2008年第5回市議会(12月議会)で斉藤隆司議員が代表討論
2008,12,25, Thursday
12日、市議会本会議で議案採決に先立っておこなった斉藤隆司議員の代表討論はつぎのとうりです。また、「公的保育制度の堅持・拡充、保育・学童保育・子育て支援予算の大幅増額を求める意見書案」(意見書案32号)、34号は下記のとうりです。
私は日本共産党を代表して、今議会に提案された諸議案について討論を行います。
議案第142号 川崎市保育園条例の一部を改正する条例の制定についてです。
今回の条例の一部改定は、公立保育園の民営化に伴い、園舎を建て替え、2009年4月から民営で運営するため、公立保育園のリストから、京町保育園と戸手保育園を削除するというものです。
わが党は公立保育園の民営化に一貫して反対をしてきました。本市の公立保育園の民営化は、待機児解消を口実に進められてきましたが、そもそも、施設の定員を増やすことは公立のままでも可能であり、今年明らかにされた民営化計画では、5園でわずか15名の定員増を見込めるだけで、民営化が待機児解消になるという口実が完全に破たんしていることを示しています。
そこで持ち出されたのは「経費を削減して、他の保育事業に充てる」というものでした。しかし、新たな保育事業の経費を 現在、保育園に通う子どもたちを犠牲にすることで捻出するべきではなく、市の財政全体の中で支えるべきものです。さらにいえば、公・私の運営費の差は、職員の年齢における給与の差がその主なもので、5000万円あるという差額の根拠も、あるモデルケースの比較を一般化したもので、正確なものではありません。5年、10年というスタンスでみれば、この差は固定的なものではなく、民間の人件費が公立の人件費を超えることもありうるわけです。したがって、5000万円の根拠も曖昧なものにすぎません。
市が民営化の理由に挙げる「保育時間の延長」についても、公立で実施できない理由を示すことができず、「公民の役割分担」を強調するばかりでした。市民に多様な要求があれば、率先して市が応えようとするのが、本来の自治体の役割ではないでしょうか。
また、今議会において、保育緊急5か年計画の中で、必要とされる保育士の人材確保は630人にのぼり、そのうち、民営化に伴い必要な保育士は380人であることが明らかにされました。さらに、19年度の保育士の離職率は公立が2,7%なのに対し、指定管理者制度により民営化した3か所の保育園では、離職率が18,5%と7倍もの高い数値を示しています。保育士の離職率が高いことは、人材確保をさらに困難なものにしています。こうした人材確保が困難になっている現状を示し、対応を求めましたが、「民営化の有無に係わらず、必要な人数を見込んだもの」と答えただけで、現状についての見解すら示しませんでした。公立の保育園を存続させれば、退職者分の補充をすればよく、人材難に苦しむ必要もありません。指定管理者制度による価格競争と企業参入による利益追求が、保育士の労働条件を引き下げ、一層、人材確保を困難にしています。目先の経費削減で公立保育園を廃止してゆくことは、人材確保の面でも将来大きな禍根を残すものであることを指摘しなければなりません。
保育士の専門性を十分評価した労働環境を整えてきた公立保育園の歴史は、民間の保育環境を引き上げるうえでも、大変重要な役割を担ってきました。人件費における公私間格差を是正してきたからです。公立保育園の民営化は、今までの保育環境を低下させ、より安上がりな保育環境へと向かわせるものであり、そのことは、民間の保育運営にも、困難をもたらします。
そもそも、保育事業は地方自治体にその実施義務があり、この義務を怠ることは、「子どもの最善の利益」を求めた「子どもの権利条約」にも、また、本市の「子ども権利条例」において、市の責務として明記された「子どもの権利を尊重し、あらゆる施策を通じてその保障に努めるものとする」ことにも反するものです。公立保育園の民営化は、子どもたちにとって、突然の先生との別れを意味し、大切な保育の継続性を断ち切るものです。さらに、各地の裁判の判決でも示されたように、「保護者の保育所を選択する権利」は児童福祉法24条にも定められたもので、尊重されなければならず、経費削減を理由にこの権利を蹂躙することは許されません。
