介護・福祉人材不足の打開の道さぐる 学習・シンポジウム開催
2008,06,02, Monday
深刻な介護人材不足を打開しようと、5月31日、日本共産党川崎市会議員団主催による学習・シンポジウム「高齢者介護・障害者福祉人材不足の打開を」が中原区内で行われました。会場には、市内の介護・福祉施設の代表やケースワーカー・ヘルパーなど約60人が参加、人員体制の限界を超えて頑張っている介護の現場の実態がこもごも語られました。
講演した小川栄二立命館大学教授は、福祉の措置制度を解体した国の社会福祉体制の変遷について、80年代、臨調「行革」を基本とした福祉の切り捨て、国民負担への転嫁と社会福祉変質の準備が進められたこと。90年代にはさらにエスカレートし、大量のパートヘルパーの採用へ、2000年代には介護保険制度が始まり、完全な公的責任の後退と規制緩和による労働条件の悪化を生み出したと告発しました。
高い離職率 施設非正職員の半数が1年未満の職員
小川教授は、05年の介護労働安定センターの調査によれば、1年間の採用率28%、離職率20%、施設非正職員にかぎれば1年間の採用率48%、離職率31%と、高い非正社員化の弊害が顕著となり、決められた範囲以外の介護に制限がくわえられ、駆け足介護が余儀なくされている実態を暴露。本来の働き方ができず、「不完全燃焼症候群」の介護職員が増えており、労働条件の改善のために、国や自治体の支援を引き上げさせる必要があると述べました。
参加者10名が発言
特養老人ホームの施設長は、国の報酬は職員基準3対1、実際は2対1でギリギリ回しているのが現状であり、国の報酬では足りるわけがないと職員体制の厳しさを告発し、26%の施設が2年以内に定員を減らさなければ職員が足りなくなるというアンケート結果もあると述べ、制度の抜本的な見直しを求めました。
通所施設やケアホームなどを経営している障害者施設の経営者は、常勤から契約職員に変えてやっと運営している状態。人がたくさん集まっているところに行くと投網でもかけて引っ張っていきたい心境だと述べました。ホームに通う娘を持つ母娘二人暮しでお母さんが重い病気になっても障害区分の壁が立ちはだかる。「いつの間にか、利用者の顔がお金に見えてしまう。これほど怖いことはない」「利用者の事情が分かっていながら我慢を求めなければならないのはつらい」ともうこんな仕事やりたくないという気持ちを抑えながらやっていると涙ぐみながら語りました。
ヘルパーのSさんは、市の「ふれあいガイド」(外出支援)など、利用者にとっては余暇外出でも私たちにとっては仕事。専門的知識が欠かせない。知的障害を持つ利用者は、出先で切符を買う間も待っていられない。出先の証明をもらうにも大変な苦労が要る。私たちはホームヘルプ利用者の奥さんの洗濯だけやって帰るわけにはいかない。報酬の範囲の仕事以外にもヘルパーは動かなければならないが、こうした所も行政はしっかり見て支援してほしいと訴えました。