを生かせる部分もありますが、公立が『保育の質』の基準です。公立は保護者から直接苦情などを受けるので、『保育の質』がどの程度か判断基準が分かります」と明快に答えました。
こうした考え方こそ、子どもの育ちを中心にすえた当たり前の感覚だと感じました。川崎市のように、コスト削減を優先し、公立の役割を認めず、「保育の質」も問題にしなくなった後退姿勢とは大違いです。
●第1子は3万円~第3子は20万円の誕生祝金交付事業
このほか、福井市は少子化対策の市独自事業として、平成13年度(01年度)から、子どもを出産した保護者への「誕生祝金進呈制度」を導入。第1子3万円、第2子5万円で、第3子以降は20万円の祝金が支給されます。平成18年度(06年度)の支給総額は1億6322万円。
●3年保育の市立東藤島幼稚園を視察~小学校の給食が毎日
福井市役所でレクチャーを受けた一行は、福井市の東北部に位置する市立東藤島幼稚園を視察。同園は、3年保育で3・4・5歳各1クラスずつ、現在の園児数は計31人。併設の小学校で作られる給食が園児にも毎日出されます。小学校の行事にも、園児が参加するそうです。
小学校の門前には市立保育園もあり、乳児期は同保育園~幼児期は市立幼稚園~小学校は市立東藤島小学校へ、というコースで子どもを預ける父母も多いとのことです。
一行を出迎えた野路伸次園長は、同東藤島小学校の校長でもあります。「先生方が、幼児期から長い間、子どもの成長を見続けられるのがいいですね」と話す園長。園児のいる保育室も案内していただき、「遊びを中心にした保育です。今年はお話しができることを一つの目標にしています」と。帰宅時間には、校長室(園長室)前の廊下を通る園児が、毎日、園長に「さようなら」と元気にあいさつをして帰るそうです。
●中1で30人以下学級、小1・2は1クラス35人以上で「サポーター」を配置
校長室での懇談では、福井県・市の教育施策にも話が及びました。福井県は「中1ギャップ」解消のために、中学1年で30人以下学級を導入。小学1・2年では35人を超えるクラスに、担任の他に臨時研修教員「いきいきサポーター」を配置しています。同校にも現在1人配置され、「助かっています」と話す園長。
「サポーター」は、教員採用試験で通らなかった若い教員を雇用し、経験を積みながら、次の採用試験に再チャレンジします。現在、全市の小学校で67人配置されているそうです。
校長(園長)は、「いま、子育てに自信が持てない親が増えていることを実感しています。本校にも、登校をしぶる子がいましたが、自宅まで行って話をして通常に戻りました。子どもだけでなく、家庭にも手をさしのべ、保護者にも親身になることが大事です」と話されました。
●全国学力テストの結果が全国トップクラス、その力の背景には…
なお、福井県は今年4月に行なわれた「全国学力テスト」の結果(平均回答率)、47都道府県別で、全教科が上位3位以内に入るトップクラスの好成績、小学校部門で2位、中学校部門で1位になりました。朝日新聞・福井版は「小中学校の全教科で3位以内に入った福井県の教委や校長は、好成績の一因として、少人数学級や、地域や保護者の支援を挙げる」と報道(07/10/25)しました。これについて、視察に同行した市教委職員が「とくに塾に通っている子どもが多いというわけでもないですがね」と話していたのが、印象的でした。

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「全国学力テスト」がどれだけ本当の学力を反映したものかは検証が必要ですが、同県の少人数学級や「サポーター」配置はもちろんのこと、福井市のように園児数2人だけの幼稚園も公立でしっかり存続するなど、人格の基礎をはぐくむ幼児期の保育・幼児教育の段階から、一人ひとりの子どもの成長と発達を大事にしていることが、ゆくゆく、こうしたテスト結果につながっているのかもしれません。
(以上)