わが党は、社会福祉法人による認可保育園の整備を否定するものではありません。川崎市の保育行政は、公営と民営が車の両輪として保育事業を支えてきました。待機児の解消と新たな保育需要にこたえるために、社会福祉法人の力を借りて新たな認可保育園の整備を進めることは今後とも必要です。しかし、それは公設の保育園を民営化することとは異なります。
よって、本議案は、公立保育園の民営化による条例整備であることから、反対するものです。
次は議案143号川崎市中央卸売市場業務条例の一部を改正する条例の制定についてです。
委託手数料を自由化すれば、産地から料率引き下げの要求が強まることは避けられず、手数料引き下げ競争で中小卸売業者に大きな影響が及びます。しかし、東京都は向こう3年間は手数料の引き下げは行わないとし、来年4月からの変更申請も出されておらず、すぐに影響がでるとはいえないとのことです。それならば、市場開設者として中長期プランに関する検討協議会で出されている「商品が雨ざらしにならないなどの荷さばきスペースや配送センターの必要性」などの要望に積極的に応えることが求められています。
また、大規模流通に乗り切れない小規模産地からの集荷の可能性を切り開く卸売業者の努力をサポートする開設者のとりくみも重要です。
さらに、買い付け集荷の自由化・拡大は、卸売業者間の取扱量の格差を広げて中小卸売業者の弱体化を促進する可能性をはらんでおりますが、委員会では、市場で好評を得ている地場野菜の集荷をいっそう拡大するために、市内生産者との協議によっては、市内農家の新鮮な野菜の買付集荷の道も開けることになるとの表明もありました。こうした措置によって市内生産者にとっても安定した計画的な営農に結びつくことを期待して、本議案に賛成します。
議案第151号 水江町産業活性化・企業誘致推進事業用地の取得についてです。
市は今年度から、この用地を含む3か所に先端産業創出支援制度、イノベート川崎を立ち上げました。この制度は認定企業に1件10億円まで設備投資の10%を限度に助成するもので、助成対象は投資額が大企業は50億円以上、中小企業は10億円以上で、インベスト神奈川とも併用でき、県内最大級の助成を与えるものです。中小企業も対象になるというものの、実際に進出できるのは資金力のある大企業です。
その対象地域である、この用地の取得について、わが党は08年度第1回定例会において、市債を発行してまで買い戻す必要はないと事業の中止を求め、予算の組み換え動議を提出しました。その経緯から本議案に賛成はできません。
議案第145号 川崎市介護老人保健施設条例を廃止する条例の制定について、議案第169号 川崎市介護老人保健施設三田あすみの丘の建物の処分について、 議案第173号 平成20年度川崎市介護老人保健施設事業特別会計補正予算、議案第174号 平成20年度川崎市公債管理特別会計補正予算についてです。
これらの議案は、川崎市介護老人保健施設、三田あすみの丘を社会福祉法人三(み)篠会(ささかい)に建物を有償譲渡する関連議案です。
同法人の事業計画でも介護老人保健施設事業や市の「高齢者等短期入所ベッド確保事業」などの委託事業を行うことは確認しました。しかし、いま介護職員の人材不足が大きな社会問題になっています。年間の離職率は21・6%に達し、求人をだしても必要な介護職員がなかなか確保できない状況が広がっています。介護報酬が2度の改定で4,7%引き下げられました。厚労省は来年度3%の引き上げを言明していますが、人材確保策にどれだけ廻るか、全く不透明です。このような状況の下で、必要な介護職員や看護師等の確保ができるか懸念を払拭できません。よってこれらの議案には賛成できません。
議案第172号一般会計補正予算に関連して横須賀線小杉新駅整備に関わる事業についてです。
当初の川崎市の費用負担だけでも住宅事業者への補助を含め、126億円という莫大なものです。ましてや、運行中の新幹線線路の下に連絡通路を通す計画ですから、当然、慎重な検討の上に事業計画を進めるべきでした。39億円もの追加予算を必要とするのは、着工先にありきで、当初の計画において大雑把な概算だけで計画し、あまりにも見通しが甘かったのではないでしょうか。
市民の生活実感からすれば、一般財源からの追加支出39億円と合わせ165億円という額は「仕方がなかった」では、済まされるものではありません。
市民の利便性向上ということからこの計画には賛成しますが、今後、具体的に実施設計、施工の際には再度JRとの協議の中で事業費圧縮に向け鋭意取り組まれるように求めておきます。また、新駅開設予定時期を変更しないために暫定的に供用開始されるわけですが、既存の管理通路を利用した連絡通路は有効幅員が狭く、乗り継ぎの際に事故やトラブルが発生しかねません。安全対策には万全を期すように、この点も強く指摘をしておきます。
以上の立場から、議案第142号、議案第145号、議案第151号、議案第169号、議案第173号、議案第174号、請願第44号については反対し、その他の議案、報告、請願については、賛成及び承認することを表明して討論をおわります。
*******意見書案第32号 *********
公的保育制度の堅持・拡充、保育・学童保育・子育て支援予算の大幅増額を求める意見書
急激な少子化の進行、児童虐待等子育て困難が広がる中で、安心して子どもを産み育てられる環境の整備が切実に求められており、保育・学童保育、子育て支援への期待がかつてなく高まっている。また、第169回通常国会で、「現行保育制度の堅持・拡充と保育・学童保育・子育て支援予算の大幅増額を求める請願書」が衆参両院において全会派一致で採択されたことは、こうした国民の声の反映にほかならない。
政府は、国を挙げて次世代育成支援、少子化対策に取り組むとしながら、一方で公立保育所運営費の一般財源化や保育予算の削減、公立保育所廃止・民営化の推進、幼稚園・保育所の現行基準を大幅に切り下げて認可外施設も認める「認定こども園」制度を推進し、保育の公的責任と国の基準(ナショナルミニマム)を後退させ、公的保育制度をなし崩しにしようとしている。これらは、国会で採択された請願内容と大きく矛盾するものである。
必要なのは、すべての子どもたちの権利を保障するために、請願の趣旨及び請願項目を早急に具体化し、国・自治体の責任で保育・学童保育、子育て支援施策を大幅に拡充することである。
よって、国におかれては、以上を踏まえ、次の事項について特段の措置を講ぜられるよう強く要望するものである。
1 現行保育制度を堅持・拡充し、直接入所方式や直接補助方式を導入しないこと。
2 保育所最低基準、幼稚園設置基準を堅持し、抜本的に改善すること。
3 保育所、幼稚園、学童保育、子育て支援施策関連予算を大幅に増額すること。
4 子育てにかかわる保護者負担を軽減し、労働時間の短縮等仕事と子育ての両立のための環境整備を進めること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。(写真は意見書案32号の採決)
***********意見書案第34号***********
障害者自立支援法の抜本改正を求める意見書
障害者自立支援法が施行されて2年余りが経過した。来年度は同法の規定に基づき、「3年後の見直し」を行う年に当たる。
国は、来年の通常国会に同法の改正案を提出するとしているが、多くの当事者団体、利用者から、応益負担による負担増、事業者の経営難、職員の厳しい労働条件等の問題点が指摘されており、これらは法律の根幹にかかわる問題で、部分的な手直しでは済まないことは明らかである。
よって、国におかれては、すべての障がい者が人間らしく生きる権利を真に保障するために、障害者自立支援法の改正において、次の事項について特段の措置を講ぜられるよう強く要望するものである。
1 サービス利用料は応能負担とし、住民税非課税世帯等の低所得者は無料とすること。
2 正規職員を中心に配置できるようにする等事業所に対する報酬を大幅に引き上げ、支払い方式は月額制にすること。
3 入所型の施設や医療ケアを必要とする人たちへの支援、グループホームを始めとする暮らしを支える支援策を拡充すること。
4 障がいのある子どもの発達を保障するため、契約制をやめ、公的責任で適切な福祉サービスを無料で利用できるようにすること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。(写真は意見書案34号の採決)