【検証】福井県と川崎市の「姿勢の根本的な違い」はどこに?
~「合計特殊出生率」を上昇させる立場への転換こそ~

福井県・市と川崎市との子育て施策をめぐる姿勢の違いはどこから生まれてくるのか。それは、「少子化社会にどう立ち向かうのか」という基本姿勢が根本的に違うということです。「合計特殊出生率」(女性が一生に産む子どもの数)は福井県1.50、川崎市1.26(いずれも06年)と福井の方が相当高いのが現状ですが、それぞれの基本計画を比較すると、「合計特殊出生率」を上昇させる意志をもって総合的対策に取り組むのか、あるいは、その上昇を目的とせずに少子化を前提にした施策にとどまるのか、という違いが鮮明です。
次世代育成支援対策行動計画として、福井県が05年3月発表した基本計画は、「これまでの少子化の流れを変え、次代の福井を担う元気な子どもを育てていくため、新しい福井県の少子化対策に関する計画として『福井県 元気な子ども・子育て応援計画』を策定し、少子化対策を県の最重要課題と位置付け、県民あげての取組を進めていきます」としたうえで、「少子化の進行と社会的影響」を深く掘り下げています。
「少子化による影響」では、「少子化の急速な進行は、わが国の社会経済に大きな影響を及ぼすことが懸念されます。まず、少子化の進行により、生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)の減少をもたらし、労働力人口が減少します。労働力人口の減少は、一般的には経済成長率に対するマイナスの影響を及ぼし、将来、GDP(国内総生産)が縮小していく恐れがあります」
「一方、少子化の進行は、子どもの成長にマイナスの影響をもたらす可能性があります。子ども同士、特に年齢が異なる子ども同士の交流機会の減少により、子どもの社会性が育まれにくくなるとともに、乳幼児とふれあう機会を持たずに子どもが成人した場合、親になってからの子育てに大きな戸惑いを持つことの原因となることが指摘されています」
「本県においては、こうした厳しい情勢を打開し、将来にわたり、豊かで元気な福井を築いていくためには、何としても少子化の流れに歯止めをかけ、合計特殊出生率の向上のためのさらなる取組が喫緊の課題となっています」
一方で川崎市が05年3月発表した「川崎市次世代育成支援対策行動計画~かわさき子ども『夢と未来』プラン」では、冒頭「急速な少子化の進展は、高齢者の増加とあいまって人口構造にひずみを生じさせ、将来の我が国の社会経済に深刻な影響を与えるばかりでなく、子ども自身の成長にも影響を及ぼすものとして懸念されています」としながら、「少子化の動向等」で「今後については、平成27年の約139万人をピークに減少過程に入るものと予想されています」とし、「子ども人口」は「近年は減少傾向に歯止めがかかっています。今後暫くは、20万~21万人台で推移するものと予測されますが、将来的には減少していくことが想定されます」としています。しかし、福井県のように、少子化による影響の分析や、そうした少子化の流れを転換し、合計特殊出生率を上昇させようという決意は、川崎市の計画にはありません。
ここにきて、「大型マンション建設等による人口急増地域の新たな保育需要への対応」が余儀なくされ、07年3月には「川崎市保育基本計画・改訂版」を発表し、8月には「保育緊急5ヵ年計画」を発表しています。しかし、将来の少子化を理由にして、保育園整備計画を低く抑え、公立幼稚園を全廃するなど、むしろ「少子化」を、施策を後退させるテコにしているのが実態です。少子化の流れを前提にすれば、子どもを増やしていく方向での抜本的な少子化対策を打ち出さなくなるのは明らかです。
川崎市の「出生率」と「移動人口」の関係
川崎市の同プラン「出生数・出生率・合計特殊出生率」では、「川崎市の出生数は、平成8年以降13,000人台で推移しています。人口千人当りの出生率は、平成15年で10.2となっており、政令指定都市では最も高く、都道府県を含めても沖縄県(12.1)に次いで高い数値となっています」「一方、川崎市の合計特殊出生率は、一貫して全国平均よりも低い数値で推移しており、全国と同様に低下を続けています。しかしながら、全国平均との数値の差は、縮小傾向にあります」としています。
一方で「移動人口」は、「川崎市の移動人口を年齢階層別にみると、0~9歳では転出超過、15~29歳では転入超過、30~39歳では転出超過となっています。これは若年層が川崎市に転入し、子育て世帯が転出するという構造を示していると考えられます」としています。
これらは、川崎市に転入し結婚・出産する若年層は多いが、実際に子育てを始めると「子育てしにくい川崎」に気付いて市外に脱出する世帯が多いことを示しています。そこから、「出生率」(人口千人当たりの出生数)の高さと「合計特殊出生率」(女性が一生に産む子どもの数)の低さ―この数値の差異が生じていると考えられます。
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川崎市でも、「合計特殊出生率」を上昇させ、少子化に歯止めをかける立場に根本的に転換してこそ、「安心して子どもを産み育てられる川崎」への実効ある支援策をつくることができます。